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鱧のおすましやステーキ騒動 世代間闘争はネットの風物詩

【中川淳一郎氏が炎上事件について語る】

 年長者による若者批判はいつの時代も続く争いだが、ネットの世界でも同じように繰り返されている。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、ツイッターで起きた世代間闘争から、ネット炎上を回避するすべを考えた。

 * * *
 世代間闘争はネットの風物詩である。フェイスブックは、若者からすれば「オッサンの説教・自慢の場でウザい」と敬遠される。インスタグラムは、キラキラし過ぎていて、オッサン・オバサンは入りづらい雰囲気があり、中年が自撮り写真でも公開しようものなら若者から「痛いジジイ・ババア」扱いされる。

 そんな中発生したのが、ツイッターで57万超のフォロワーを持つ劇画原作者・小池一夫氏(81)をめぐる炎上騒動である。同氏はこうツイートした。

「食費にお金を若者はかけられないというが、それは、言い訳。今日のお昼ご飯、鱧のおすましだったけど、家人に聞いたら、実質何百円だって。骨切りした鱧も旬だから安いし、他の材料も残りものだしって。やれば出来る。やらないだけ」

 これが炎上したのだが、理由は「高級食材である鱧を使っている」「お椀1杯何百円、は高い。自分は20円の吸い物飲んでる」「妻に作らせておいて何自慢しとるのだ」などだ。

 普段から分別ある大人としての名言をツイートすることで知られる小池氏ではあるが、さすがに今回は押し寄せる非難が腹に据えかねたのか、宮沢りえ似の和服姿の女性の写真を公開。彼女が「家人」であるとし、身長170cm、料理上手、学歴最高だと挑発気味に説明した。これが「自慢だ!」と再び炎上し、結局削除。小池氏は翌日、若者の肌感覚が分かっていなかったと反省の弁を述べた。

 小池氏は、自炊をすることは節約に繋がると考えていたのだろうが、298円の弁当を食べるような日常を送っている人にとって「椀1杯何百円」は決して慎ましい金銭感覚ではない。それを見せつけられ、お前らは工夫が足りないと言われれば腹は立つだろう。

 こうした世代間金銭感覚闘争の元祖といえば、2014年の「1万円ステーキ爺さん(83)」がいる。本当の爺さんなのかはよく分からないがテレビ番組を見た感想として「驚いた!1万円のステーキをご馳走になるより、現金三千円を貰いたい若者が多い事実」とツイッターに書き、「食に興味が無い?不幸だろ!」と続けたのだ。

 ここから「1食に使う1万円よりも数日の食事代としての3000円が大事」といった意見が寄せられるほか、「お前なんかとは食いたくない」という見当違いの批判も殺到した。爺さんが爺さん同士で「鱧の椀なんて安く作れるよな」「1万円のビフテキ、最高だよな」と言う分には良いのだが、若者にとっては高齢者の金銭感覚は非常識で腹立たしいもの。

 ネットで多種多様な人が交流することにより化学反応が起きる、なんて嘘である。私は時々「肩が当たってカッとなって会社員を殴って逮捕」のような事件の実名報道があると、その人物のフェイスブックを見に行く。仲間と一緒の写真も多数出てくるが、「あぁ……、この手の人ね」で妙に納得するし、自分はここには3分といられない、と思う。

「この考え許せない!」とキレるのではなく「考え方が違うのね」で放置せねばネット炎上が終わることはない。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など

※週刊ポスト2017年9月1日号

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