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北朝鮮ミサイルの迎撃

 まず、自衛権についてであるが、個人に正当防衛権があるように、国家には自衛権がある。それは憲法以前の自然権である。(拙著『憲法改正のオモテとウラ』{講談社現代新書、2014年}参照)。また国連憲章は、「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」(第51条)と定めてあり、加盟国の個別的、集団的自衛権を明示している。日本政府は、集団的自衛権を「国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利」と定義する。

 次に、領海・領空である。領土から一定の範囲にある海を領海といい、日本では12海里である。領空とは領土・領海上の空域であり、垂直的には宇宙空間(約100km)までである。したがって、高度100km以上の宇宙空間を移動する人工衛星などは領空侵犯に当たらない。1998年8月31日に北朝鮮がテポドン1号を発射し、日本上空を通過させたが、そのとき北朝鮮は「弾道ミサイルではなく人工衛星だ」と主張した。今回、8月29日に発射された火星12号については、中距離弾道ミサイルであることを明言しているが、高度550kmに達しており、宇宙空間を飛翔しているので、日本の領土・領海の上であっても領空侵犯にはならない。したがって、これを迎撃することはできない。

 しかし、北朝鮮が日本を狙ってミサイルを発射したときは、自衛権を発動して迎撃する。同盟国、アメリカを標的にした場合も、「武力行使新3要件」(2014年7月1日に閣議決定)に規定するように「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」があり、「これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない」ときは、集団的自衛権に基づく武力行使が可能である。

 軍事面では、ミサイル防衛については、まず海上配備型迎撃ミサイル(SM3)が大気圏外で撃ち落とす、それが失敗した場合、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が高度数10kmで迎撃することになっている。さらに、それを補完するために陸上型イージスシステムであるイージス・アショアの導入が考えられており、防衛省は来年度予算に関連経費を計上する予定である。

 北朝鮮はアメリカしか相手にしない。金正恩の念頭にあるのは、独裁体制の維持である。アメリカ本土に到達する核搭載ICBMを保有すれば、それが抑止力となって体制維持が可能だと考えている。アメリカは、核とICBMの開発を断念すれば体制を崩壊させないことを約束するであろう。それは中国やロシアの意向とも沿っている。しかし、問題は金正恩が、核・ICBM開発に固執していることであり、解決策を見いだすのは容易ではない。

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