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ビジネスホテルはいま #1  “コモディティ化”に一石を投じる小規模チェーンの挑戦 - 瀧澤 信秋

 ホテル評論家として最も多く受ける質問の一つが「良いビジネスホテル(宿泊特化型ホテル)を見極めるポイント」だ。評論家としての活動を始めた4~5年ほど前から、自著や各種媒体、講演などで「デュベスタイル(羽毛掛布団をボックスシーツで包んでしまうベッドメイクスタイル)」「高機能空気清浄機」「お持ち帰りスリッパ」の3点と触れ回ってきた。

 これらはビジネスホテルというよりも当時高級ホテルで標準装備になりつつあったもので、すべて備えるビジネスホテルは少なく、特に注目したポイントであった。これらも実現するようなホテルを「進化系ビジネスホテル」と名付け、情報発信もしてきた。ところがここにきて、上記3点はすでに見極めるポイントではなくなってきている。観光立国邁進で活況に沸くホテル業界。ビジネスホテルのカテゴリーも活況でハイクラス化が進み、様々なチェーンブランドが展開されており、今やこれらは標準装備になりつつある。

“コモディティ化”する進化系ビジネスホテル

 快適なビジネスホテルが増えた。ビジネスホテルの報道向け新規開業リリースなど頻繁に届くが、どのホテルもカッコイイ。限られた客室面積を有効活用した設計、清潔感も高くインテリアなどスタイリッシュに仕上げられている。もはやお決まりのベッドスローはカラフルで、真っ白なデュベカバーによく映え、枕元のクッションもインテリアの一部。アメニティも秀逸。反面、以前であれば取材に飛んでいったような内容でも“食指”が動かないことが多くなった。

 ハイクラス型に代表される進化系ビジネスホテルは、差別化戦略という側面はもちろんあったのだろうが、出店は続出しており均一感が否めない。もはや進化系といった印象も薄くコモディティ化とも表することができるだろう。ビジネスホテルでもローコストタイプの低料金でサービスを割り切りつつ「不満はあるけどそれなりにいい」は、伝統的なポジショニングとして確立されているが、付帯サービスやスタイル、ステイのクオリティを重視、料金帯もアッパーな新たなスタイルのハイクラスタイプは利用者の期待値も高い。

 宿泊施設のタイプ別に延べ宿泊者数の割合をみると、旅館20.9%、シティホテル15.7%、リゾートホテル14.9%に対して、ビジネスホテルは41.9%と突出している(平成28年観光庁宿泊旅行統計調査)。この割合はここ数年大きな変化はなくビジネスホテルの高い需要が続いている。一方、ある調査によるとビジネス利用は全体の3割程度でプライベート利用が大きな割合を占めてきているという。観光旅行にビジネスホテル利用は定番になりつつある。

 昨今、料金高騰も叫ばれているビジネスホテル。もちろん利益率を重視することは当然である一方、高い料金設定は相応のクオリティを求められることにも繋がる。観光などプライベートでのビジネスホテルの利用者からは「大きな不満はないがどこも同じ……」という声がよく聞かれる。特に進化系・ハイクラスビジネスホテルでそうした傾向がある。かような現況を鑑みるに、高い需要が継続しているにもかかわらず、プライスポジショニングや供給量、類似コンセプトといった消耗戦フェーズに突入しつつあると感じている。

星野リゾートの新たな挑戦

 全国各地へハイクラスな旅館やリゾートホテルを展開していることで有名な星野リゾートが、今後宿泊特化型への参入を進めていくという。星野佳路代表も「運営者目線からすると宿泊特化型はコモディティ化の渦に埋没する危険性がある」と指摘する。同社で市場調査したところ、宿泊特化型へはまだ3割程度は参入の余地があるという結果が出たとのこと。すでにこれだけのビジネスホテルがあるので驚きだが、確かに、星野リゾートブランドの宿泊特化型ホテルというだけで話題性や利用者の期待値も高いだろう。

小規模チェーンのトライアルにも注目


「ホテル京阪 淀屋橋」の便利なシステム

 そのような中で、いま数店舗から10店舗程度という新興小規模チェーンが面白い。ビジネスホテルのコモディティ化という状況下、大規模チェーンにはできない小規模ならではの目線やトライアルには注目だ。7月28日に開業した「ホテル京阪 淀屋橋」では、客室のテレビ画面でランドリーやレストランの空き状況などがわかるシステムを導入し話題になっている。このエリアはハイクラス型ビジネスホテル激戦区であるだけに、他店との差別化も重要な課題だという。現在8店舗あるホテル京阪ブランドであるが、今後15店舗程度まで拡大していくという。


全室にマッサージチェアを完備したレム(写真はレム六本木)

 都内3店舗のほか、新大阪、鹿児島へ展開する「レム」は“眠りをデザインする”がコンセプトのホテル。ホテルだけに眠りへの特化は当然ともいえるが、ビジネスホテルにしてレムのクオリティは別格だ。全室マッサージチェアやレインシャワーなど快眠導入への仕掛けにも注目であるが、何よりベッドマットレス「シルキーレム」の評価が高い。日本ベッド製造株式会社と共同開発したオリジナルだ。共同開発のマットレスは高級ホテルなどで見かけるが、宿泊特化型ではアパホテルのクラウドフィットなど一部にみられる程度。同ブランドでは拙速な出店は控え、慎重な店舗展開をすすめているという。 

クリーニング家電を導入したホテル


ホテルフォルツァ博多(筑紫口)新棟の10室に導入された「LG styler」

 九州地区で4店舗展開する「ホテルフォルツァ」。人気テレビ番組でも紹介し全国から大きな反響をいただいたが、開業当初から全室にタブレット端末を設置したり、コンセプト性の高い客室を展開するなど注目のチェーンだ。7月28日に開業したホテルフォルツァ博多(筑紫口)新棟の一部客室では、衣類をハンガーにかけて入れるだけで除菌や除臭、シワ取りができる衣類クリーニング家電「LG styler」を導入。ハイクラスブランドならではの新しい試みに意欲的だ。開業当初から宿泊特化型ホテルのコモディティ化を想定、独自のポジショニングを重視してきたという。大阪や札幌といった九州以外への進出も予定しているというが、クオリティを保ち進化しつつの堅固な店舗展開だ。

 小規模チェーンの注目すべきトライアルを一部紹介したが、規模を生かしたブランド力も強みの大手VS小回りのきく小規模チェーンという構図は今後も続いていくものと思われる。

※「ビジネスホテルはいま #2 ホテルの実力が分かるのはハウスキーピングだ」に続く

(瀧澤 信秋)

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