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できない人ほど自分のことを過大評価する

■できない人ほど自信があり、できる人ほど慎重

あなたの周りにはいないだろうか? 実力がないのに、自分はできると過信していたり、問題の難しさ、やっかいさを考えずに安請け合いする人が。

一方、仕事ができる人、ものごとがわかっている人は、見込みについて案外慎重である。完成したプロジェクトの質についても、手放しでは褒めないことが多い。

できない人ほど自信があり、できる人ほど慎重である。


自分のことをスーパーマンだと思っている人は要注意(AFLO=写真)

このような私たちの日常における直観をきちんと科学的なデータで裏付けた研究がある。論文を書いたアメリカのコーネル大学の研究者の名前をとって「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれているこの現象は、社会で起こっているさまざまな出来事を理解するうえで役に立つ。

ダニングとクルーガーは、大学の学生の成績と、自己評価の関係を調べた。その結果、成績が悪い人ほど、自分が全体の中で占める位置を過大評価していること、一方優秀な人は自分のレベルを控えめに評価していることを示したのである。ダニングとクルーガーのこの論文は多くの研究者によって引用され、イグノーベル賞も受けた。

■客観的に観察する能力「メタ認知」

ダニング=クルーガー効果が最近になって注目されているのは、「できない人ほど自分のことを過大評価する」傾向が、社会の中で目立つようになってきたからだろう。特に、ツイッターやフェイスブックなどのSNS上で、不思議なほどに自信を持つ「困った人」が人々の目に留まるようになってきた。

経営者や政治家など、社会のリーダーになるべき人の中にも、ダニング=クルーガー効果の言う「自信過剰な人」が目立つようになってきた印象がある。真実が何なのか簡単にはわからない「ポスト・トゥルース」の時代になって、自らのレベルをわきまえない困った人たちが増えてきたのかもしれない。

他人はともかく、どうしたら自分自身が困った人にならないようにできるのか。ダニング=クルーガー効果の論文では、興味深い実験が報告されている。成績が悪く、自分を過大評価しがちな人たちも、論理的な思考と、自分自身の客観的な評価についての簡単なトレーニングを受けるだけで、自己評価の正確性が向上したのである。

自分自身を客観的に観察する能力を「メタ認知」と呼ぶ。メタ認知がなければ、自分の欠点もわからないし、目指すべき目標もつかめない。ダニング=クルーガー効果が浮き彫りにする困った人にならないためには、自分の状況を客観的に見る訓練が必要となる。

■自分の英語力を過大評価していないか

例えば、世界的な比較で言えば、日本人の多くは自分の英語力を過大評価している可能性がある。英語の検定テストや、受験の成績が良かったからと油断していると、グローバルな競争でもっと上を目指すために必要な冷静な評価ができない。

ネット上でボキャブラリー数を評価する簡単なテストを受けるだけで、自分の英語力の至らなさを客観視できる。ネーティブのボキャブラリーは2万5000から3万5000と言われているが、日本人の多くは大学入試の数千から少し積み上げたくらいだろう。自分の英語力がいかに不足しているかを認識することが、さらなる学びのきっかけになる。

あなたは自分にダメ出しできるだろうか? できる人ほど、自分のことを冷静に見ている。この事実の意味するところを肝に銘じてほしい。

(脳科学者 茂木 健一郎 写真=AFLO)

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