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フェイク(偽)とファクト(事実)の間(はざま)にて

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フェイク・ニュース(偽ニュース)、という言葉が世界を駆け巡っている。

「震災で動物園のライオンが逃げ出した」などは、まだ可愛い方で、「ヒラリー・クリントンが児童売春の拠点と化したピザ屋に関与している」などの偽ニュースは、一国のトップの選択に影響を与えかねない。全く困ったものである。

ポスト・トゥルース、ということが盛んに言われているが、「真実であるかどうか」より、「一見、真実らしく思われて拡散すること」の方が大切な時代に入りつつあると言えよう。そんな中、例えばマケドニアからフェイク・ニュースを世界に流して、広告料を荒稼ぎする輩まで出てきていると言う。何ともやっかいな時代だ。

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私が最初に「フェイク・ニュース」という言葉を聞いて感じたのは、「あ、東スポか」ということであった。東京スポーツというスポーツ新聞の略称が「東スポ」だが、同紙の記事を見て、思わずドキリ・ニヤリとした男性読者諸賢も少なくないと思う。

「猪木、スペインで殺人」という見出しに驚いて東スポ新聞を購入し、パッと縦に開いたら、実は折り目の裏に「マッチ」と書いてあった(要するに「殺人マッチ」という名のプロレスをスペインでしただけ)という逸話?を学生時代に先輩から聞いたことがあるが、まさにフェイク・ニュースの老舗的トップランナー新聞と言える。

ある名誉棄損の裁判で、「東スポは、そもそも、読者が真実だと思っていない」という趣旨の判決文が出たとか、同様の裁判で、裁判長が「報道機関が自ら「記事を信用する人間はいない」と主張することは、報道機関としての自殺行為」との発言をして東スポ関係者を諭したという話があるが、まさに筋金入りのフェイク・ニュースだ。

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では、昔からある東スポと比べて、昨今の「フェイク・ニュース騒ぎ」の何が問題なのだろうか。東スポを見てニヤリとしたように、何故笑い飛ばせないのか。どうして、ここまで社会問題化するのか。もちろん、一つには、ネット社会の広がりにより、フェイク・ニュースの数と拡散スピードが格段に速くなった、ということが挙げられる。その結果、注目のフェイク・ニュースを見る人数は激増し、東スポの影響力とは比べ物にならない。

ただ、私はそれに加えて、1)様々な情報が飛び交う中で、何がフェイク(偽)で何がファクト(事実)なのかが、非常に分かりにくいということ、2)そして、少なくとも潜在的にそのことに気づいている大衆が、底知れぬ大いなる不安を感じているということ、が昨今のフェイク・ニュース騒ぎの大きさの主たる要因だと考えている。

フェイク・ニュースという言葉が飛び交う米国に則して比喩的に言えば、有名なメディアの信頼できる記者が書いた「正しい報道」ですら、トランプ大統領から見れば「フェイク」であり、しかも、実はトランプが正しいケースが意外とあるということだ。そして、そうであるがゆえに、トランプを支持する人々が少なからずいて、彼が現に大統領になっており、それがまた人々の不安を増幅するという事実だ。
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例えば、一般的なメディアの報道では、昨今、米国で暴動化している先鋭的な対立は、1)奴隷維持派だった南軍の将軍の銅像を撤廃しようと運動するリベラルな善の集団と、2)KKKのような極端な白人至上主義者たちという悪の集団の間で起こっている、と報じられる。この局面で、トランプ大統領は「極端な行動はどっちも悪い」的に、明らかに悪の後者を事実上擁護していて怪しからん、という報道が多い。

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