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最高値を記録した児童虐待数を減らす方法

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児童福祉に携わる認定NPO法人フローレンスの駒崎です。

 胸の痛いニュースがありました。

虐待件数 12万件余で過去最多に NHK

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170817/k10011102321000.html

 なぜ児童虐待数が10年前の3倍にも増えているのか、またどうやってそれを減らせるのか、を解説したいと思います。

【児童虐待の中身】

 まず12万件の内訳は、以下のようになっています。



 最も割合の多い心理的虐待とは、子どもに対し暴言を吐いたり、子どもの目の前で家族に暴力を振るったりすること(面前DV)等です。

【児童虐待が「増えた」理由】

 2004年に児童虐待防止法の改正によって、それまで虐待と見なされなかった面前DVも「心理的虐待」と定義されるようになりました。

 面前DVでも子どもの脳に物理的ダメージを受けることが、研究によって明らかになったためです。

 それによって、虐待の定義の幅が広がったことで、虐待件数も増えることになりました。

 また、児童虐待に関しマスコミも、コンスタントに報道し続けてきました。

(多くの報道がなされている「待機児童」とニュース分量を比較しても引けをとりません。)



 以前ならば「しつけだろう」「それぞれの家庭のことだから、他人が立ち入ることではない」という認識が、「児童虐待は犯罪行為なので通報するべきだ」というように認識が変わっていったことで、通告(公的機関への通報)件数が増えていったことが考えられます。

 また、政府も児童虐待に対して素早い通告を求めるようになりました。

その一つが虐待相談ダイヤル189(いちはやく)の創設です。こうした施策が、相談のハードルを下げたことも、通告件数の増加に貢献したでしょう。

 さらには、これまで別々に動いていた警察との連携も進んできました。警察が通報を受けたケースを、児童相談所と共有するようになってきました。

 一方で、核家族化による孤独な子育てや、ワンオペ育児等によって、実際に児童虐待が増えているという指摘もあります。本当にそうなのか、またそれはどの程度なのか、ということは更なるエビデンスと研究が望まれます。

 さて、このような児童虐待への関心と認識の広がりは、早期における虐待発見に寄与することとなりました。

 では児童虐待の解決に、我々は近づいているのでしょうか?実際は、そうではないのです。

【パンクする児童相談所】

 児童虐待の通告数の増加によって、児童相談所(児相)の仕事は激増しました。それに伴い、政府も幾分予算を増やし、ある程度児相職員の増加が見込まれました。

 しかし、児相職員が増えるよりも早いスピードで虐待通告数が増えていき、結果として一人当たりの職員が抱えるケース数が増えていき、本当に重篤なケースに手が回らない状況が生み出されていきました。

 こうした事態を受けて、児相がより深刻なケースに集中できるよう、軽いケースに関しては、市区町村に振っていくという取り組みが、北九州市などではなされています。

 しかし、市区町村の担当課も潤沢に人員がいるわけではなく、多くの軽いケースに対処することが難しい場合も多く、試行錯誤を続けています。

【では、どうすればいいのか】

 答えは、児相だけに業務を集中させるのではなく、虐待を予防と対応に分け、予防については基礎自治体にある各子育て支援機関、医療、福祉サービス等がそれぞれ分散・連携して支えていくことが一つ。

 児相に行く前に、できるだけ地域の保育所、学校、子ども家庭支援センター等で相談に乗り、ソーシャルワークを行なって、子育ての負担と生活の不安を減らし、課題解決に伴走していくのです。

 また、児相にケースが行ってからも、児相がしっかりと対応できるよう、児童福祉司をはじめとした職員を増やしていくこと。

 児相を補完する基礎自治体の児童家庭センター等の職員数を増やしていくこと等があります。

 これは、児童虐待の予防と対応のイメージ図です。

 上流でなるべく課題解決を行い、下流に流れ落ちる親子を一人でも少なくさせます。

 しかし一旦児相案件になった場合は、一時保護所や里親等、各プレイヤーが連携しながら子どもの命を救い、彼らにとって最も良い選択肢が準備されるよう努力します。

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