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相次ぐ業務停止命令で揺れる(株)みんなのクレジット

 投資家から資金を集めて事業資金を貸し出すソーシャルレンディング事業で急成長した(株)みんなのクレジット(TSR企業コード:014882639、渋谷区、阿藤豊社長、以下みんクレ)が揺れている。

 今年3月に関東財務局から金融商品取引法に基づく1カ月間の業務停止命令と業務改善命令を受けた。だが、業務停止命令の期間終了後も、「内部管理態勢が整うまで」として新規ローンファンドの募集や新規投資の申込み等を自主的に休業している。ところが、8月2日に今度は東京都から貸金業法に基づく業務停止処分(1カ月)と業務改善命令を受けた。

 みんクレが集めた投資額は総額約34億円。相次ぐ不祥事で、数千人とみられる投資家は投資資金の償還の行方を固唾を飲んで見守っている。

 ソーシャルレンディングとはクラウドファンディングの一形態。ウェブサイト上で不特定多数の投資家に出資を募り、事業資金などに貸し出す融資仲介事業のことだ。欧米から広がり、最近は日本でも事業化に乗り出す企業が増えている。

 貸し手となる投資家はファンドに出資し、所定の利回り(配当)を得て、償還期日に投資資金を回収できる仕組みになっている。

 日本ではソーシャルレンディング事業は貸金業の登録が必要となる。不特定多数から資金を集め、融資や出資の仲介を行うため、第2種金融商品取引業の登録も必要だ。

 みんクレの設立は2015年5月。貸金業の登録が同年11月で、勧誘などの実質的な業務は2016年4月にスタートしたばかりの新興企業だ。

 同社の特徴は、高額利回りの投資商品に尽きる。「不動産ローンファンド」や「中小企業支援ローンファンド」等の商品名でファンドの出資者を勧誘していた。手掛けていたファンドの中には10%以上の高額利回りをうたい文句にした投資商品もあった。また、投資商品を申し込むと得られるキャッシュバックのキャンペーンなども多用。こうした営業施策で急激に顧客(投資家)を獲得していった。

金融検査で杜撰な運営が発覚

 ところが2017年3月、関東財務局が業務停止命令の行政処分を発表した。その検査結果で、同社の驚くべき運用実態が明らかになった。

 検査結果によると、ファンドを通じて得た資金の貸付先の大部分が、実際はみんクレの親会社A社(現在、資本関係は分離)とそのグループ企業に集中していたからだ。

 みんクレからA社への融資は、A社の不動産事業による収益から返済する旨をうたっていたが、実際は他の償還期限が到来していないファンドの資金を充当していた。さらに、融資額以上の価値のA社の所有する不動産を担保にすることで債権保全は問題ないとしていたが、実際に担保設定していたのは不動産ではなく、A社の未公開株式だった。

 このほか、キャッシュバックキャンペーンと称して顧客に還元していた現金は、実際はA社へ貸し付けた資金が還流されていた。

 また、創業者の白石伸生元代表がファンド出資金を自分の借入返済等に充てていたことも発覚した。A社グループの財務内容は短期借入金が流動資産を大きく上回り、「ファンドからA社グループへの貸付は返済が滞る可能性が高い」とされた。

 検査結果と行政処分を受け、みんクレは「早急な業務の改善を目指す」として業務停止命令の期間終了後も新規の投資勧誘等は自主的に休業。4月29日に白石代表が辞任し、阿藤豊氏が新たな社長に就任した。

創業者は元「企業再生請負人」

 みんクレの創業者である白石氏はかつて、企業再生の分野で名を馳せた。企業再生会社、(株)スピードパートナーズ(TSR企業コード:296737470、2014年5月に債権者申立により破産)を率いて破竹の勢いで倒産会社のスポンサーや不振企業の買収を手掛け、「企業再生請負人」として経済誌などにも度々登場していた。また、プロレス団体「全日本プロレス」の株を買い取り、オーナーに就任し全日プロの内紛騒動に発展したことでも知られる。

