記事

【読書感想】永遠のPL学園~六〇年目のゲームセット~

1/2
永遠のPL学園: 六〇年目のゲームセット

永遠のPL学園: 六〇年目のゲームセット


Kindle版もあります。

永遠のPL学園?六〇年目のゲームセット?

永遠のPL学園?六〇年目のゲームセット?

内容(「BOOK」データベースより)
桑田真澄、清原和博、立浪和義、宮本慎也、前田健太…など、プロ野球選手81人を生んだ、甲子園96勝、全国制覇7回の名門野球部の「謎の廃部」の真相に迫る。第23回小学館ノンフィクション大賞受賞作。

 今年の春の甲子園は、大阪桐蔭と履正社という大阪の高校どうしの決勝戦となりました。
 桑田・清原より少しだけ年下の僕にとっては、子どもの頃から、高校野球で大阪といえば、PL学園の存在感が図抜けていたのです。

(P以前には、浪商の牛島投手と「ドカベン」香川捕手のバッテリーも印象にのこっています)
 PLといえば、その強さとともに、校歌もインパクトがあったんですよね。
「ああ、PL PL 永遠(とわ)の学園 永遠の学園」
 どれだけ自分の学校を宣伝すれば気が済むんだ!「永遠の学園」は、さすがに言い過ぎなのでは、と思っていたのですが、PL教団という「宗教」が基盤にある学校だったからこそだったんですよね。

 その名門・PL学園の野球部は栄光とともに、さまざまなスキャンダルも起こしてきました。
 このノンフィクションのなかで、著者は、PLの伝統としての「暴力行為」についても書いています。
 当時の指導者たちが、それを「選手たちとの真剣勝負の結果として」恥じていなかったということと、そういう行為が行われているのはPLだけではなく、関係者もそれを知っていた、ということも。

 また、PL学園の厳しい先輩・後輩の上下関係は、卒業生のプロ野球選手がバラエティ番組などで話していることもあり、よく知られています。
 新入生は3年生の「付き人」として野球の練習の際だけではなく、ふだんの身の回りの世話もしていたのです。

 後輩は先輩に対し「はい」「もしくは「いいえ」でしか答えることが許されず、先輩の前で白い歯(笑顔)を見せることも御法度だ。こういう付き人制度がいつの時代にできあがったものなのかは、清水やプロ野球に進んだOBに訊いてもわからなかった。10期生の中村順司の学生時代はどうだったのだろうか。中村は自身の入学当時を、こう振り返った。

「同じです。私も『はい』と『いいえ』でしか答えることは許されなかった。先輩のユニフォームを洗濯するのも当たり前。食事の用意をし、先輩が食事している間は横に立っていなければならかった。ただ、1960年代の高校の寮生活というのは、どこの高校もそんな感じだったんじゃないかな。僕らの時代では当たり前のことでした。

 ということは早創期から既に、厳格な上下関係は存在したということだ。
 全国屈指の強豪へと成長していく過程において、いつしか野球部員の寮生活には次の不文律ができあがっていた。
「三年神様、二年平民、一年奴隷」

 そこまでして、PLで野球をやることにこだわらなくても……と思うのですが、その一方で、PL学園からプロ野球に行って活躍した選手が多いのも事実です。
 ヤクルトスワローズで2000本安打を達成した宮本慎也選手は、高校での三年間を振り返って、こんな話をしたそうです。

「今の時代には、ふさわしくない伝統だとは理解しています。しかし、PLの三年間……というより、一年生の一年間を乗り切れたからこそ、社会に出た時にどんな苦境にも耐えられる。いや、社会における理不尽なことなんて楽勝なんですよ(笑)。

毎日、三年生のお世話が終わり、ホッとすると、夜中なのに同級生と研志寮の屋上で隠れてお菓子を食べたりしていました。見つかったら大事だし、疲れ切っているんだから少しでも寝りゃあいいのに、それが幸せの時間でね。“今日も生きてた”って、今の時代にはふさわしくない上下関係ですが、だからといって僕らの時代まで否定してほしくない」

 「生存者バイアス」というか、「その地獄の通過儀礼を乗り越えて成功してきた人」だからこそ、なのかもしれないけれど、スポーツの世界で頂点を目指すというのは、いかに過酷なものなのか、ということを考えさせられます。

 PLの卒業生以外にも、活躍した野球選手はたくさんいる、たしかにその通りなんですけどね。
 PLだったからこそ開花した才能もあれば、PLに入ってしまったがために潰れてしまった選手もいたのだろうし。

 PL学園の野球部が実質的に終わりを迎えたのは、2016年7月15日、夏の大阪大会の初戦で、東大阪大柏原に敗れた瞬間でした。
 「あのPL学園が廃部になる」ということで、彼らの「最後の夏」は、メディアでもかなり大きく採りあげられていたのです。
 著者は、その「最後の夏」に向かっていった、満身創痍の12人の野球部員たちの姿を書き残しています。

あわせて読みたい

「高校野球」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    24時間TV直前にスタッフ飛び降り

    NEWSポストセブン

  2. 2

    詐欺で立件可能? ヒカルVALU騒動

    やまもといちろう

  3. 3

    村本のツイートは自衛官に失礼

    岡田真理

  4. 4

    前原氏が代表になれば民進終わる

    猪野 亨

  5. 5

    読売が突然 岸田氏の存在を強調

    NEWSポストセブン

  6. 6

    牛乳石鹸のCMに感じる15の違和感

    松井博

  7. 7

    「あくまで個人の感想」違法に?

    永江一石

  8. 8

    豊田議員秘書 国費から給与獲得?

    高橋亮平

  9. 9

    籠池氏の詐欺罪起訴は検察の汚点

    郷原信郎

  10. 10

    小池知事の経費400億円削減は嘘

    文春オンライン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDまたはYahoo!IDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。