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子どもへの暴力のその瞬間、あなたの筋肉はどう動いているのだろうか

■「瞬間の倫理破綻」

少し前に僕は当欄で、児童虐待の「発生」について、すべての価値判断より以前のいわば「哲学的」検知からタラタラと考察してみた(虐待「発生」の瞬間を語ることができるか)。

そこでも考えたように、「暴力」は意外とそれほど単純ではなく、それを施行する側、それを受ける側が同時にそれ(暴力)を呼び寄せている。

たたく側は(主としてオトコやオトナ)、最初からたたく気マンマンではない。互いの共通理解を得ようとし、対話を試みるのではあろうが、それはうまくいかず、どこかで一線を踏み越える。

その一線の踏み越えの瞬間に僕は興味がある。

理性では、あるいは学校教育では、あるいは世間的規範では、暴力は「悪い」ことだ。が、我々の社会では、その悪いことが行使される。

それはどうしてなのだろう。

前回、当欄では、その一線の踏み越えについて、暴力を振るう側だけではなく、たたかれるほう、暴力の被害者の側にもそれなりの理由があると書いてみた。

が、それは小さなことで、結局は暴力を行使する側の「瞬間の倫理破綻」のようなものが大きなポイントではある。

暴力は誰もが頭では悪いと思っていながら、それを行使する。時には人の命まで奪ってしまう。

■デリダの暴力

というのも僕は、ひきこもりや発達障害の父子関係と日常的につきあっていて、そうした生死の境目にそれら父子たちは接していると日々感じているからだ。

暴力は、暴力を日常的に行使するヤクザ社会のものだけではない。

暴力は、最も愛情関係が交差する「家庭」において、突発的に生じる事態でもある。ある意味、家族が一番「ヤバイ」。

それは、新聞の三面記事などを読んでいてもすぐにわかる。殺人事件は意外に身近な親族関係で起こることが多く、現在であれば地方都市での高齢ひきこもり状態などでよく見受けられるだろう。

暴力は倫理的には誰もが悪いと思っている。が、人は暴力を日常的にふるう。

その「一瞬」になにがあるのだろうか。

哲学者のデリダは「暴力と形而上学」などで、暴力の根源として「言語」をあげる。それは、言語が多様な現象のなかから「言葉」という機能を用いて「現象を一方的に意味づける」からだ。

そのまま放っておくとワイルドな現象そのものを、言語は思いっきりまとめる。

そのまとめ方は見方によっては強引であり、その強引さをデリダは根源的暴力と位置づける。

■「発火点」

放っておけばそれはよくわからない現象だが、言語はそれらを言葉としてまとめあげる。

その意味の収斂化をデリダは「暴力」と名付けている。

家族内における暴力の発火点もよく似ていて、親から一方的に意味づけられる「説教」は暴力なのかもしれない。

ここでいう暴力は根源的意味なので、我々が通常イメージする「力の行使」ではない。常識を常識として位置づける強引な「意味の暴力」とでもいっていい作用のことで、ひきこもり家庭のなかでは日常的に生じる現象だ。

その日常的ゆさぶりのなかで、どうすれば「暴力の発火点」が生じるのだろうか。

多くは下流世帯の中で、それでも「暴力は悪い」と認識する家庭内で、親は(あるいはオトナは)なぜ暴力を行使するのか。

そのとき、素朴なギモンが僕にはある。

子どもへの暴力のその瞬間、あなたの筋肉はどう動いているのだろうか。あなたの思考力はどうストップしているのだろうか。そこに「快感」はあるのか、そこに罪悪感はあるのか。つまりは、そこに「倫理感」はあるのか。

この根源的位置の感覚に僕は興味がある。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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