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母の治療をめぐり兄弟間で食い違い。高齢者の命の尊厳を守る医療裁判は最高裁へ

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入院中だった実母(享年89)に対して十分な説明もなく、治療を中止し、死なせたとして、林田悦子さん(71)が、立正佼成会付属佼成病院の経営主体の宗教法人立正佼成会などを訴えていた控訴審で7月31日、東京高裁(河野清孝裁判長)は、林田さん側の控訴を棄却した。

争点の一つとして浮上していたのは「キーパーソン」だ。判決ではキーパーソンの設定に問題はない、としている。林田さんは判決不服として、最高裁に上告した。

実母が脳梗塞で入院。呼吸状態悪化で入院から83日で死亡

訴状によると、2007年6月18日、林田さんの実母が脳梗塞で倒れ、佼成病院に救急搬送され入院した。経過がよかったために、7月2日から、退院に向けてリハビリが始まる。4日には車椅子に乗るようになり、リハビリ室にも来れるようになる。5日には平行棒内で起立もできた。12日には介助なしで、ベッドの横に足を下ろして座る姿勢(端座位)ができるようになった。

林田さんは、病院に行った日はいつもリハビリに付き添った。当時、実母は、理学療法士の指導で名前を書いたり、輪投げをして、機嫌がよかった。しかし林田さんの認識では、長男が少なくとも7月27日までには、実母の経管栄養の流入速度を速めた。その頃から、元気がなくなっていく。長男は8月15日にも流入速度を速めた。その後、実母は嘔吐して具合が悪くなった。

さらに、8月20日、医療記録によると、「長男は延命につながる治療すべて拒否、現在DIVで維持しているのも好ましく思っていない」ため、「本日にてDIV(点滴)終了」と書かれている。つまり、点滴も酸素治療なども中止した。この治療拒否について、林田さんは長男から説明を聞いていない。また27日の、医師記録では「抗生剤変更、増強したいところではあるが、(長男が)高度医療を拒否されている」と書かれている。

9月3日には、実母の呼吸状態が悪化したが、長男は酸素吸入も断っている。

ただし、夜間だけは、呼吸が止ると病院が手薄だからあたふたする等の理由で酸素マスクをした。担当医師は、「もとより、酸素がある方が本人は楽であろうが」とも書いている。しかし、朝になるとはずされるため、日中は呼吸状態が悪化し、夜は持ち直す、という苦しい日々が繰り返された。結局、8日、実母は亡くなった。

病院側は裁判になってから「キーパーソン」を持ち出した

この訴訟では病院が適切な治療をしていたかどうかも争点だが、病院側が長男の意向に沿った治療をしたことの是非が問われた。病院側は、裁判の途中で「キーパーソン」という言葉を持ち出し、キーパーソンの長男との間でかわされたやりとりを中心に治療方針を決めたことにしている。

一方、林田さんは「病院側は当時。長男にもキーパーソンという言葉も出してないし、その役割についても説明していない」と述べ、病院側の説明が十分ではないことを主張していた。林田さんがこうした経緯を知ったのは、実母が亡くなって2年後だった。また医師記録を見て長男が「自然死させてください」との旨を医師に伝えていたこともわかった。

たしかに、患者本人の意識が曖昧な場合、終末期医療をどう決めていくかのプロセスは問われることになる。

林田さんが医師と会ったのは2回。実母入院後11日目・6月29日のときは、「驚くほど経過は良い」「7月からリハビリを始める」などの説明があった。実母の病状が悪化した9月7日にも会っているが、長男が延命につながる治療や酸素投与を拒否したことについて、またそのリスクについての説明を受けていない。それどころか実母の治療には最善が尽くされているものと思っていた。

林田さんは「医師は長男がキーパーソンだと、裁判になって突然言い出した。キーパーソンを誰にするのか、その役割は何かという説明は受けていない。長男もキーパーソンという言葉を口にしてない。仮に長男がキーパーソンなら、役割を果たしていない」と指摘している。

最高裁に上告した林田悦子さん

さらに続ける。

「具合が悪くなったときには医師と話し合いで、異論を述べなかったことが、判決では延命治療拒否についての『同意』とみなされた。このとき、少なくとも家族間では話し合っていない。医師は、母について、『苦しそうに見えますが、今、お花畑です』と言っていた。母は、苦しくなく、持ち直すのだろうと私は思っていた。家族の一人が同意をすれば、高齢者は死なせていいのだろうか」

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