 2013年8月にスピードパートナーズは社名を(株)八丁堀投資へ変更し、白石氏も代表取締役を辞任している。八丁堀投資は最終的に多額の未払いを抱え、債権者の申し立てにより破産した。その後、白石氏が表舞台に姿を現すことは少なくなった。だが、わずか数年でソーシャルレンディング事業の経営者に転身して、再び脚光を浴びるようになった。

 白石氏はみんクレの代表取締役を辞任したが、みんクレの今後を大きく左右するA社の代表だ。一方、A社が100%保有していたみんクレ株式は今年5月、みんクレの新社長である阿藤豊氏と取締役1名にすべて譲渡している。阿藤新社長もかつて、八丁堀投資と同時に破産開始決定を受けた(株)八丁堀住宅(TSR企業コード:452067146、旧:(株)らいずほーむ)が破産した時の代表者だ。

保全率はわずか15%

 東京商工リサーチ(TSR)は、みんクレに数十万円を投資している投資家に話を聞くことができた。

 投資状況などが表示されるマイページの中で、購入した「不動産ローンファンド」の現在の保全率はわずか15%と表示されている。この投資家は「償還予定は4カ月後だが、この状況では全額償還は難しいだろう…」とあきらめ顔で語る。

 また、ネット上では、複数の投資家からみんクレの7月分の償還がストップしたとの声が駆け巡っている。みんクレはこれまで各月の償還日に所定の償還と配当が終了した旨をリリースしてきた。だが、7月分はまだリリースされていない。

 みんクレが7月28日から8月7日にかけ、投資家に送信した一通のメールを入手した。

 このメールには、「弊社融資先から『貴社の投資家による法的行動により不動産売買決済や融資が一時停止することになったため、弁済期日を7月28日とする貴社への借入金元本弁済を実施できなくなった』旨の連絡を受けた」とし、「融資先と交渉を進めている最中」と記載されている。

 肝心の投資家に対する償還の有無には触れていない。だが、配当や償還が終了したとのリリースもないまま、一連の先行きを示唆するものとして注目を集めている。

 その矢先の8月2日、東京都から貸金業法に基づく業務停止命令を受けた。事態は重大局面を迎えている。

 TSRはみんクレに対し、何度も現況や今後の事業展開について取材を申し入れている。だが、8月4日に「担当者不在のため、こちらから連絡する」と回答をもらって以来、取材に応じていない。

投資家の注目を集める「みんなのクレジット」(8月4日撮影)

投資家の注目を集める「みんなのクレジット」(8月4日撮影)

 投資の世界でよく話題となる「ポンジ・スキーム」という手口がある。かつてアメリカで暗躍した伝説的な詐欺師、チャールズ・ポンジの名前に由来する。集めた資金を運用しているように装い、実際は獲得した資金を配当や償還に回すだけ。金を集めるだけ集めて、配当と償還を続け、いずれは行き詰まる。

 最初は配当金などで資金の幾ばくかは戻ってきても、運用で利益を生む訳ではないため出資スキームは破綻し、投資家の資金は戻ってこないケースが殆どだ。

 ソーシャルレンディングそのものは、企業にとって資金調達の手段として大きな魅力を秘めている。ただ、運用にはリスクがつきまとい、厳格な審査と規律が求められている。

 関東財務局の検査結果に照らし合わせれば、みんクレの運用実態はポンジ・スキームに極めて酷似している。ソーシャルレンディングという新しい金融形態を利用した投資事業がどういう結末を迎えるのか。自分たちのグループ会社に貸付金の名目で出資金を移動させ、創業者は辞任。出資金と責任が分散するこうしたやり方は“とかげのしっぽ切り”に見えなくもない。

 この手法がまかり通るのか、みんクレの動向に目を離せない。

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