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夫婦調査に見る「学歴上位妻の台頭」-生涯未婚データ考-男性が背負わない結婚、という選択 - 天野 馨南子

はじめに-高学歴女性は結婚できないのか

筆者が2017年2月に発表した「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差」希望の叶い方、では、今や初婚カップルの4組に1組が年上妻カップルであり、さらに年上妻婚のうち「女性が4歳以上年上」が2位(6.5%)にランクインすることを紹介した。

この結果は、一般的な感覚からはかなりの驚きをもって捉えられたようである。

「団塊ジュニア」を含む40代より若い人口層で人口ピラミッドが逆三角形をとっている現在、日本の「人口マイノリティ化しつつある若い世代」で起こっていることや感覚に対して、「人口マジョリティの年輩陣」の理解の中に「大きな誤解」が生じる可能性が高まっていることを注意しなくてはならない。

少数派となりつつある若手層の考え方を多数派である40代以上が自分の世代の恋愛・結婚観で捕らえて評価したり、意見をしたりしてしまうことによって、若手層を巻き込むつもりが全くの的外れとなってしまいかねないことも少なからず起こりうるだろう。

本稿では、「女性が高学歴化したから」結婚できなくなったのではないか、未婚化が進んでいるのではないか、という議論を取り上げて、少し深堀りをしてみたい。筆者を含めた団塊ジュニア世代ではかなり一般的な「結婚が難しくなる理由」によくある議論ではあるが、今の時代においては、果たしてデータから見るとどのような状況か、印象論を排して確認することとしたい。

女性の大学進学率と結婚状況

「女性が高学歴化したから」という状況をまずは大学進学率でみてみると、最新の2016年における女性の大学進学率は48.2%、短大進学率は8.9%である1(図表1)。両者をあわせると57%の女性が大学や短大に進学したことになる。

【図表1】学校種類別進学率の推移

一方で、データは少々古くなるが、2010年の国の夫婦調査2のデータを使用して最新ベース(2005年以降の結婚年のカップル)での「妻と夫の最終学歴マトリックス表」を作成し、妻の最終学歴の割合と妻の学歴別に夫の学歴割合を算出してみたところ、図表2のような結果となった。

【図表2】妻の最終学歴別 夫の最終学歴マトリックス表(%)

図表2を見ると、短大卒以上(短大・高専卒妻、大卒妻、院卒妻の合計)の妻が全体の49%となっている。この夫婦調査時点の2010年の短大・大学等進学率は56%である。

女性の56%が短大以上に進学しているのに、妻の短大卒以上割合が49%、と言うのは、一見「高卒までの学歴の女性の方が結婚している?」かのように見える。

しかし短大等への進学時点と結婚時点では、進学時点で結婚しない限り、時差が生じる。

図表2の夫婦調査が実施された2010年における女性の平均初婚年齢を確認してみると、国の統計で平均28.8歳であった。

とすると、女性は最終学歴卒業後、平均して、高卒妻であれば約11年、大卒妻であれば約7年経過してから結婚しているという計算になる。

つまり、結婚というライフイベントのおよそ10年前の短大以上進学率と比較して、高学歴が女性に与える影響については見なければならない、ということになる。

あらためて、夫婦調査から10年さかのぼった2000年の女性の大学進学率をみてみると、大学への進学が31.5%、短大等への進学が17.2%となり、あわせて49%ということになる。

以上から、2010年の夫婦調査時点においては

となり、高学歴女性(ここでは短大卒以上)の結婚に対する有利・不利は、データからは特に読み取れない(有利でも不利でもない)、という結果であった。

以上から、「高学歴女性が結婚に不利」「高学歴女性が増えたから未婚化している」という感覚は、妻の高学歴比率が進学比率と一致していることから見て、事実誤認である、といえるだろう。

妻が学歴上位の夫婦の割合

図表2をみて、想像するよりも「夫よりも妻の学歴が高いカップルが多い」ように感じられる人は少なくないのではないだろうか。

日本においては、歴史的には男性が学歴も社会的地位も年齢も高い「(男性)上位婚」(以下、上位婚)とよばれる結婚形態が主流であった。しかしながら「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差」希望の叶い方 でも示したように、より価値観の近い同年齢婚や伝統的価値観を覆す年上妻婚が近年では大きくその割合を伸ばしてきている。

そこで、伝統的な上位婚とは異なる「学歴上位妻婚」の状況を算出してみることとした(図表3)。

【図表3】学歴上位妻の割合(2005年から10年間(上)と1985年から10年間(下)の比較)

データからは既に4組に1組以上の割合で妻の学歴が上位の結婚が成立している、ことがわかる。

読者にとって、それよりも意外な結果であると思われるデータとして、既に1980年代後半から5組に1組が学歴上位妻婚であった、ということも判明した。

今一度、図表2をみてみると、2010年の調査において、大卒妻の約3割が高卒以下の学歴の男性と結婚している。大卒であっても男性の学歴にこだわらないと見られる女性が約3割も「既婚者にはいる」と言う結果である。また、男女とも高校進学率が限りなく100%に近づいている現在、高卒女性が学歴下位の中卒男性を結婚相手として検討することがそもそも確率的に困難であることを考えると、もしかすると25%よりも高い割合の男女が「上位婚」にこだわらなくなってきている可能性さえも指摘できるのではないだろうか。

オーダーメイド結婚の可能性

人口ピラミッドの上半分、多数派を占める40代以上の人々から見ると、以上の分析結果は明らかに結婚観・結婚の姿が変化しつつあることを示している。

「僕が彼女を支えてあげないといけない」
「彼にリードして欲しい、ついていきたい」

確かにこれらの感覚も結婚観として否定されるものではない。

しかしながら、4組に1組という「学歴上位妻の台頭」という分析結果は、結婚希望がありつつも未婚で悩む独身者や彼らの結婚を応援する周囲の環境に、「結婚観のダイバーシティの壁」が立ちはだかっている面もあるのではないか、と示唆しているようにもみえる。

少なくとも本稿の結果を見て意外であると感じた人には「結婚観のダイバーシティの壁」は存在していた側面はあるだろう。

結婚の夢が叶うか叶わないかの境界線に見え隠れする「結婚観のダイバーシティの壁」。

結婚を希望しつつも未婚者が急増する中で、結婚希望者は、たった一度の人生「自分だけのオーダーメイドの結婚」を(親や社会の伝統的価値感に流されず)本当に追求できているのかどうか、今一度考えてみるのもよいかもしれない。

1 内閣府「男女共同参画白書 平成29年度版」
2 国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(夫婦調査)」

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