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現地で見て聞いたインド「ITビジネス」最前線 - 医療ガバナンス学会

同行した仲間とともに、インドで出会った人々と。後列左端が筆者(筆者提供、以下同)

【筆者:小坂真琴・東京大学医学部生】

 私は医学生である。将来的にはアジアをフィールドに活躍したいと思っている。このグローバル化の時代にあって、海外にほぼ縁がないまま暮らしてきたが、日本が下り坂に差し掛かっているのは明白である。教育において、例えば自分が所属する東京大学は、大学ランキングにおいて、2013年の23位から2016年の34位まで一気に順位を落としている。

一方でアジアはこれから経済成長・人口増加の一途をたどり、大学のレベルも上がってきている。世界大学ランキングでも、東京大学の上にはシンガポール国立大学、南洋理工大学、清華大学、香港大学がランクインしている。また、知り合いの先生方が中国などに飛んで、現地で研究しているお話を伺っても、自分の成長のためには1度海外に出ねばならないと強く感じている。今回は、ご縁に恵まれてインドを訪問した。

2~3年で転職が当たり前

「月7~8万円という条件で、新卒2~3年のエンジニアが100人単位で応募してくる。基礎的な教育は在学中に受けているから、日本の同年代に比べると優秀。物価も年率7%くらいで伸びているが、それでもオフィスの家賃は月7万円程度」

「インドのシリコンバレー」と呼ばれるバンガロールで起業し、立派な一軒家にオフィスを構えてプログラミングの仕事をしている日本人経営者はそう話す。若いエンジニアは、月1~2万円で、食事付きの相部屋の寮に暮らしているという。

筆者の小坂氏

 もともと南北と東西の国道が交差する交通の要衝で、1791年の英国による植民地化以降、航空機産業を中心とする軍需工業都市として発達した軍都であったバンガロール。その影響で、インド科学大学院大学もあり、昔からエンジニア人材が集まっていた。米国のIT技術が軍事部門に由来するのと同様で、標高が高く比較的涼しいおかげで住みやすいことも幸いし、2001年以降、IT企業の集積が進んだ。以前インドの首都デリーを訪れたことがある同行者に聞いたところ、バンガロールの街は「デリーの1万倍きれい」とのことだった。

 前出の経営者によると、インドの若手エンジニアは、結婚するまではrisk takerな思考が強く、2~3年で転職するのが当たり前。 インド工科大学(IIT)卒業生などのトップエリートはITジャイアントの企業に青田買いされるのは有名だが、募集をかける時の給与を上げると、明確に応募者のレベルが変わるという。インド人とはやはり文化の差があり、真面目ではあるけれども、日本で想定したような仕上がりにならないこともあるそうだ。日本企業を相手とする仕事が中心であるため、プログラマーのマネジメントは経営者自ら行うらしい。

自然な道のり

学習塾のようなスペース

 続いて、「10000STARTUPS」をスローガンにスタートアップ(比較的新しいビジネスモデルとして市場開拓フェーズにある企業や事業)の支援をしている「NASSCOM」というNPOを訪れた。GoogleやFacebook、Amazonなどの大手企業がスポンサーについて、少し育ってきた中間段階のスタートアップに対して場所とお金を提供する仕組みである。実際に見てみると、提供されているのはごく簡素なミーティングスペースのみでシンプルである。机と椅子が並ぶその光景は大手進学塾の自習室よろしく非常に殺風景だ。

しかし、ここを使いたいと考えるスタートアップは多く、現在使用している61のスタートアップはかなりの倍率を勝ち抜いた強者だという。サポート体制がそこまで充実している印象はなく、数多くのスタートアップがある分、適切に選びさえすれば自然と育っていき、スポンサーとなっている大企業と契約するなり買収されるなりの流れを踏むものと思われた。

「大学でコンピューターサイエンスを学んでいたからね」。「Tech HUB」という、テクノロジー系に絞ってスタートアップを支援するプラットフォームの関係者は、起業に関わっている理由をこう話した。「こうしたいから起業する」という強い意図がなくとも歩む、ある程度自然な道のりなのだろう。

日本が打ち勝つには

 インド及びITビジネスに関して、特段きちんとした知識もないまま見て回ったが、圧倒的な賃金・物価の安さと、圧倒的な人口の多さで押し切っていけるだけの力を感じた。同じ方法は日本では通用しない。高い費用のかかるセットアップがなくても、いわゆる全人格的な高度の教育がなくても成り立つのがITビジネスである。この戦いに日本が打ち勝つには、全く別路線での戦い方が必要なのではないか。

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