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大前氏「新しい政治ブームは選挙1回で終了」と小池氏に苦言

【豊洲移転問題が今後のネガティブ要素になるか 時事通信フォト】

 安倍政権に対する不信感は「都民ファーストブーム」を呼び込み、都民ならずとも「これで何かが変わるかもしれない」と期待を寄せている。小池百合子東京都知事を都知事選で応援した若狭勝衆議院議員は、政治団体「日本ファーストの会」を立ち上げ、国政選挙をにらむ。そして、小池氏は同会に関係する政治塾で講師を務めるなど、活発な動きに打って出ている。だが、大前研一氏は「このブームはあっという間に去るだろう」と分析する。

 * * *
 小池知事は国政への意欲が見える。実際、都議選後に小池知事の側近として知られる若狭勝代議士は、都民ファーストの会の国政進出に関し「年内には少なくとも何らかの動きがあるのではないのか」「国政新党が作られていくというのは自然な流れだ」などと発言していた。

 だが、都知事になって1年しか経っていないのに、もう国政進出を狙っているとすれば、小池氏は東京のことを本当に真面目に考えているのか? 彼女にとって都知事は腰かけにすぎないのではないか? 私は甚だ疑問を感じざるを得ない。

 実は、現在の東京は20~30年前に比べると、大きな問題は少なくなっている。たとえば、都心部の交通渋滞は大きく改善し、世界の大都市の中ではトップクラスと言っても過言ではない。あるいは、多摩地域の1985年当時の下水道普及率は6割ほどだったが、今はほぼ100%に達している。待機児童問題などは自治体が本気で注力すれば、すぐにも解決可能であり、致命的な問題ではない。

 したがって、これから小池知事は「まだ起きていない問題」を解決しなければならない。最も重要なのはいずれ来る直下型地震への対策をはじめとする防災対策だ。

 都の液状化予測図によると、足立区、葛飾区、江戸川区などの荒川流域の低地や大田区の多摩川流域の低地で液状化の可能性が高いとされている。それを防ぐためには、やはりブロック単位でPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ=公民連携)によって外部経済を取り込みながら街を造り直していくしかない。

 また、下町で消防車が入れないような地区をどのように安全な街に変えていくべきか、やはりビジョンとエコノミクスが必要になる。

 さらには“東京のシンボル”を造ることも重要だと思う。世界の大都市には、必ずシンボルがある。パリの凱旋門、エッフェル塔、ベルサイユ宮殿、ロンドンのビッグベン、タワーブリッジ、バッキンガム宮殿、ニューヨークの自由の女神やエンパイアステートビル、シドニーのオペラハウスやダーリンハーバーなどである。

 ところが東京には、それらに匹敵するシンボルがない。東京スカイツリーは、どこの国にあってもおかしくないので、シンボルにはなり得ない。現に、いま外国人に最も知られている東京の名所は、浅草の雷門である。

 小池知事は築地市場跡地を東京オリンピック・パラリンピック後に「食のテーマパーク」として再開発する方針を示しているが、築地市場跡地活用法をそれだけで考えているなら、思いつきの“瞬間芸”であり、「ビジョン」とは言えない。

 私は、築地市場跡地に勝どき、晴海を合わせた東京都が保有している都心最後のフロンティアを三位一体で再開発し、世界中からヒト、企業、モノ、カネ、情報が集まる職住接近の24時間タウンをPPPの手法で建設すべきだと、20年近く前から提案している(『感動経営学』小学館)。東京都は開発必要条件だけを規定し、開発者を世界中から募集するのだ。このプランを小池知事が実行すれば、世界中の人々が注目する東京の新たなシンボルが誕生し、彼女の功績として歴史に残るはずだ。

 また、国政に目を転じると、もはや安倍政権は「もり(森友学園)」と「かけ(加計学園)」の忖度問題や相次ぐ閣僚の失言、安倍チルドレン2回生の不祥事によって“詰んでいる”と思う。報道各社の世論調査では支持率が「危険水域」とされる30%を割り込んでいたので、ここから先は安倍首相が弁明すればするほど国民は不信感を募らせ、いっそう窮地に追い込まれて自滅していくのではないか。

 それだけに、機を見るに敏な小池知事が次の総選挙で国政に打って出る可能性は高いだろう。その場合、かなりの票を集めることができるかもしれない。だが、仮に小池新党ブームが起きたとしても、やはり1回きりだと思う。

 この「新しい政治ブームは選挙1回で終わる」という現象は、細川護煕氏の日本新党の時も、民主党が大勝して政権交代を果たした時も、橋下徹氏の大阪維新の会の時も同じだった。

 そろそろ国民はブームに左右されることなく、一人ひとりの政治家の資質と能力、そして何よりも政策を吟味して投票するようにならねばならない。そうでないと、日本はいつまでたっても4年ごとにジグザグを繰り返して衰退していく“政治三流国”のままだろう。

※SAPIO2017年9月号

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