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西武vsサーベラスの攻防とガバナンス改革への教訓

8月16日の報道によりますと、米国の投資ファンドのサーベラス・グループが、西武HDの株式をすべて売却したことが判明したそうです(たとえば産経新聞ニュースはこちら)。西武さんが出資を受けて11年半。西武さんは、ようやくサーベラスさんの影響力から完全に脱することができたといえます。

西武さんが再上場を果たす2013年ころは、両社で経営方針を巡り激しく対立していました。私も夜のニュース番組でテレビ出演を果たしたり(もう二度とテレビ出演はしませんが・・・笑)、いろいろと記憶に残る事件でした。

あの西武vsサーベラスが盛り上がっていた2013年当時、サーベラス側が主張していた「西武のガバナンスと内部統制に問題あり!ガバナンスと内部統制を糾す」という言葉は、新聞やニュースで繰り返し紹介されました(おそらく私が当時いろいろとマスコミから取材を受けたのも、このようなサーベラス側の主張によるところが大きかったと思います)。

アベノミクスが語られ始めたころでしたが、「中長期の企業価値向上のための株主との対話」「株主を含むすべてのステイクホルダーへの説明責任の実践」という言葉も、サーベラス側から主張されていたように記憶しています。

最終的にはサーベラスさんの株主提案は株主総会では通らなかったわけですが、けっこうサーベラスさんも当時は的確な指摘をされていたと思うのですね。とりわけ内部統制については、
①上場申請年度において業績予想数値の下方修正を行う、
②中期事業計画の公表から1年あまりで目標水準を1年先延ばしにする、
といった西武さんの経営姿勢を批判したうえで、「内部統制の在り方に重大な懸念がある」と主張しておられました。

これは、内部統制=不正予防、コンプライアンスと受け止められていた日本的な考え方ではなく、内部統制=事業戦略の確実な執行と捉えるアメリカの経営者の考え方に親和性をもつ主張でした。ただ、あまりそこまでの議論が当時の日本ではなされなかったと思います。

ガバナンスについても同様です。いまのように「攻めのガバナンス」「健全なリスクテイクのためのガバナンス」「執行と監督の分離(モニタリングモデル)を意識した取締役会改革」といった議論がまだそれほど企業社会に浸透していませんでした。

いまなら、ガバナンスのどこに問題があるのか、「ガバナンスが良好」と評価するのであれば、それは企業価値の向上とどう結びつくのか、サーベラスの推奨する取締役候補者が、その目指すべきガバナンスにふさわしいか、といった議論が深まったのではないかと想像します。当時のサーベラスの質問状などを読み返してみても、西武に設置されていた「ガバナンス推進有識者会議」が、西武さんの取締役会をどのように評価しているのか?と聞いたりもしています。

上場後の西武さんが、ホテル事業を中心に業績を回復させておられることはご承知のとおりです。サーベラスさんも、それなりに収益を上げることができたと思われますので、いまとなってはあのバトルを思い出す人も少ないかもしれません。ただ、あの時のサーベラスさんの主張に違和感を感じていた機関投資家も、ひょっとするとスチュワードシップ・コードが浸透している現時点であればそれなりに賛同するところも出てくるのではないか、と思うところです。

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