記事

中国マーケティングの常識、“KOL”の絶大な影響力 - 山口亮子

 KOLという言葉をご存じだろうか。“Key Opinion Leader”の略で、中国のSNS上で影響力の高いアカウントのことを指す。いわゆるインフルエンサーで、人気のあるKOLを商品のプロモーションにうまく利用すれば、大きな利益を上げることができる。中国でKOLはマーケティング上欠かせない存在となっており、中国のECサイトで商品を売りたい日本企業などの間では、KOLを使ったプロモーションが常識になっている。

巨大な影響力でプロモーションの花形に

 KOLは芸能界のスターから庶民出身の人気者まで幅広く、数百万のフォロワーを擁する。多い場合は数千万人のフォロワーがいたりする彼らが商品を宣伝すれば、絶大な影響力を発揮する。そういうわけで、ヨーロッパの一流ブランドから中国市場に参入したい日本企業に至るまで、KOLを使ったプロモーションに積極的に取り組んでいる。KOLが旧来の広告のあり方を変える台風の目になっているのだ。

 KOLの活躍する分野は、最新のファッション、ライフスタイル、旅行などさまざまだ。フォロワーとの結びつきが強固で、KOLと価値観を共有していると考えるフォロワーは発信された情報を真剣に読み込む。そのため、フォロワーの興味関心に沿った商品のプロモーションが、絶大な威力を発揮しうるのだ。

 KOLは特定の人物の場合もあるが、頻繁に更新されるものは、グループで職業的に行っているものも多い。タオバオといったECサイト上に自らがセレクトした商品を売るショップを設けるKOLもいる。彼らがかかわる市場規模は、拡大の一途にある。

 フィナンシャルタイムズの中国語版は7月10日、「中国の『網紅(インターネット上のインフルエンサー)』のマーケティング力――中国ではファン経済の膨張により、“KOL”を巡り形成されたマーケティングの生態系が急成長している」という記事を掲載した。記事中で、その市場規模について「第一財経商業数拠中心(CBNData)は2016年のKOL産業の生産額は580億元(約9500億円)に達し、2015年の映画の興行収入を超えたと見積もった。Consultancy Analysisは来年の収入規模が1000億元(約1兆6千億円)に達すると予測している」と紹介している。

 その影響力の拡大ぶりを示すニュースに、モデル出身のKOLが6000万ドルを売り上げたというものがある。服飾に関する情報プラットフォームの世界服装靴帽網は7月20日、「中国の網紅が服飾品の売上額が6000万ドル(約66億円)を超え、服飾業界の注目の的に」という記事を掲載した。

スターの収入超えも

 この売り上げをたたき出したのは、ウェイボーで529万のフォロワーを擁する女性、张大奕だ。「ウェイボーに529万のフォロワーを擁する张大奕にとって、商品の販売はすでに最大の収入源になっている。服飾品の売上額に限ってすでに6000万ドルを超えた」その2015年の収入は4600万ドル(約51億円)で、中国の美人女優の代表格、范冰冰(ファン・ビンビン)の収入の2倍にもなるという。

 記事では1988年生まれの彼女のモデルとしての活動を振り返った後、こう続ける。

 「张大奕の最も知られる肩書きはモデルではなく、最も稼ぐタオバオの店主の方だ。8年間モデルをした後、2014年に自分のタオバオのショップ『吾欢喜的衣橱』を創立した。わずか1年の間に4600万ドルの収入を実現しただけでなく、タオバオの『双11(11月11日の独身者の日)』のセールで売上額が億(元)の大台に乗った最初のショップにもなった。彼女のつくった業績の神話は、今に至るまで誰も超えてはいない」

 彼女はKOLマーケットの爆発的な成長ぶりを象徴する存在だ。ほかにも有名ブランドの広告塔になったり、投資を受けたりするKOLは多い。世の中から注目を浴び、なおかつ収入も得られるKOLは、若者のあこがれの存在にもなっている。

 環球網は7月26日、「網紅こそ活路?天猫国際副社長が『代購は今、KOLに転換しつつある』と発言」と伝えた。代購はかつて横行した海外ブランドの入手法で、職業的に海外でブランド品を買い付け、中国国内に持ち帰り、転売することを指した。政府の規制強化や海外商品を扱うECサイトの発達で、海外商品の購入に占める割合は下がっている。

 これに関して、アリババグループの天猫国際の副社長が記者に対してこう発言したという。

 「代購は今、KOL達人の方向に転換している。彼らは自分のファンを蓄積しており、海外のブランドよりも中国消費者の好みを理解している。代購は現場で生放送する方式で、コンテンツ・プロバイダーとなり、あるいはセールスマンのようになることができる。我々は越境購入の優れた達人と代購者が直接大ブランドを助け、商品を広めることを進めている。ブランドが商品を売り、彼らはセールスマンとなり、手数料徴収モデルでの決算はしない」

 代購者は、利ザヤで儲ける誰でもできた職業から、よりプロモーションにたけ、実力のある存在に転換するよう迫られているとの指摘だ。

費用対効果に注意必要

 「今は多くの会社がプロモーション時に、100%とは言わずとも、90%はKOLの投入を手掛けることになる」

 こう指摘するのは、中国のプロダクト・マネジャーのためのポータルサイト「人人都是産品経理」の6月12日の「どのようにウェイボー、WeChatのKOLを投入し、最大の効果を上げるのか?」という投稿だ。

 「多くの場合、仲介会社を探してインターネット上のKOLを投入することはお金の浪費に等しい」と手厳しい。その理由をこう続ける。

 「一つには、仲介業者の質の差が大きく、市場の研究を欠き、質を考えずに思いつくままにパッケージ化し、投入する。二つには、お金を稼ぐためなら大量の公式アカウントをコピーして市場をかく乱することもいとわない。三つには、任務のために大量の水軍(会社に雇われてインターネット上のいくつものアカウントを使って都合の良い発信をする人)を雇い、データをつくりあげ、勢いがあるかのように偽装する。もし会社のマーケティング部門にKOLを適切に投入する見識があれば、大量の予算を省くことができる」

 実際、日本から仲介業者を通してKOLマーケティングを依頼したと思しい例で、費用対効果を考えているのだろうかと首をかしげてしまうものもある。中国ビジネスのバズワード、KOL。賢く使えば効果を上げるが、漫然と使うだけではただの金食い虫になると肝に銘じておくべきだろう。

あわせて読みたい

「中国経済」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    中国が密かに米朝開戦の準備か

    一般社団法人日本戦略研究フォーラム

  2. 2

    イチロー限界 指導者になるべき

    幻冬舎plus

  3. 3

    松居一代に引っかかったマスコミ

    大西宏

  4. 4

    退位までに韓国訪問を願う両陛下

    NEWSポストセブン

  5. 5

    アラフォーは一生貧困?NHKに反響

    キャリコネニュース

  6. 6

    希望に支持が集まらないのは当然

    早川忠孝

  7. 7

    体外受精はセックスに当たるのか

    井戸まさえ

  8. 8

    社員寮で暮らす敏腕シャープ社長

    文春オンライン

  9. 9

    堀江氏を牢獄に送った国家の裁量

    NEWSポストセブン

  10. 10

    田原氏 米国批判なき日本は問題

    田原総一朗

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。