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北朝鮮のミサイルを撃墜せよ


2017年7月30日に、飛行実験THAAD(FET)-01の間、アラスカ州コディアックのPacific Spaceport Complex Alaskaから発射されたTHAADミサイル。飛行中の中距離弾道ミサイル(MRBM)ターゲットを迎撃。
提供:US Ministry of Defense, Missile Defense Agency HP


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

【まとめ】
・米保守系有力誌、北朝鮮実験ミサイルの迎撃を提案。
・第1段階はイージス艦のSM-3、第2段階は韓国配備のTHAADで迎撃するというもの。
・米側が迎撃は防衛手段だと事前に北朝鮮に通告すれば、北朝鮮による大規模報復のリスクは減ると分析。

アメリカのトランプ政権の内外ではいま北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルの脅威に備える動きが急迫しているが、その具体策として北朝鮮が次回に発射する実験ミサイルを飛行中に撃墜すべきだという新提案が明らかにされた。

トランプ政権にも近い保守系の有力雑誌が専門家の意見に基づき、8月9日付の社説で主張した。ワシントンではこの提案は北朝鮮への直接の軍事攻撃にはならない抑制された軍事オプションとして注視されている。

保守系の政治雑誌「ウィークリー・スタンダード : The Weekly Standard最新号は「北朝鮮の次回の実験ミサイルを撃墜せよ」と題する社説を掲載した。同誌は共和党政権の副大統領首席補佐官などを務めた保守派の学者で論客のウィリアム・クリストル氏が主宰する週刊雑誌で、保守派の間での影響力が強い。

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写真1:ウィリアム・クリストル氏(William Kristol)
Photo by Gage Skidmore

クリストル氏自身がなお事実上の主筆を勤めており、その社説も同氏の思考を反映している。同氏はトランプ政権に対しては留保をも表明するが、その影響力は大きいとされる。

同社説はまず北朝鮮がアメリカの歴代政権の多様な阻止の試みにもかかわらず、これまで核兵器の爆発実験を5回、弾道ミサイルの発射実験は2017年に入ってからでも合計14発という頻繁なペースで実行してきたことを指摘し、いまの段階ではアメリカとして戦争の危険をまったくともなわない対応手段はもうなくなったと、述べていた。

同社説はさらに、アメリカはこのまま北朝鮮が米国本土の大都市に核弾頭ミサイルを撃ち込む能力を確保するのを座視することは絶対にできないと主張し、軍事的な阻止手段の必要性を強調して、「北朝鮮領土を攻撃することなく、戦争に直結することなく、なお北朝鮮政権と軍事的に対決する方法」として「米軍が北朝鮮の実験発射するミサイルを撃墜する」ことを提案した。

同社説はこの対抗方法の内容や意義について以下の趣旨を述べていた。

・米軍は北朝鮮が次回に打ち上げる実験用の弾道ミサイルをその飛行中に撃墜する。具体的にはまず日本海などに展開する米海軍のイージス艦搭載のSM-3迎撃ミサイルにより発射直後の上昇段階にあるミサイルを撃墜すること目指す。米軍はこの能力はまだ演習で実証していないが、成功の確率は高い。

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写真2:米海軍イージス艦USSフィッツジェラルドSM-3発射実験。(2012年10月25日)
出典)米海軍HP

・第二の迎撃方法として韓国に最近、配備された米軍のTHAAD(Terminal High Altitude Area Defense missileサード「高高度防衛ミサイル」)により北朝鮮の実験発射ミサイルを上空飛行中か、あるいは終末の落下段階で撃墜する。

THAADの実験使用はこの7月にも成功しており、通算15回中すべて迎撃に成功した。またTHAADはアラスカやハワイにも配備されている。

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写真3:韓国に搬入されたTHAAD発射装置(2017年3月5日)
Photo by MSgt Jeremy Larlee

JB170812komori04 写真4:グアムに配備されているTHAAD
出典)Stars and Stripes

・この迎撃方法は技術的に成功するという保証はなく、軍事的にも北朝鮮が戦争行為とみなして大規模攻撃で報復する可能性もある。だが米側は事前にこの迎撃が戦争行為ではなく、北朝鮮の領土を攻撃せず、あくまでも防衛的な手段だと通告すれば危険は減る。韓国や日本にも事前の了承を得る必要がある。

・一方、この迎撃が成功すれば北朝鮮側に与える軍事的、心理的な打撃は重大であり、金政権内部でも従来の核軍拡路線への反対が起きる公算も強い。アメリカは北朝鮮の核武装や長距離ミサイル開発を阻止するため30年近くも外交手段を講じてきたが、効果がなく、軍事手段に頼らざるを得なくなった。

同社説は以上のように述べて、この迎撃手段が米側からみても、また客観的にみても、決して北朝鮮に対する戦争行動でもなく、先制攻撃でもない、という点を強調していた。トランプ政権としても当然、考慮するオプションの範疇となるだろう。

(この記事には複数の写真が含まれています。全ての写真を見るには、http://japan-indepth.jp/?p=35473記事をお読みください)

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