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公共の場での授乳論争は、異性問題を超えた議論に - 宮下洋一 (ジャーナリスト)

 公共の場で授乳をする女性が、年々、スペインで増加し、それを認めるかどうかで賛否両論が巻き起こっている。赤ん坊の空腹を好きな時に好きな場所で満たすことが常識か、それとも、男性を気遣う配慮が必要か─。

 同国では、賛成派の集会が増え、公共プールでも授乳を認める動きが出てきた。他国に目を向けると、オーストラリアでは女性議員が議場で授乳し、脚光を浴びる一方、フランスでは、街頭警察が授乳中の女性を追放する問題などが頻発している。

 昨年4月、イギリスの地下鉄内では、女性が授乳しているところを、隣席の男性が「居心地が良くない。隣でやってくれ」と口論している映像が動画サイトで流れ、世界で波紋を呼んだ。

 しかしこれは、イギリスで放送されているドッキリ番組『トロールステーション』が意図的に演じた動画で、ユーチューブの視聴回数は300万回を突破。公共の場での授乳が、再び世界で物議を醸すきっかけとなった。

 国連児童基金(ユニセフ)は、生後6カ月までは、母乳を与えることを推奨しており、毎年8月1日から1週間、「世界母乳育児週間」を実施。外出中の女性への授乳の権利も勧めている。

 スペイン・バルセロナ市のグランビア通りのベンチで、生後半年の娘に授乳をするアレクサンドラさん(35歳)は、周囲の目を気にせず、こう明言した。

 「この子の栄養のためなら、場所を問いません。とはいえ、両親の時代や、出産前の私にとってみれば、公の場での授乳なんて、とても考えられないことでした」

 同市のテラス喫茶では、ある女性(37歳)が8カ月の娘に授乳。夫のチャビさん(38歳)はこう述べる。

 「人間にとって自然なこと。妻が人前で授乳しても気になりません。ビーチで裸になることとは次元が違いますから」

 それを聞く年配のルイスさん(65歳)は、「昔は、猥褻(わいせつ)的な行為に映りました」と思い返す一方で、「時代が変わって人々の目も慣れ、今は良いことだと思います」と述べ、女性の権利を尊重した。

 スペイン小児科協会の「授乳委員会」は、公共の場における授乳について、以下の文書を公表している。

 〈我々の文化において、胸は性的意識を持たせる。しかし、子供に栄養を与える重要な器官であるため、公共授乳については猥褻や性的対象と見なされるべきではない〉

 前述の映像が話題になると、同様の行為を撮影した動画をネット上に投稿する女性たちが増加。それ自体、男性への挑発を前提とした「結論ありき」の行動に映らなくもない。

 生物学上、性的意識が異なる男女は、双方の意見に食い違いがある。公共の場の授乳は、それ以外にも、国の文化や価値観、年齢や社会的地位も絡んでいる。特定の男性や異文化への配慮も大切だが、最優先すべきことは、赤ん坊の栄養であることは間違いない。

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