記事

共和党で“影の次期大統領選”ペンス副大統領、野心を否定 - 佐々木伸(星槎大学客員教授)

 米有力紙ニューヨーク・タイムズは6日、共和党の有力者らが2020年の次期大統領選挙に向けて始動、ペンス副大統領も”影の選挙運動”を開始したと報道し、ワシントンに激震が走っている。歴史的な支持率の低さに喘ぐトランプ大統領の再出馬なし、を見込んだ動きだが、夏休み中の大統領にとっても衝撃的だ。

側近らが有力者に協力を要請

 同紙によると、共和党のサス上院議員(ネブラスカ州選出)やコットン上院議員(アーカンソー州選出)、そして昨年の大統領選に出馬したケーシック・オハイオ州知事ら有力者が、大統領選予備選挙が最初に実施される中西部のアイオワ州などを訪問するなど実質的な選挙運動を始めている。

 ペンス副大統領も政治資金団体「偉大なアメリカ委員会」を設置するなど精力的に資金集めや人脈づくりを進めており、まだトランプ政権発足半年にもかかわらず、大統領選挙を目指す「2期目の副大統領」のように、政治的な日程が詰まっていると伝えられている。

 しかも副大統領の新しい首席補佐官であるニック・エアーズ氏と側近であるマーティ・オブスト氏が有力献金者らとの6月の会合で、トランプ大統領が再選を目指さない場合、ペンス氏が大統領選に出馬する用意があることを仄めかし、協力を要請したという。

 注目されているのは、先月に首席補佐官に任命されたエアーズ氏の起用だ。同氏は連邦政府に勤務したことはないが、多くの選挙で関わってきたことで知られており、この異例の抜擢は次期大統領選挙に備えたものではないか、との憶測を呼んでいる。

 こうした動きが表面化しているのは「(共和党有力者らが)トランプ大統領に弱さを見ている」(マケイン上院議員)からに他ならない。最新の世論調査で、33%と歴史的な支持率の低さに喘いでいるのに加え、今後ロシアゲートの捜査が進めば、トランプ氏が再選出馬を取り止めるか、出馬断念に追い込まれるかもしれない、という思惑が背景にある。

 しかし、ペンス副大統領の動きが事実とすれば、トランプ氏の再選の可能性を否定した“裏切り”と受け止められるのは必定。このため、ペンス氏は報道の直後に声明を発表し、「全くの誤りで、政権を分断する試みだ」と真っ向から野心を否定。「どんなうそニュースが出ても、トランプ氏は再選される」とあくまでも大統領への忠誠を誓って見せた。

 これに対して、「うそニュース」呼ばわりされたニューヨーク・タイムズは「記事の正確性には自信を持っている」との声明を発表して反論。同紙によると、記事は共和党議員、献金者、党の戦略専門家ら75人以上に対するインタビューを基に執筆された、という。

 共和党とトランプ大統領の間にはすでにすきま風が吹き始めている。トランプ氏は目玉公約である医療保険制度改革(オバマケア)見直しなどが議会で成立しないことを党の責任と非難。議会が夏休みを取らないで審議を続けるよう要求したが、上院はこれを無視して4日から夏休みに入った。

 トランプ氏が“魔女狩り”と叫ぶロシアゲートの捜査でも、大統領によるモラー特別検察官の解任を阻止すべく、党の一部から法案が提出された。大統領が最近、渋々署名せざるを得なかったロシア制裁強化法案も、大統領の反対を押し切って議会が成立させたものだった。

 こうした大統領へ反旗を翻す動きはホワイトハウスが人事や政策決定などで大混乱に陥っていることが背景にあり、共和党の幹部の中からもトランプ氏に代わってペンス氏が次期大統領選に出馬した方がいい、という声も聞かれるようになった。

大統領補佐官の解任騒動

 当のトランプ氏は8月4日からニュージャージー州ヘッドミンスターの自分のゴルフ場の施設で17日間の夏休み中。6日には、自身のフェイスブックにこの半年間の業績を誇った「真実のニュース」という動画を掲載し、メディアと対抗する構えを誇示したが、ペンス副大統領らが影の選挙運動を行っているというニュースは同氏にとっても衝撃的だったと見られている。

 しかし、大統領の夏休み入りの中、ホワイトハウスの混乱と権力闘争が新たに表面化した。今回は国家安全保障担当のマクマスター補佐官とバノン首席戦略官との対立だ。マクマスター補佐官は8月2日、国家安全保障会議(NSC)のコーエンワトニク上級部長を解任したが、これにバノン氏ら保守派が反発。

 マクマスター補佐官はこの他にも、7月にバノン氏に近いNSCの幹部2人を解任しており、両者の確執が高まっていた。とりわけ最近では、アフガニスタンへの米軍の追加派兵を主張するマクマスター氏と反対するバノン氏の対立が激化していた。

 保守系のメディアやトランプ氏の支持母体である保守強硬派グループは「マクマスターを解任しろ」とする異例のキャンペーンを展開し、大きな騒動になった。このためトランプ大統領が4日、マクマスター補佐官を支持する声明を出して取りあえずその場は収まった。

 今回の事態収拾は、マクマスター補佐官の後ろ盾であるケリー新首席補佐官が大統領に取りなしを求めたためと見られているが、大統領は同補佐官のアフガン政策などに強い不満を抱き、アフガン駐留軍のニコルソン司令官の解任を主張しており、政権の安定は今後も望めそうにない。

あわせて読みたい

「アメリカ大統領選」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    叩かれたけど本当はスゴい4議員

    駒崎弘樹

  2. 2

    苦境に立つ元民進の大物議員たち

    BLOGOS編集部

  3. 3

    ハゲに不倫…お騒がせ議員当落は

    田野幸伸

  4. 4

    ウーマン村本がLGBT当事者と激論

    AbemaTIMES

  5. 5

    辻元清美氏に山本一郎氏から激励

    辻元清美

  6. 6

    橋下氏「前原代表批判は筋違い」

    PRESIDENT Online

  7. 7

    衆院選自民大勝で森友うやむやに

    阪口徳雄

  8. 8

    よしのり氏 希望の党は壊滅する

    小林よしのり

  9. 9

    スバルの強さは選択と集中がカギ

    片山 修

  10. 10

    「安倍ヤメロ」を煽る朝日新聞

    深沢明人

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。