記事
  • ヒロ

値上げする勇気

経営者にとって値上げは胸が痛む判断でしょう。大概の会社や経営者は保守的行動をとりますのでなるべく値上げしないようコストを見直し、効率化を高め、他社の動向をちらちら見ながら我慢大会をすることが多いかと思います。それでも値上げしなくてはいけない最終的な動機とはこれ以上の効率化は図れない、というギブアップ状態から「敗軍の将は兵を語らず」的な苦渋の選択が見て取れます。

私がカナダで経営しているビジネス群は基本的に価格変動は需給に基き判断させてもらっています。概ね、価格改正は年中行事のようなものになっています。マリーナ部門は係留料が毎年4%前後必ず上がりますし、駐車場部門の月極も今年8%上げます。レンタカーは上げたもの、下げたものいろいろですが、慣らすと5%ぐらい上がっています。投融資部門でも貸付金利がカナダの利上げがあったこともあり上昇しています。変わらないのは長期リース主体の商業不動産部門ぐらいですが、こちらも契約更新時には市場動向に合わせるように上がっています。

これだけ上げてもマリーナ部門と商業不動産部門以外は私どもの価格は市場価格と比して3割から5割安い金額を提示しています。(私どもの価格が安いのはNO FRILL(飾らない)からでしょう。)もともとが安いこともあり、多少の価格改正ならばお客様はついてきていただいています。同業他社は我々以上のペースで値上げしており、値上げが追い付かない奇妙な状態にあるのです。ただ、私共もやみくもに値上げしているのではなく、設備投資やサービス向上の為に値上げ以上の資金を投じているのが現状です。

何故そんなに皆、値上げするのか、と言えばここ、バンクーバーの場合、潜在的物価の上昇率が大きいからでしょう。住宅では分譲は言うに及ばず、賃貸も10年前に比べて5割は上がっています。飲食店のように人件費の比率が大きいビジネスは賃金の上昇が最終価格に跳ね返ります。それこそラーメン屋から高級フレンチまでこの数年で肌感覚で3割ぐらい上がっているはずです。更に2021年までに最低賃金が15ドルになるよう現在、段階的に上昇させており、9月15日からはそれまでの最低賃金が4.6%上昇し、11.35ドルになります。

では、需要は落ちているのか、と言えば全くそんな気配はなく、人気飲食店の予約は取れず、ホテルはべらぼうな価格を提示するし、街からレンタカーはすっかり消え失せるほどであります。

値上げする経済は基本的に好転する経済です。需要を喚起するからです。ドライバー席は供給側にあります。良いビジネスをするところは価格以上の人気を博すため、事業拡大に走ります。この時、市場で淘汰がおき、成績不振のところが消え、勢いある会社が制覇する仕組みです。一方、需要はそれに追いすがろうとするのです。

ではアマゾンに買収されたホールフーズはどうでしょうか?今週から最大43%の価格見直しで大値下げ攻勢をかけています。真逆です。一つにはホールフーズの価格設定が強気すぎて市場の潜在需要を十分享受できなかったことがあります。が、私はホールフーズはデイリーな商品であることから値下げ圧力が強いのだろうと思います。

つまり、価格は二極化していると言えるのではないでしょうか?

日経に280円料金で有名な鳥貴族が28年ぶりに値上げし、298円にすると報じています。これを受け株式市場では同社株は一時10%以上も高くなるなど好意的に受けて止めています。もちろん、顧客側からは厳しい意見も出ているかと思います。個人的にはそれでもこの時代にまだ298円、嫌なら文句を言わずに他を当たればいいと思っています。もしも顧客が大きく流出した場合、鳥貴族の価格と顧客の関係が硬直していて経営側が28年間、顧客の成長を促さなかったとも言えます。

安さを売りにするビジネスの場合、価格を守るために経営がどうしても保守的になります。一方、品質を追求するところは顧客がその製品やサービスにほれ込んでいるわけで価格に妥当性があれば一番安くなくてもお客様は共に成長するのだろうと思います。

妥当な価格付けをする勇気、これが大事だと思っています。日本の場合、いやいや最後に値上げをするケースが多々見られますが、経営戦略としてクオリティを売るというアプローチもあるはずです。私が東京で経営するシェアハウスは決して安くはないですが、ほぼ満室が続いています。理由は心地よくて他を探す気にならない、と多くの皆様からコメントを頂戴しています。

価格戦略とは本当に難しいものです。

では今日はこのぐらいで。

あわせて読みたい

「経営」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    立憲民主は戦後最弱の野党第一党

    木走正水(きばしりまさみず)

  2. 2

    よしのり氏「自民の勝利は当然」

    小林よしのり

  3. 3

    政治力失った小池氏 出処進退は

    おときた駿(東京都議会議員/北区選出)

  4. 4

    リセットされた菅直人氏への逆風

    川名 ゆうじ

  5. 5

    朝日に反論 演説中のヤジは妨害

    深沢明人

  6. 6

    保育士離職の原因は給与ではない

    石水智尚

  7. 7

    朝日世論調査の質問に「偏り」

    PRESIDENT Online

  8. 8

    若者は現実政党しか信じなかった

    門田隆将

  9. 9

    立憲の鍵を握る改憲派・枝野代表

    篠田 英朗

  10. 10

    自民党勝利の現実を見ない知識人

    中村ゆきつぐ

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。