記事

苦しくてもやめない 月給5万の野球選手

1/2

(野球選手 宮寺 匡広)

プロ野球選手になれる人はほんの一握り。多くの人は野球をやめて就職する。だが諦めきれずに野球にしがみついて生きている人もいる。苦しいとわかっていても、なぜ野球をやめられないのか。現在、アメリカの独立リーグでプレーする現役選手・宮寺匡広さんによる特別寄稿をお届けする。

アメリカ国内には、メジャーリーグ傘下に属さず、独立経営で運営されているプロ野球独立リーグが複数存在している。そのひとつ、パシフィック・アソシエーションリーグのソノマ・ストンパーズに、私は選手として所属している。昨シーズンの途中から入団し、今年が2年目。ポジションは主にショートを任されている。


アメリカでプレーする筆者(撮影:J.W.Toy)

アメリカ独立リーグ初の日本人監督・三好貴士の下、昨年はリーグ優勝を果たした。チームに所属しているのは、アメリカ人23人、キューバ人1人、日本人3人。マイナーリーグで活躍していた選手も多く、投手陣の奮闘と機動力を生かした攻撃で今年も首位を走っている。

メジャーリーグやNPBという華やかな大舞台に立てるのは、ほんの一握りの野球選手だけだ。多くは幼少時から始まる競争の過程で、プロへの道を断念する。だが、何度ふるい落とされても、あきらめず野球にしがみつく者もいる。かくいう私も、そのひとりだ。

■セブンイレブンを退職しての挑戦

海外に目を向けるようになったのは、野茂英雄氏の活躍や、マーク・マグワイアとサミー・ソーサの熾烈なホームラン争いなど、テレビから伝わるアメリカ野球の影響が大きかった。いつかは、自分もアメリカで……。そんな思いを子供の頃から、抱き続けてきた。

学生時代は、甲子園で2度の優勝経験がある日本大学第三高等学校(日大三高)、大学野球屈指の人気を誇る東京六大学リーグの慶應義塾大学で、野球部に所属していた。だが、日大三高での公式戦出場機会はなく、一般受験で入学した慶應義塾大学でも、神宮球場での出場機会は幾度かあったものの、代走や代打と目立った活躍はできなかった。

それでもアメリカで野球をやりたいと思い、行きついたのが、独立リーグだった。大学野球引退後、入団テストを受けるため、アメリカ各地を回る。結局どこにも受からず、一度は、セブン―イレブン・ジャパンに就職した。だが、27歳で現役復帰を決意し、退職。サラリーマン時代に貯めた資金を元手に、入団テストに参加した際にできたツテをたどって、2013年、ペコスリーグのラスベガス・トレインロバーズに練習生として所属することができた。

アメリカで1990年代中頃から急速に増え始めた独立リーグは、現在8リーグ存在する。メジャーリーグやマイナー組織を自由契約になった選手や、高校・大学を卒業後、メジャー組織と契約を結べなかった選手で主に構成されている。

競技レベルは、そのリーグの人気や経営基盤に比例する。経営が不安定で、発足から数年で消滅するリーグも多い。スポンサー集めや集客などがうまくいくと、リーグとしての興行が成り立ち、設備投資にも力を入れることができる。選手の給与水準も高くなり、より良い選手を獲得しやすい。独立リーグの中には、観客動員数でメジャーリーグにひけをとらない、セントポール・セインツ(アメリカン・アソシエーションリーグ)のような人気球団も存在する。

独立リーグ最高峰と呼ばれるアトランティック・リーグは、元メジャーリーガーも在籍していた。マイナーリーグはメジャーリーグを頂点に上から3A、2A、1A、ルーキーリーグと、競技レベルに応じてランク分けされているが、アトランティック・リーグは3Aと同等と言われている。かつては、元千葉ロッテの渡辺俊介や元阪神の坪井智哉が在籍していたこともある。また、2Aレベルといわれるアメリカン・アソシエーションリーグでは、かつてオリックスに所属していたアレッサンドロ・マエストリや、阪神・千葉ロッテで活躍したクレイグ・ブラゼルもプレーしていた。

NPBの一歩手前、もしくは匹敵するレベルを持つ独立リーグも少なくなく、メジャーのスカウトたちも、そうしたリーグの球場に頻繁に足を運ぶ。

■1台のベッドを2人で使う過酷な遠征

13年に私が所属していたペコスリーグは、アリゾナ州、ニューメキシコ州など、アメリカ南西部を中心に行われているリーグだ。独立リーグは全米を移動するほどの資金はないため、地域ごとに展開されている。ペコスリーグは最も薄給のリーグで、月給200~400ドル(当時のレートで、2万3000~5万円ほど)。2カ月半で70試合をこなす過密スケジュールで、遠征になると小さなバンで10時間移動の後、着いた先ですぐ試合、ということもある。経費削減のため、遠征先のホテルでは2人部屋を4人で使い、ベッドは2人で1台という過酷さだ。若い選手が多く、荒削りなプレーが目立つのがこのリーグの特徴でもある。

15年に所属したカナディアン・アメリカンリーグ(通称キャナムリーグ)は、アメリカとカナダに3球団ずつあり、それぞれ1試合あたりの観客動員数は数千人規模で、競技レベルもアメリカン・アソシエーションリーグと肩を並べる。最低月給は800ドル(8万8000円)で、元メジャーリーガーのような実力者の中には、5000ドル以上もらっている選手もいるという。


所属チームでの1枚(撮影:J.W.Toy)

現在私が所属するソノマ・ストンパーズでは、1週間に6試合をこなし、3カ月で78試合が組まれている。ソノマが属するパシフィック・アソシエーションリーグは、カリフォルニア州北部で行われ、競技レベルや給与面でいうとだいたい中堅のリーグだ。観客は多い時には1000人以上入るが、平均的には200~300人といったところ。選手の住居は、球団が用意してくれた地元のホストファミリーにお世話になる。平均給与がだいたい月700~800ドル。食事は毎試合後に球団から用意してもらえるので、特に贅沢をしなければ問題なく生活できる。試合が始まるのは、毎日夕方18時からがほとんど。選手たちは試合前練習やグラウンド整備などのため、5~6時間前には球場に来て準備を始める。気軽にどこか出かける時間や余裕もなく、シーズン中は野球漬けの日々を送っている。

あわせて読みたい

「キャリア」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    ミヤネ屋インチキ医療特集に称賛

    中村ゆきつぐ

  2. 2

    定年後は蕎麦打ち職人になるな

    内藤忍

  3. 3

    海老蔵と麻耶 歌舞伎界の非常識

    NEWSポストセブン

  4. 4

    今度こそ北朝鮮の崩壊は秒読みか

    自由人

  5. 5

    豊田議員あと一歩で逃げ切り逃す

    文化通信特報版

  6. 6

    金正恩氏が米国への本音を吐露か

    高英起

  7. 7

    「部落差別を語るな」は間違い

    SYNODOS

  8. 8

    安倍首相の目的は権力の延命だけ

    小林よしのり

  9. 9

    共産の要求激化で選挙協力崩壊か

    猪野 亨

  10. 10

    安室引退「体力の限界」が要因か

    渡邉裕二

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。