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誰のために忖度するのか?

アメリカ留学時にネゴシエーション(交渉)の勉強をしたのですが、そこで印象的な言葉に出会いました。それは「相手の靴を履く」です。“Put yourself in your opponent shoes” 詳しくはその英語を覚えていませんが、こんな感じです。相手の靴を履くとは「相手の立場に立ってものを考えなさい!」ということです。これは子供の頃に親や先生から叱られるときの決まり文句の一つみたいなもので、これがアメリカの最先端のネゴシエーションの教科書に書いてあったのはある意味笑いました。

教科書にあるということは、多くの人がやってない、ということでもある訳で、言われてみれば私自身も不十分であると反省しなければなりません。相手の立場に立ってものを考えることにより相手が欲するものが分かり、何をどの程度譲歩すればいいのか、というwin-winに結びつけることができるということでしょう。

忖度という靴の履き方

今年の流行語大賞になりそうな、森友学園や加計学園で有名になった「忖度(そんたく)」という言葉があります。聞いたことはあっても漢字はなかなか書けなかった言葉です。KY「空気読め」にも関連するかもしれません。「上司に、みなまで言わすな!」「部下たるもの上司の意図をくみ取り先回りすべき」一を聞いて十を知る、という言葉もそれに関連しそうです。忖度のためには、上司の靴を履くことは重要です。

ビジネススクールでの講義でも、僭越ながら私の著書にも「経営者の視点に立つ」ことの重要性を強調しています。経営の視点で考え、自分のやるべきことを考える。そうすればセクショナリズムも起こりにくくなるし、権限委譲もスムーズになり強い組織になるでしょう。一方で、上司や経営者が間違っていると思えば、しっかりと諫言しなければならないし、ましてや上司が法律に触れるようなことをした場合には、忖度してはいけないのは当たり前です。これは民間企業であろうと公務員であろうと同じです。

政治家や公務員が忖度すべき対象は法令であり国民

森友学園や加計学園の例でいえば、公務員の皆さんが選挙で選ばれた上司である政治家の意向を汲んで行動するのは必要ですが、当然のことながら法令に則ったものであるべきです。萩生田内閣官房副長官や官僚の皆さんが安倍総理の意向を忖度するにしても、政治家として官僚として、法令にそして国民に間違ったことをしていないことが前提です。要するに、忖度すべき相手は有権者である国民であるべきです。

松井大阪府知事は「世の中、忖度はある。総理が政治家であるなら忖度はある」とおっしゃっていました。それはそうかも知れませんが、その忖度は法令に遵守して国民に対してであったのかが問題になっていたわけですから、そこをはっきりとさせて言うべきです。森友学園や加計学園で問題にされているのは「国民を裏切り、違法に行政を歪めるにも関わらず忖度した」という疑惑ですから。違法なものが許されるわけがありません。

アメリカに見る例、忖度すべき対象は社会通念でもあるべき

トランプ大統領が就任直後に一定の国からの入国禁止の大統領令を出したにもかかわらず、司法長官がNOを突き付けました。これはまさしく職務に役割に忠実に、そして合衆国憲法に忠実に司法が判断したということで、アメリカ社会の健全さを見ました。

またつい先日は、トランプ氏の白人至上主義を擁護するような発言に対して、経済界でもGEのジェフイメルト会長やメルクのフレージャーCEOなどの名だたる大企業の経営者が製造業評議会から辞任しました。これはグローバルなビジネス界の社会通念として「差別は許容できない」というビジネスマンとしての正義感だと考えます。

それは顧客や株主そして社員といった、グローバルビジネスのステークホルダーもその観点に沿っているからそのような判断を下したのでしょう。彼らのステークホルダーはアメリカだけでなく世界中ですから、世界の基準として差別を許容しないという社会通念があるということで、それに従ったということだと考えます。

日本社会の活力のためには健全な忖度が必要!

「一を聞いて十を知る」忖度の良さはある筈です。それが社会通念や、自分が責任を果たさなければならないステークホルダーへの責務や、法令に遵守していればです。これに反してしまうような忖度があれば、日本の良さである「いい意味での融通」を利かせられない社会になってしまうことになります。一を聞いたら一しかしてはいけなくなる、これでは社会の活力をそいでしまうことになってしまいます。社会通念、ステークホルダーへの責任、そして法令の遵守。これらを自分自身にも常に言い聞かせていくべしと考えています。

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