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村上誠一郎氏「議員は部会で議論よりブログ写真更新に熱心」

【村上誠一郎・元行政改革担当相】

「安倍政権はそろそろ賞味期限を迎える」。そう言い切るのは、これまで自民党内部から安倍首相の政策・国会運営・人事に警鐘を鳴らし続けてきた村上誠一郎・元行革相。当選10回のベテラン議員が安倍首相に猛省を促した。

 * * *
 現政権が一強となれたのは、安倍首相が聡明だったからではない。最大の要因は、1996年に「小選挙区比例代表並立制」が導入されたことだ。

 これは当時権勢を誇った小沢一郎氏が、自分が首相になった時にどのように党内を掌握するかを考え抜いて作った制度である。執行部が政党助成金と公認権と比例の順位を握り、議員を掌握するようになった。

 さらに執行部の権限を強くしたのが2005年の郵政選挙だ。当時の小泉首相が自分の政策に従わない議員に刺客候補を送った選挙である。

 多くの議員は、小選挙区制と郵政選挙がトラウマとなり、党執行部の言うことを聞かないと公認されず人事で冷遇されるため、執行部に従属するようになった。

 かつての中選挙区制や派閥政治は悪い面ばかりが強調されるが、新人の発掘や教育ができる利点もあった。中選挙区時代、我々は朝の部会で諸先輩の議論を聞いて政策を勉強した。地元で5~10人規模の座談会を1000回以上行い、有権者が何に関心があるかを聞きながら国政報告をした。

 だが小選挙区制になると派閥のチェックが効かず、街頭演説が選挙運動であると勘違いし、また秘書に地元を回らせて感触の良かった支援者だけに足を運ぶ議員が増えた。

 地元で有権者とコミュニケーションを図るよりも、党幹部の覚えをめでたくして公認と比例の順位をもらうことが当選の近道だと思い、有権者の気持ちを理解しようとする議員が減った。

 特に、180人(次期総選挙から176人に定数減)もの衆議院議員が比例で受かるようになって衆議院の劣化が始まった。部会に出ても議論ではなく、スマホで自撮りした写真をブログに載せることに熱心になっている。

 また「(自民党)魔の二回生」に代表されるように、一見、経歴は申し分ない議員の不祥事が止まらない。

 問題は若手ばかりでない。今の自民党は財政・金融・経済を熟知していない政調会長が続き、政策責任者が重要法案の内容を完全に理解していないため党内の議論が進まない。安倍一強のもと、あらゆる面で古き良き自民党の底が抜けていくのだ。

 だがしかし、アベノミクスはそろそろ賞味期限を迎える。財政政策と金融緩和はすでに限界のうえ、肝である有効な成長戦略はいまだにない。国の借金はGDP比で230%を超え、増え続ける社会保障費は将来世代に重い負担を残す。財政・金融・社会保障の立て直しは待ったなしだが、改革は一向に進まない。

 また、安全保障は敵を減らし味方を増やすことだが、外交努力で敵を減らすことを怠れば防衛費は増大するばかりだ。

 しかも都議選で大惨敗したのに総括も反省もせず、出てくるのは内閣改造だ。上ばかり見ている国会議員をポストで党執行部に従わせ、自由闊達な議論が行われなければ自民党は信用を失うだけだ。自民党はできるだけ早く体制を整えて国民と向き合う必要がある。

 私は1986年の初当選以来、10回連続で当選して一回も自民党を出たことはない。僭越ながら「ミスター自民党」だと自負している。正直なところ、そろそろバットを置きたいと思うけれども、本会議場を見渡して国会の現状を見ていると最後のご奉公をしなければならないという思いである。

 政治は国民に対し最高の道徳が求められるのである。政治や行政が歪められていると国民に真の政治不信が起こるかもしれない。だから最後まで正論を言い続け、自らの信じる政策・政治理念を訴え続ける所存だ。

●むらかみ・せいいちろう/1952年愛媛県生まれ。東京大学法学部卒業。1986年衆議院議員選挙初当選後、10回連続当選。大蔵政務次官、衆議院大蔵常任委員長、初代財務副大臣、行政・規制改革、地域再生、特区、産業再生機構担当大臣、衆議院政治倫理審査会会長など数々の要職を歴任。

■取材・構成/池田道大(ジャーナリスト)

※SAPIO2017年9月号

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