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ヒカル氏の炎上と満たされない精神

著名youtuberのヒカル氏らが個人の価値を株式に見立て売買する「VALU」で、高騰を煽って実は売り抜けていたことを受けて、ある種のインサイダー取引に当たるのではないかと批判されている。

事件の顛末や合法性については不明点が多く(そもそもビットコインを利用した価値の取引などといったものを法が想定していたとは思えない)、youtuber界隈の事情にもとんと不案内なので、この案件自体にコメントする立場ではないが、事件後のヒカル氏の謝罪?ツイートの志向性(=この人にとっては何が有意味なのか)に興味をひかれたので考察してみた。

事件後ツイートの抜粋は以下の通り。
もともと自分たちの価値を比べて、誰が一番価値のある人間かを競う。という動画の企画として考えていただけで、僕たちは一切VALUで利益を得るつもりはありません。
・・・(中略)
僕はわざわざ数千万(円)のために自分の信用を落とすような小銭稼ぎはしません。
価値を比べるには、指標が必要だが、この場合はどれくらいファンに買ってもらえたか、という金銭の量がそれにあたる。
AKBの選挙などもこの類型に当たるので、こういったやり方は現在、最も勢いのある評価手法なのかもしれない。

この件で問題にされているのは、煽ってファンに買わせ高騰させた価値を自分たちだけが売り抜けるというスキームが、(意図は別にして)計画可能なゆえに信用を落とすことになってしまった点である。
なので、数千万のために信用を落とすようなことをしない、というコメントは少なくとも予見可能な結果を見誤ったという意味を含意しており、信用を回復できるようなレベルのものではないといえる。
(ふつうに予見可能な結果を見誤る人を信用できるだろうか。)

それはそうと、金銭の量によって信用の価値が決まる、という考えは今や広く一般に受け入れられている感があるが、全てがそうではない、という点に留意しなければならないのではないかと思う。

ビートたけしがどこかのエッセイでこんなことを書いていた。
銀座の高級バーに行くと超金持ちたちがいるが、彼らには欲しいモノはもはやなにもない。しかし、喉から手が出るくらいほしいものが一つある。名声だ。たけしさんの名声を買えるなら何億でも出す、と言われたよ・・・云々。

名声の価値は金銭で必ずしも計測できるものではない。

ヒカル氏の価値はコンテンツを媒介としてyoutuber視聴者という枠内で流通している分には問題なかった。(そして名声もその枠内で収まる)
それが疑似株式の取引という錬金システムをコンテンツとして消費しようとした時点で、金銭を稼ぐ方法論が従来のファンの消費形態を超えてしまい、システムそのものの公平性という観点から批判の火を浴びることになった。

価値を高めて名声を得るのは能力の範囲内でやっていれば問題ないが、手に余る領域にまで進出するとしっぺ返しを食らう。
これは金銭だけの問題では片付かない。
(この点、自分のファンの範囲を限定しメルマガで稼ぐというやり方は、リスクの少ないうまい方法だ。)

極めて広範囲の名声、あるいは影響力の大きい名声を得るためには金銭はパワー不足だ。

いくら稼いでもパチンコチェーンのオーナーが本物の名声を得ることはないが、一介のサラリーマンでもノーベル賞をとれば死ぬまで名声は約束される。
相当年齢の2~3%しか大学に行けなかった明治時代には大学生(帝大生)は一般に敬意の対象だったが、カネをつめば誰でも入れる今の大学生に敬意を抱く人間はあまりいない。

あるいは名声には質がある、といってもいいだろう。

数万人に影響力があり年収億越えのyoutuberとカンヌやベネチアのカーペットの上で記念撮影するビートたけしと数十人しか知らないが永井荷風の研究については押しも押されもせぬ市井の大物好事家では、誰がどれだけ価値があるとは言えないと思う。

要は身の丈に合った価値に納得できていればよい。

youtuber氏もファンを相手にコツコツコンテンツをつくって喜ばれていれば、それが職業冥利につきるわけで、変にビジネスを拡大しようとか野心を持たない方がいいんじゃないかと思う。

それはそれでそういうのが得意な人がキッチリやればいいことで、その人が信用できるかできないかの判断は自己責任ですがね。

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