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北朝鮮問題に対する「新たな中国カード」の可能性 - 岡崎研究所

 ヴィクター・チャとジェイク・サリバンが連名で、7月5日付けワシントン・ポスト紙に「北朝鮮に対し中国カードを使う正しいやり方」との論説を寄せ、中国に何をしてもらうのがよいかを論じています。論説の要旨は、次の通りです。

 7月4日の北朝鮮のICBM実験はトランプ政権に難しい問題を提起する。戦争でも米国を攻撃し得る核の北との共存でもない道を探す必要がある。

 北との古い合意を生き返らせようとするのは無駄である。中国は北に意味ある圧力をかけない。そして軍事攻撃は数百万の死傷者を出す全面戦争になる。外交の新しいアプローチが必要である。

 これは中国カードを使うことを意味するが、新たな使い方が必要だ。中国を対北交渉の中心の一部にしなければならない。中国が、北朝鮮とその核・ミサイル計画の凍結・巻き戻しの合意を行い、それに関連する費用も負担するようにすべきである。

 一番いい選択肢は中国が米韓と協力し、北朝鮮に新しい指導部を作ること、次の選択肢は中国が北との貿易をやめるか、少なくとも深刻に制限することだが、いずれも近い将来起こりえない。

 従って、我々は圧力強化をしつつ、劇的ではないアメとムチの外交を行う以外ない。

 中国が北朝鮮問題で何らかの役割を果たすには、費用を支払うべきである。基本的な取引は、北の計画を制約させる代わりに中国が北への資金提供と安全の保障を与えることである。中国は北の石炭への支払のみならず、北の合意順守にも費用を払うと言うことである。

 中国と北の凍結・巻き戻し合意では、IAEAに順守を監視させる。もし北がだました場合、中国はお金を払ったのに何も受け取っていないことになる。論理的には経済的利益供与は保留され、順守が再開されることになる。

 もちろん、中国は北の政権への資金提供をいずれにせよ、続けるかもしれない。北朝鮮はこういう取引を最初から拒否するかもしれない。しかし、これらのシナリオは現状より状況を悪化させない。我々の立場を強くすることにもなりうる。中国と北の関係悪化は中国に我々とその同盟国にその他の選択肢について協力する気にさせる可能性がある。

 経済的テコを使うことにずっと消極的であった中国がこの計画に同意し得る理由は、中国は現在の危機から外交的に逃れたいと思っていることである。習近平は党大会のある今年、トランプといい関係を維持したいし、金正恩に対する中国の不満は、金正恩の家族や中国に近い人の処刑の後、大きくなっている。

 それに我々は重要なムチも持つ。我々は先週の財務省による中国の銀行への制裁に加え、北と取引をする中国企業に広範な第2次制裁を課しうる。

 もちろんこのアイディアで全てを一挙に解決できるわけではない。北朝鮮に検証可能で実施可能な永続性のある制約をかけると言う問題に答えていない。もし北朝鮮が望んでいるのが米から何かを引き出すということなら、このやり方ではあまり前に進めないかもしれない。しかし、北朝鮮については、良い選択肢がない。我々は成功の機会のある戦略、失敗しても我々に優位を与える戦略を追求すべきである。

出典:Jake Sullivan & Victor Cha,‘The right way to play the China card on North Korea’(Washington Post, July 5, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/the-right-way-to-play-the-china-card-on-north-korea/2017/07/05/6d223aa0-6187-11e7-a4f7-af34fc1d9d39_story.html

 ヴィクター・チャは国家安全保障会議の元アジア部長であり、サリバンはバイデン副大統領の補佐官、オバマ政権での国務省の政策企画部長を務めた人です。二人とも、北の核問題について長い間携わってきた人であり、そういう両名の意見ですから、注目に値します。

 両名の提案は、中国に北朝鮮問題の解決についてより大きな役割を果たさせるということで、中国と北朝鮮で核・ミサイル開発について凍結し、さらに巻き戻すとの合意を結んでもらう、その合意の順守検証をIAEAにさせる、というものです。そして、見返りとして中国が北朝鮮の安全を保障し、経済面での支援策を提供するという構想です。

 今は中国による対北制裁の完全履行、さらなる制裁実施などを議論している段階にあり、この政策提言は方向性が相当に違います。その上、もしトランプがこの提言を受け入れても、中国が北朝鮮と話し合い、凍結・巻き戻しの合意を作ろうとするか、疑問です。中国は北の核・ミサイル問題は米朝間の問題であると主張してきました。このような提案を、中国が拒否する可能性は高いです。さらに、北としては、安全の保障などは米国から得て初めて意味があるということであり、こういう対中合意に応じない可能性が高いでしょう。

 しかし、両名が言うように、そもそも北の核・ミサイルについては、よい選択肢がないのも事実であり、米中間で話し合う際に、論説が言うような構想を中国が提起する価値はあるように思われる。

 北のICBM開発の成功に関し、日本として考えるべきことは、米国の安全保障と日本の安全保障が、それによってdecoupling(切り離し)されないかということです。1980年代、ソ連の中距離弾道ミサイルSS20が欧州に配備されたときに、西独のシュミット首相が、米国は例えばハンブルクを守るためにニューヨークを犠牲にする気がないとして、欧州と米国の安全保障がdecouplingされると主張、それを防ぐために、欧州に米核兵器を配備すること、SS20の攻撃に対しては欧州から反撃することを主張しました。同じような状況が、北がICBMで米国の主要都市を攻撃する能力を持った時には生じてきます。この点をよく考えてみる必要があります。非核三原則の見直し、特に「持ち込ませず」の見直しを議論すべきでしょう。

 なお、FOXニュースで、クラウトハマー論説委員は、中国に真剣な取り組みをさせるためには日本が核武装するか、米国の核を韓国に再配備するかであると、述べています。これもゲーム・チェンジャーになるでしょう。

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