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良いと信じられてきたことが実は駄目なことなんじゃないのか

 日本経済が衰退していった理由は色々と言われています。説の多くは全くの見当違いなものですし、一見すると妥当に見えても実はミスリーディングになっているものもあります。結局のところ要因は複数あるにもかかわらず、特定の要因だけを衰退の理由に挙げることで他の要因を切り捨てようとする、そうした主張も少なくないわけです。例えるなら誰か一人を「犯人」として検挙し幕引きを計り、共犯者を逃してしまうようなものですね。

 まぁ日本経済が駄目になった理由は少なからず頭に浮かびますが、最大公約数的なことを言えば「基準がおかしい」のかも知れません。何をすべきかすべきでないか、何を残して何を切り捨てるのか、何に投資して何を削減するのか――そうしたものを判断する上での基準が根本的に間違っていたからこそ、世界経済の成長とは反対の方向に進んできたのではないか、そう思えてならないわけです。

 欧米と違って訴訟リスクも低ければ組合の抵抗も皆無の日本では人員削減もスンナリと進められてしまいますが、恐ろしいのはリストラの結果として経営再建に繋がったと言えるケースがあまりにも少ないことです。日本企業はまるで自分の手足を食べる狂った化け物のごとし、リストラの結果は組織が合理化されるどころか弱体化するばかりだったりします。日本の会社が「不要」と判断した社員こそが本当に必要な人材であり、日本の会社が「必要」と判断した社員は実は組織の癌だったりはしないでしょうか。

 つまり、この20年あまりで、日本で「良い」と考えられてきたことが実はダメなことで、逆に「悪い」と言われてきたことこそ、進むべき道で会ったのではないか、みたいな気すらするのです。例えば、「言われたことしかやらないのはダメ」辺りはどうでしょう。大半の日本企業の中では「言われたことしかやらないのはダメ」だと固く信じられているところですが、この考え方こそ致命的な間違いではないかな、と。

 「言われたことしかやらないのはダメ」なのだと、そう盲信されている組織の中では必然的に「(言われていないことを)自分で考えて行動する」ことが求められます。だから会社で評価される意識の高い人ほど、他人の言うことを聞かない、素直に言われたとおりのことをやらない、余計なことを勝手にやって組織を混乱させて仕事を増やすことが多かったり等々。ちなみに私の勤務先では、言われていないことを自発的に追加して行動することを「付加価値を付ける」と呼んでいます。

 部下の大半が「言われたことしかやらない」組織であれば、必然的に上司は明確な指示を出すことが求められますし、結果が悪ければ責任も明確(上司の支持が悪い!)になります。逆に「自分で考えて行動しなさい」との意識で染め上げられた組織の場合、上司は敢えて曖昧な指示を出し、部下は上意を忖度することが仕事になるわけです。この結果が悪ければ――適切に忖度できなかった部下に問題がある、と。前者と後者、勝てる組織はどっちなんでしょうかね?

 「言われたことだけではダメ」信仰は、商品開発なんかにも影響しているのかな、と思います。換言すれば、日本の商品開発現場は「(消費者から)求められている機能だけではダメ」と信じ込んでいるのではないでしょうか。消費者が必要としている機能だけをシンプルに搭載した製品を市場に出してくるのは専ら海外のメーカーで、逆に日本のメーカーは「誰が欲しがっているのか?」と首をかしげる謎機能を山盛りにした製品を連発しているのが現状ですから。日本企業は人件費削減に熱心な反面、「無駄な機能」を削減してコストを抑えようとする発想を持ってはいないようです。そういう思想なのだ、としか言えません。

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