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「高等教育の無償化」に関する日経社説~さらに2つの問題~

「日経新聞社説(2017年8月20日2面)は、実に適切に、また見晴らしよく、日本の大学の現状を指摘したものだった。

1. 社説が指摘する「高等教育の無償化」の問題

社説のポイントは次の通りである。

・高等教育の無償化の検討がされているが、日本の高等教育の現状を抜本的に改革せずして、この政策が講じられれば、大学の質の一層の低下を招くことは避けられない。

・日本の大学の現状とは次の通りである。すなわち、学生選抜機能を失い、水膨れし、機能の低下が著しく、限られた予算を奪い合い、教育・研究の投資効率を著しく低下させている。

・そもそも、人口減少にもかかわらず大学数が増えている。92年に比較し、18歳人口は40%減だが、大学数は50%増、定員は25%増加した。

・こうした背景には、規制緩和政策があった。政府の規制緩和策が高等教育政策にも及び、大学設置基準が緩和された。一般に規制緩和は、新規参入を促す一方で、質の低い財やサービスは市場で淘汰されるような、疑似市場の仕組みが機能することが前提とされる。しかし、大学においては、この仕組みにあたる評価がうまく機能していない。

・社説は次の提案をもって結語としている。すなわち、大学評価機能を強化し、その結果に応じて補助金を傾斜配分すること。まずは、大学が公費投入にふさわしい「公的価値」を持つことを社会に証明する必要がある。

2. 社説を受け2つの意見

社説を受け、2つ述べたい。

第1に、大学評価事態も抜本的な改革が求められているという点である。社説は「認証評価制度」が社会的に認知されていないと指摘している。だが、それ以上に根深い問題があると考える。ひとつは、大学評価制度が複数存在し、しかも次第にその数が増え、複雑になっている点だ。

認証評価制度が制定されたのは2004年だが、1998年には自己評価制度が努力義務化され、そこに第三者評価が加えられた。専門職大学院、法科大学院の認証評価制度もある。また、2003年には国立大学法人評価制度が施行されたが、2006年には国立大学を3類型しKPIに基づいて評価するものも導入された。制度的には目的は異なるとされるが、評価の内容の実際は重複も少なくない。それは評価コスト、つまり評価をする側も評価を受ける大学側にも相当のコストを強いることになる。

また、認証評価の実施機関は、大学が会員となって構成される協会が担っている。つまり、同業者組織が互いに評価を行っているのである。所謂、ピアによる評価である。「大学の状況は大学関係者でないと分からない」という意見もあるが、果たして先のような状況下においては、改革に向けた厳しい評価ができるだろうか。ピア評価は、専門性という点で強みもある反面、職人芸に傾斜して、標準化が劣後するため、客観的な方法論の発展を妨げる側面がある。

大学改革の鍵要因として、評価を挙げるのであれば、まず、評価制度を整理し、より透明で機能するものにしてゆく必要がある。

第2に、何のための「高等教育の無償化」であるのかという点である。この社説は、自民党が、最近、検討を始めた「高等教育の無償化」を受けてのものである。先週の日経新聞によれば、この無償化の議論は、高等教育政策といよりも改憲を念頭に、維新の会を意識して議論しているものだという。全く異なる目的に無償化政策が講じられるとすれば、本末転倒どころの話ではない。公費の壮大な目的外使用ではないか。

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