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タカタ・東芝問題に思う ~ カントリーリスクと社長の使命

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会社が傾いたり潰れるのは経営者が無能だからである

 6月26日、欠陥エアバッグ問題で経営が悪化していたタカタが、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。米国子会社も同日、日本の民事再生法に当たる米連邦破産法第11条の適用を申請した。自動車メーカーが肩代わりしていたリコール費用を加えると、負債総額は1兆円を超え、製造業では戦後最大の倒産になると報道されている。

 このタカタの欠陥エアバッグ問題と東芝の不適切会計問題が、最近の企業不祥事の双璧だろう。この2社以外でも、企業の不祥事が続発している。ここ1~2年で大きな話題になった事件だけ見ても、東洋ゴム工業の免振データ改ざん、旭化成建材・三井不動産のマンション杭打ち不正、東亜建設工業の地盤改良データ改ざん、三菱自動車工業・スズキの燃費不正など枚挙にいとまがないほどである。

 こうした不祥事において、最も大切なことは、不祥事を起こしたことに対する対応及び事後処理である。補償や弁済はもちろん、再発防止のための有効な対策を迅速に取りまとめる必要がある。社内的な行動だけでなく、社会的話題になった以上、外部から見ても適切と思われる補償や対策が採られているかなど社会的な見地も必要になる。

 事後処理がうまくいけば、不祥事で地に落ちた企業イメージを一気に回復することも可能だが、そうしたケースは少ない。不祥事を起こす企業は、不祥事を起こしやすい構造的問題を内包していることが多く、三菱自動車工業のように不祥事が繰り返されることになる。

タカタの欠陥エアバッグ問題では2008年11月、本田技研工業(ホンダ)が米国で初のリコールを行い、2009年5月には米国で初めての死亡事故が発生したにもかかわらず、認識が甘かった。このため、対応が鈍く、後手に回り、適切な対応策も採れなかった。不祥事に対し、迅速・適切な対策を打てないと、最悪の場合、タカタのように倒産することになる。

 なぜ、タカタは欠陥エアバッグ問題に対する認識が甘かったのか。なぜ、対応策が後手に回ったのか。幾つもの問題点があるだろうが、結局、一点に尽きるだろう。それは、社長である。日本マクドナルドの創業者として著名な藤田田(ふじた でん)氏は「給料を払いすぎて潰れた会社はない。会社が潰れるのは経営者が無能だからだ」と断言している。

東芝経営陣の事後処理の迷走に加えて、「不適切会計」と報道するメディアの姿勢も問題

 2015年4月に不適切会計が発覚した東芝の不適切会計問題も、見るに堪えない迷走を見せている。東芝の社長・会長を歴任し、経団連会長も務めた土光敏夫氏も、草葉の陰で泣いているだろう。東芝経営陣の事後処理の迷走に加えて、東芝の不適切会計問題に対して「不適切会計」と表現するメディアの対応も生ぬるかった。オブラートに包んだような、奥歯にものが挟まったようなメディアの「不適切な報道」に多くの視聴者が不自然さを感じたのではないだろうか。メディアにとって、東芝は巨額の広告費を出してくれる大スポンサーであるから、なかなか批判し難いのだろう。

 そうしたところに6月19日、日本経済新聞に「東芝の決算巡る迷走は見るに堪えない」との社説が掲載された。この記事で注目されるのは、「不適切会計」との言葉が一切見当たらないことだ。不適切会計ではなく、本当は粉飾決算なので、新聞記者の良心として「不適切会計」という言葉を使わなかったのではないかと推察している。なお、この東芝の不適切会計問題に対し、「なぜ、粉飾決算と呼ばないのか」と糾弾したのは、筆者が知る限り、世界的な経営コンサルタントである大前研一氏だけである。

 「不適切会計」という言葉を用いるため、東芝に対する批判や追及が緩くなるのである。大前研一氏の著書のタイトルにあるように、『ニュースで学べない日本経済』(2016年4月刊)では困るのである。リチャード・コシミズ、ベンジャミン・フルフォード両氏の共著『日本も世界もマスコミはウソが9割』(2016年5月刊)では本当に困るのである。

 東芝の不適切会計問題で、前記の日本経済新聞の社説は、「東証は大企業の不祥事に対して厳しさを欠くと見る市場関係者が増えているようだ。問われているのは1企業の決算ではなく、日本の株式市場の公正さだ」と結語している。私は、それだけでなく、「不適切会計」と報道するメディアの姿勢も問われていると思う。さらに言えば、経団連会長を出した名門企業、日米の原子力事業を担う国策会社とも言える東芝を巡り、政官財・メディアの一蓮托生の体質も問われていると思う。

カントリーリスクは最大のコスト、倒産リスクがあることを認識すべきである

 タカタ、東芝に共通する問題として幾つか挙げられるが、特筆されるのはカントリーリスクである。タカタは米国で2008年に欠陥エアバッグ問題が表面化した。東芝も、米国の原子力会社ウエスチングハウス(WH)を2006年に英国核燃料会社から買収したことが、不適切会計問題の大きな原因となっている。

 日本企業の外国進出に際しての失敗例は、過去、何度も繰り返されている。平成バブル時も1989年9月と10月、ソニーの米コロンビア・ピクチャーズの買収、三菱地所の米ロックフェラーセンタービルの買収が大きな話題になったが、結局、両社とも数千億円をドブに捨てることになった。

2000年代に入ってから大きな話題になったのは、NTTドコモの海外投資戦略である。2001年に米国の携帯電話会社AT&Tワイヤレスに1兆2000億円を投資するなど、オランダやイギリスで海外展開を進めたが、いずれも失敗した。2005年にはすべて撤退し、損失額は1兆5000億円に上った。

 海外投資や買収の失敗で済んでいる場合なら、まだましだが、倒産してしまったら終わりである。企業の安全(存続)は、繁栄よりもはるかに重要であることを認識すべきである。思うに、第2次大戦敗戦後の日本ならびに日本人は、国家の安全を他国任せにしてきたせいか、国(企業)の安全は国(企業)の繁栄よりもはるかに重要であることを忘れてきた、あるいは疎かにしてきたのではないか。このことがカントリーリスクの軽視につながっていると思う。

 繁栄を追求するのは大いに結構だが、企業の存立基盤が根底から揺らぐようでは元も子もないのである。外国に進出するに当たり、カントリーリスクは最も真剣に検討すべき最重要の課題・コストであろう。最大のコストになりかねないどころか、倒産リスクもあることを肝に銘じるべきだろう。

 格好の教訓がある。17~18世紀の重商主義世界の中で、軍事大国イギリスと平和な経済大国オランダは3次にわたる戦争を行ったが、戦争の直接の引き金になったのは、貿易からオランダを排除すべくイギリスが制定した航海条例である。『国富論』を書き自由貿易論を唱えるアダム・スミスでさえ、「貿易に対する国家の制限は経済に有害だが、それが国家の安全保障に関する場合は例外である」と述べている。重商主義のさ中ですら、国の繁栄よりも国の安全が第一だったのである。企業においても同様と言えよう。

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