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社員のことを悪く言ってどうするの? - 吉田典史 (ジャーナリスト・記者・ライター)

 今回は、コヤマドライビングスクールの小山甚一社長を取材した。1972年に取締役に就任すると、業界の体質を変えるような改革を次々と試みた。業績を拡大させたことが認められ、1983年に社長に就任する。1985年に業界で先駆けて、女性の指導員を採用するなど、時代を先取りした施策を進める。


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(PrettyVectors/iStock)

 しかし、急進的な改革を否定するオーナーである父に解任され、副社長に「降格」する。97年に社長に返り咲くと、現場の声を反映する経営を進め、業績を拡大させる。今や、年間の教習生約3万人となり、国内最大規模の教習所となった。

 小山社長にとって「使えない上司・部下」とは…。

上司にとっていちばん大切なのは、部下の脳みそを使うこと

 本来、「使えない社員」はいないと私は思います。ほとんどの会社員が、それなりに仕事をしているものです。その質や成果には多少の差があるのでしょうが、「使えない」というほどではないと思います。 「使えない社長」や「使えない上司」がいるとするならば、社員や部下のことを「使えない」とレッテルをはり、自分だけで考え、ひとりで決めて進めてしまう人だと思います。

 上司にとっていちばん大切なのは、部下の脳みそを使うことです。社長にも同じことが言えます。500人の社員がいるならば、500の脳があるのです。社員たちに考えてもらったほうが、はるかにいいわけです。

 ところが、社長ひとりで全部を仕切り、あらゆることを決めようとすることがあります。あれでは社員はやる気をなくし、育ちません。おそらく、業績は伸びず、ゆきづまっていくでしょう。伸びないと思います。

 社長業で大切なのは、人の育成だと思います。業績が伸びて、会社の規模があるレベルに達し、キープしないと、業績はやがてじりじりと下がる「じり貧」になってゆきます。少なくともそのレベルになるまで、社員を懸命に育てあげないといけない。残念ながら、それをしない社長は実際にいるのです。

 私がそのような社長と接すると、社員のことを信用していないように感じます。「あんな社員はダメだ」と乱暴に決めるつける人もいます。自分が経営する会社の社員のことをそんなに悪く言ってどうするの?と思うのですが…。私が社員ならば、辞めてしまうかもしれません。

 社長にとって、社員は鏡です。上司と部下の関係も同じです。自分と同じようなレベルの人が、社員や部下として目の前にいるのです。社長と労働組合の関係も似ています。経営者や会社に対し、戦闘的な労組があるでしょう。そのような会社の社長は、「あの労組の野郎は、何もわかっていない」というスタンスをとっています。だから、労組も過激になるのです。

 当社の場合は、社員たちがよく考えてくれます。委員会制度があり、経営に関することや女性の働きやすい職場づくりなどを話し合い、大量の提案を出してくれるのです。日本初の英語教習や障がい者教習、赤色のBMWを使った高速教習などは、社員たちのアイデアによるものです。

 社長である私の脳は、ひとつしかない。社員の脳をいかに使うか…。そのことを考えるようにしています。ただし、会社として守るべきことはあります。たとえば、業界のルールを逸脱するような案ならば、認めることはできません。一線を踏まえているならば問題はないと思います。

 結局、社長と社員、上司と部下の関係は対話でしか成り立たないのです。意見などを言ってもらい、話し合う。その姿勢が大切です。「俺の言うことを聞け!」と命令をしているだけでは、うまくいかない。それこそ、「使えない社長」や「使えない部下」になってしまうでしょう。

上司が変われば、状況は変わるかもしれないじゃないですか


小山甚一社長

 私の父が先代の社長になるのですが、終戦直後に、実はある会社の労働組合の役員をしていたのです。最後は、解雇になってしまいました。その後、父は当社の社長になったのです。だから、労組のことを頭ごなしに否定しない。働く人のことを客観的に見ることができたのかもしれませんね。私も、そんな父から遺伝しているものがあるのかもしれないと思います。

 私は以前、社長をクビ(解任)になっています。オーナーであった父から、「お前はダメだ」と解任されました。社長をしていた父が、社長を私に譲ったのですが、父の路線と私が目指す方向が違ってしまったからなのでしょう。

 父は、教習所は教育機関という位置づけで、交通安全などの教育をしっかりとしないといけないと考えていました。私もそのようなことを心得ていましたが、一方で業績を上げないと話にならないと思っていたのです。

 当初、父は「お前の好きなようにやってみろ!」と言っていました。私はその言葉をそのまま受け入れ、自分の路線でどんどんと進めました。父に報告をすることは、ほとんどしなかった。業績がよかったから、天狗になっているところがあったのかもしれません。
 
 ある日、父に呼ばれ、「お前は社長をやめろ。副社長にする」と突然告げられました。42歳の時でした。ショックでしたね。挙句に、「現場のことには関わるな」と言われました。やることがないのですよ…(苦笑)。父は社員に優しいのですが、私には厳しかった。

 当時のことを知る知人と今、話すと、この時期に社長を解任されたことが実はよかったのではないか、と言われます。天狗になっていた私の鼻を、父はへし折ってくれたのかもしれません。

 その間、私は、腐りませんでした。いつの日か、社長に戻ったときのことを考えていました。会社員で、腐ってしまう人がいるでしょう。「上司が、自分の考えを聞いてくれない」「俺はもっと力があるのに、会社が認めてくれない」とどんどん悪く考えてしまう。自分で、自分を腐らせてはダメですよ。

 現在の上司とそりが合わなかったとしても、スタンスを変える必要はない。上司が変われば、状況は変わるかもしれないじゃないですか。今のまま、そのスタイルを継続するほうがいい。「上司が認めてくれない」なんてことで、辞めるのは惜しい。プラス思考になるべきです。いずれ、状況は変わりますよ。

 時代は、動いています。会社も経営者も社員も、その流れに乗って柔軟に変わってゆけるように、頭はやわらかくしておきたいですね。そのためにも、私は本職である会社の経営とは別に、個人的な趣味でバー(「バー青山R40」)をもっています。月に2~3回、ゲストが来てライブをしたりもします。ここで、いろいろな出会いがあります。会社とは違う空気を吸えるから、いいですね。

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