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大脱走しない"ミニオン"の巧みな印象操作

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編集者/ライター 稲田 豊史

3週連続第1位の快進撃を続けている『怪盗グルーのミニオン大脱走』。シリーズ4作目で過去最大のヒットになっていますが、なぜ人気が出たのでしょうか。ライターの稲田豊史さんは「ミニオン推しという配慮に満ちた『印象操作』が成功した」と分析します。みなさん「ミニオン」が主役だと勘違いしていませんか?

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(c)UNIVERSAL STUDIOS

『怪盗グルーのミニオン大脱走』
■製作国:アメリカ/配給:東宝東和/公開:2017年7月21日
■2017年8月5日~8月6日の観客動員数:第1位(興行通信社調べ)

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■USJにエリアも誕生した大人気キャラ

CGアニメ『怪盗グルーのミニオン大脱走』が3週連続第1位の快進撃を続けています。同作は2010年から始まった「怪盗グルー」シリーズの外伝を含む通算4作目で、過去3作の興行収入は、12億円→25億円→52.3億円と倍々ゲーム状態。今作も立ち上がりは上々で、前作を超える最終興収が見込まれています。

原作はなく、ディズニーやピクサーのようなブランド力もないスタジオの作品だった「怪盗グルー」シリーズが、なぜこれほど人気になったのでしょうか。その立役者と考えられるのが、シリーズを通じて登場する約2頭身の黄色いキャラクター「ミニオン」たちです。日本での「怪盗グルー」人気は、ほぼミニオンのキャラクター人気に支えられているといっても過言ではありません。

ミニオンたちは本シリーズの主役である怪盗グルーの手下であって、主役ではありません。そして、ひとりではなく大量にいます(「ミニオン」は種族名です)。

本作を1本も観たことがない方でも、ミニオンは見かけたことがあるでしょう。キャラクターグッズは山のように発売されていますし、さまざまな企業とタイアップして精力的に露出を増やしています。2017年4月からはユニバーサル・スタジオ・ジャパンにその名を冠したエリア「ミニオン・パーク」が登場しました。もちろん、大人気です。

■ハロウィンで大量発生「ミニオンパリピ」

筆者が日本でのミニオン人気をはっきりと確認したのは、2015年10月のハロウィンでした。渋谷や六本木などの繁華街で、ミニオンのコスプレ(黄色い服、デニムのオーバーオール、目を模したゴーグル)をした若者が大量出没していたのです。それ以前、少なくとも2013年のハロウィンでも、ミニオンのコスプレをしている人はいたようですが、2015年7月公開の3作目『ミニオンズ』の大ヒットを受けて激増した、という印象です。

都心にコスプレで繰り出すという日本独特のハロウィン習慣は、パーティーやイベントが大好きなパリピ(パーティーピープルの略)の大学生たちによって、2010年頃から徐々に広がりました。流行のアーリーアダプターであるパリピの功績により、ハロウィンの市場規模は2015年に1200億円を超え、バレンタインデー市場を上回る規模になったと報じられています。

イベントとしてのハロウィンが広く一般化して以降は、参加している若者の全員がパリピというわけではありませんが、パリピ的な属性を持ち合わせた、あるいはパリピに憧れを抱いている「アッパーな祭り好きの若者たち」がハロウィンコスプレで上機嫌になっているのは、間違いありません。その彼らがミニオンを好む傾向にあることと、興収が作を追うごとにうなぎのぼりになっていった事実は、深く関係しているはずです。

■パリピ的なマインドに満ちたミニオンたち


『怪盗グルーのミニオン大脱走』の宣伝ポスター

ミニオンたちは実にパリピ的なマインドに満ちた存在です。基本的にポジティブでアッパー。良い意味で能天気。すぐ歌い、すぐ騒ぐ。バカだけど裏表がなく、憎めない。ロジックは苦手(ほとんど言葉がしゃべれない)ですが感情は豊かで、喜怒哀楽を全身で表現する。直感で行動し、あまり悩まない。何より、見た目や挙動が多幸感に満ち満ちています。ハロウィンとの親和性が高いのもうなずけます。

そもそも、「怪盗グルー」シリーズに通底する雰囲気こそが、時代が求める空気なのかもしれません。一言でいうなら「パーティー感」。スクリーンで、大量のミニオンたちが飛んだり跳ねたり踊ったりバカをやっている。「楽しそう! あの空間に参加したい!」それが若者たちを劇場に向かわせます。

「ファミリー向けのCGアニメ」は他にもたくさんありますが、「子どもたち+付き添いの大人」だけで集客が止まってしまうのか、そこに10~20代の若者が加わるかで、命運が分かれます。「怪盗グルー」シリーズは若者の支持をとりつけ、見事に後者となりました。その鍵となったのが、ミニオンというわけです。

『怪盗グルーのミニオン大脱走』の日本での宣伝展開も、当初から完全にミニオン推しでした。予告編やプロモーション映像ではミニオンたちの楽しげなミュージカルシーンが大々的に取り上げられ、囚人服を着たミニオンが尻を出している姿も印象的です。しかもタイトルには「大脱走」とありますから、ミニオンたちが集団で脱獄するアドベンチャーに違いない! と期待は高まります。

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