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Jアラートは国民の安全保障意識を高める

 さて、北朝鮮が発射したミサイルが日本の領土・領海の上空を横切る形で太平洋上に落下いたしました。

 これに対し日本政府のとった対応がネット上で熱き議論を呼んでいます。

 さっそく当ブログとして触れておきましょう。

 Jアラートによる国民への警報です。

 日本政府は8月29日午前6時すぎ、北朝鮮からミサイルが発射された模様と全国瞬時警報システム(Jアラート)で速報しました。

 NHKニュースによると、政府は午前5時58分ごろ、Jアラートを通じて「北朝鮮西岸からミサイルが東北地方の方向に発射された模様です。頑丈な建物や地下に避難して下さい」と伝えます。

 続けて午前6時14分に「さきほど、この地域の上空をミサイルが通過した模様です。不審な物を発見した場合には、決して近寄らず、直ちに警察や消防などに連絡して下さい」と伝えました。

 対象地域は北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県、の12道県でした。

 Jアラートは、人工衛星で防災無線から地方自治体に情報を瞬時に伝達するシステムです。内閣官房の公式サイトによると、Jアラートが作動した場合、対象地域の屋外スピーカーなどから警報が発令され、携帯電話などにエリアメールや緊急速報が送られる手はずになっています。

 報道によれば、Jアラートの発令がうまく住民に送られなかったトラブルが、7道県16市町村において発生した模様であります。

 ・・・

 さて北朝鮮ミサイルの日本の領土・領海上空無通知縦断という暴挙に、着弾せず国土を通過する限り現時点で軍事的対抗手段をまったく持たない日本政府なわけであります。

 数少ない日本政府の対抗手段「国民への警告・警報」と「北朝鮮への非難声明」なのですが、これをめぐっても、いろいろな批判が起こっています。

 まず、今回のJアラートによる住民への情報伝達では、その内容の問題(「避難の呼びかけ」のあいまいさが指摘されています)や運用上の問題(トラブルによる住民非通知や訓練メールの誤送信など)など、多くの改善すべき問題が浮上しています。

 また、対象の都道府県が12にも及び実際に通過した地域(北海道のみ)に比べて広域だったことへの批判もあるようです、はたしてどこまでの精度で弾道を予測していたのかとの疑問もあるようです。

 さらには、Jアラートによって国民の不安を不必要に煽っている、つまり北朝鮮のミサイルを安倍政権の延命策として利用している、という理不尽な批判も一部からあるようです。

 そもそも今回のミサイルは日本上空で高度500KM以上の宇宙空間を飛翔していました、そんな高高度はもはや「領空」ではないし日本に着弾する可能性はなかった、つまりJアラートの発令自体意味はなかった、という意見もあります。

 民進党安全保障調査会長の岡田克也氏も北朝鮮厳重抗議の談話の中でJアラートに「十分な検証が必要」とケチをつけています。

【談話】日本上空を通過する北朝鮮の弾道ミサイル発射に対し厳重に抗議する

http://blogos.com/article/242908/

 当該部分を失礼して抜粋。

 また、安倍総理は、「政府はミサイル発射直後からミサイルの動きを完全に把握しており、国民の生命を守るために安全に万全の態勢をとってきた」と述べたが、ミサイル落下の10分前に「頑丈な建物や地下に避難して下さい」と警告するJアラートが、果たして国民の生命を守るために「万全の態勢」といえるのか、政府の対応や国民保護のあり方について、十分な検証が必要である。

 民進党に指摘されるまでもなく、北朝鮮ミサイル飛翔に対応するJアラート発令に関してはその内容や運用手法にまだまだ改善の余地があることは確かです。

 しかし一部で展開されている今回のJアラートは過剰反応であるという論やそもそも意味が薄いといったJアラート不要論には、当ブログとして与しません。

 各自治体において運用手順の瑕疵があるかないか、必要ならば自治体ごとに訓練等を行いその練度を上げるべきでしょうし、また政府においても、警告する対象地域の絞込みや警告内容の改善を絶えず進めていくべきでしょう。

 日本では世界に先駆けて、緊急地震速報(きんきゅうじしんそくほう)を全住民対象に本運用を開始した実績があります。

 地震発生後大きな揺れが到達する数秒から数十秒前に警報を発することを企図した地震早期警報システムの一つで、日本の気象庁が中心となって提供している予報・警報であります。

 これも運用開始時は運用側にもミスがあり、我々国民側にも不慣れゆえのトラブルが発生しました。

 震源からの距離や場合によっては地震の揺れが警報とほぼ同時に来るケースもあり「この短時間では何も準備できない」とか「かえって不安感をあおる」とかの批判が噴出しました。

 また今もしばしば起こりますが「警報」は鳴っても揺れの到達しない地域もどうしてもあるわけですが、「この精度では意味がない」という批判もありました。

 それぞれの批判はしかし、運用側の改善と我々利用者側の「習熟」や「慣れ」により、やがてなくなりました。

 現在、日本の緊急地震速報は世界最先端の地震・津波に対する防災支援技術として国際的にその有効性が注目されていますし、インドネシアなどの地震国が日本の技術を習得するため気象庁等が国際支援が始めています。

 現在、緊急地震速報のその運用に反対・批判する意見は皆無と言ってもよろしいでしょう。

 ミサイル飛翔に対応するJアラート発令も緊急地震速報と同様に考えるべきです。

 国民に降り掛かる可能性がある災害に、例え数十秒でも素早く警報を発する緊急地震速報は、技術的には避けれない一定の割合の空振り(警報が鳴っても地震は来ないケース)があったとしても、ケースによっては本震までの時間が数秒しかない場合があったとしても、総じてその有効性が国民に評価されています。

 ミサイル飛翔に対応するJアラート発令も、繰り返す中で、運用側の改善、住民側の慣れ、等がはかられていき、より練度の高いかつ安全保障上有効なシステムになることでしょう。

 例えば発令のたびに広範囲で交通機関が停止しては経済的損失も無視できないですから、飛翔予測エリアの精度を高め、強警戒地域と弱警戒地域で、交通機関や自治体の対応を変更する必要はあると思います。

 地震の際の津波発生リスクの有無で事後対応が変わるのと同様のことです。

 そもそも日本に着弾する可能性のあるミサイルは北朝鮮だけではありません。

 中国もロシアも大量のミサイルを保有しており、それぞれある割合の核弾頭ミサイルの標準は間違いなく日本列島(主として在日米軍基地)を指しているはずです。

 今回の北朝鮮のミサイル飛翔に対応するJアラート発令は、東アジアにおいて、国際安全保障上のまさに最前線に位置している日本のシビアな現実に警鐘を鳴らす意義があったと考えます。

 Jアラートは、その意味で北朝鮮に関わらず中長期的な見地から日本に取り必要であるシステムであると考えます。

 ・・・

 まとめます。

 現段階では確かに改善すべき少なからずの問題を露呈したJアラート発令であります。

 しかしです。

 当ブログとしては、頭ごなしにJアラート発令を非難する一部のネット上の論には与しません。 

 今後もJアラート発令は改善しながら維持していくべきです。

 緊急地震速報が国民の防災意識を高めたように、Jアラート発令は、日本の置かれたシビアな現状に対して国民に警鐘を鳴らす、国民の安全保障意識を高める、その点で意義があると考えます。

(木走まさみず)

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