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マツダ車はなぜ「みな同じ」に見えるのか

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マツダのクルマは、どれも「みな同じ」にみえる。なぜ車種ごとに個性を出さないのか。そこには8車種すべてのデザインを共通化することで、大手に“台数”で対抗するというマツダの生存戦略がある。しかもその戦略は“見た目”だけにとどまらない。「デザインの共通化」に隠された狙いとは――。


マツダの新世代商品群(3代目アクセラ、3代目アテンザ、4代目デミオ、CX-3、CX-4、CX-5、初代後期からのCX-9、4代目ロードスター)

こんなことを書くと怒られるかもしれないが、マツダの歴史は経営危機の歴史だ。1973年のオイルショックでつぶれかけ、1990年代の多チャネル化構想でつぶれかけ、フォードの支援を受けつつ、2000年代前半までその後遺症に苦しみながら、一部工場の操業停止やそれに伴うレイオフというまさに危篤状態をくぐり抜け、ようやく再生のめどが立った所で、リーマンショックで3度経営危機に陥った。

「もうダメだ!」という死の淵からよみがえるための唯一の出口はコモンアーキテクチャーだった(参考:トヨタを震撼させたマツダの"弱者の戦略" http://president.jp/articles/-/22042)。1908年、米GMが世界に先駆けて導入したプラットフォーム共用という絶対ソリューションは、21世紀に入ってほころび始める。

■「部品共用」と「コモンアーキテクチャー」の違い

自動車産業全体がポスト・プラットフォームを希求する中で、マツダが示した新しい解がコモンアーキテクチャーだ。現代の自動車開発は、ハードウエアの物理的生産コストよりも、各種特性を解析して最適化するための基礎研究と、それを個別の製品に合わせて調整するキャリブレーションに膨大なコストが掛かっている。

だからシャシーの流用よりも、一度丁寧に行った基礎解析とキャリブレーションを全車種に確実に適用できることが、製品性能向上の面でもコストダウンの面でも重要だ。コモンアーキテクチャーとは言って見れば数学の公式みたいなもので、最終的な答えは変数でいろいろ変わるが、公式は常に変わらない。コモンアーキテクチャーでは全ての問題を同じ公式で解答できるような設計を目指す。

もう少し簡単なたとえ話をしてみる。家庭的な「肉じゃが」を流用してカレーにするのが部品共用。一方、プロの手による最高の「ホワイトソース」を作っておくのがコモンアーキテクチャーだ。このホワイトソースがあれば、シチューでもクリームコロッケでもグラタンでも、どれもおいしくできあがる。肉じゃがは、それだけでも食べられるし、カレーに流用すれば2度おいしいわけだが、当然最初からカレーに最適化して作られたものに及ばないし、流用範囲も限られている。

クルマの設計生産においてこの「ホワイトソース」に当たるものをどれだけ見つけ出し、それを最良の仕上げに持って行くか。ここが腕の見せ所で、緻密な計算がはまれば、性能向上と価格低減を両立できる。さらに継続してホワイトソースを研究して進化させ続ければ、シチューも、クリームコロッケもグラタンも全部がさらに進歩する。

■「どれも同じ」には理由があった

話は変わる。アクセラ、アテンザ、デミオ、CX-3、CX-5、ロードスターといった、マツダの新世代商品群(2012年2月以降発売の商品。記事冒頭の写真参照)を貫くデザインを見て、あなたはどう思うだろうか。「どれも同じ」に見えるか、「統一感がある」と思うか。

「どれも同じでつまらない」と言う意見はよく目にするが、それをマツダのデザイン部門トップの前田育男常務にぶつけてみると、ここにもコモンアーキテクチャーの思想が色濃く表れていたのである。

デザインにおけるコモンアーキテクチャーには、工学レイアウトと造形という2つの面がある。日本ではデザインというとモノの形を格好良くする話だと思われがちだが、インダストリアルデザインにおけるデザインとはそこに求められる機能を十全に盛り込んで使いやすくすることまでが含まれる。単純な話、どんなに格好良くても、人が乗れないクルマには意味がない。

■「人を理想的に座らせる」とは

クルマに人が収まるということは、当たり前に見えて、実はそう簡単なことではない。現在市販されているクルマも、人間工学的に見て正しい座らせ方ができているものばかりではないのだ。着座した時の目の高さが、フロントウインドーの上端に近すぎるクルマはたくさんある。こういうレイアウトだと、時に信号が十分に見えず運転しづらい、といったデメリットがある。天井と頭の距離に圧迫感を受けないかどうかも重要だ。

さらに大事なのは、座った状態で自然に手を伸ばした時にステアリングが握れ、自然に脚を伸ばした所にペダルがあることだ。特に小型車ではこれがオフセット※しているクルマが多数派だ。

※編注:オフセットする……基準とする点や座標からズレていること。

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