意見をつなぐ、日本が変わる。

ソルジャー(営業職)採用は負け組なのか?

2010年09月08日 00:55

藤沢数希

学歴ネタや就活ネタは、ネットの世界で大変人気のあるトピックらしく、前回のエントリーには大きな反響がありました。

しかしそこに書き込まれたいくつかのコメントや、ツイッターでの僕宛のつぶやきをを読んでいて、学生の多くが「営業職」に対して誤解していることに気がつきました。

学生が就職活動でも、大学受験と同じように就職偏差値的なものを持ち出し、なるべく有名な人気企業から内定をもらうことを勝ち組、そうでない企業から内定をもらうことを負け組と考えていることは、すでに多くの識者に指摘されています。
(このことに関しては本エントリーの趣旨ではないので、ここでは議論しないことにします)

しかしいわゆる勝ち組企業から内定をもらう学生の中でも、営業職採用は学生の間で低く見られているということに、僕は気がつきました。

ソニーから内定もらったよヽ(・∀・)ノ」
「お前、しょせんソルジャー採用だろ?」

「Orz」

このような会話は至る所で聞かれます。
ちなみに「ソルジャー」というのは営業マンの隠語です。

おそらく学生の間では、会社の営業職というのは、チョコレートや缶ジュースをお客さんに頭を下げてひーこらひーこらお願いして買ってもらうというイメージなのでしょう。
いっさいの知的能力が必要とされず「いかに恥辱に耐えぬいてお客さんに自社の商品を買ってもらうか」というのが営業の仕事だと考えていれば、確かに学生の間で営業職に偏見があるのもうなずけます。
しかしそれは実際の企業の営業職と大きくちがいます。

僕は、さまざまな営業マンといっしょに仕事をしてきたし、また、さまざまなサービスを営業されている身でもあります。

しかし「お願いします。買ってくださいよ」などと情にうったえて営業している人など会社でひとりも見たことないし、逆にそうやって営業されて僕が何かを買ったことも一度もありません。

実は、営業には、単純な商品を売る営業と、複雑な商品を売る営業があって、両者は全く異なるものなのです。
単純な商品の営業というのは、コンビニでチョコレートを売ったり、缶ジュースを売ったりすることです。
しかし企業が正社員の営業マンを雇う場合、そういった商品を売ってもらいたいのではありません。
複雑な商品を売るために、高いコストを払って雇っているのです。
複雑な商品とは、ITシステムだったり、発電所の受注だったり、金融商品だったりします。
また、自動車や冷蔵庫などのできあがった商品を売るのだって、それはいかに取引先と長期的なWin-Winの関係を築いていくかということです。

単純な商品の営業というのは、すでに心理学やマーケティング理論にもとづくありとあらゆるテクニックが開発されていて、そういった理論に基づいたシステムを本部で作ってしまったら、その後は、末端で働く人々は極めて安い賃金で雇われます。

また、こういった営業は、最近では次から次にインターネットに置き換わっています。
学生の多くがイメージしている営業マンというのは、この末端部分で働く人々のことで、それだったら低賃金のアルバイトを雇えばいい話なのです。
そんなことのためにコストの高い大学出の正社員を雇おうなんていう馬鹿な企業はありません。

最近では、メールやスケジュール管理のような単純なシステムは、Googleのロボットが無料で売っていたりするぐらいです。
単純な商品の営業は、今の社会では最低賃金のアルバイトや、機械が担っているのです。
そしてこれらは極めて利幅の薄い仕事です。

逆に複雑な商品の営業は、専門的でものすごくクリエイティブな仕事なのです。

それゆえ世界中の企業でセールス出身の経営者は非常に多いのです。

それでは複雑な商品をどうやって売るのか考えてみましょう。
それにはまず自分の会社がどういうことができるのかというのを正確に把握しておかなければいけません。
たとえば、何らかのITシステムを売る場合、自社の得意分野、過去の開発実績、現在の開発者の戦力等々を知り尽くしておかなければいけません。

一見、非常に難しいプロジェクトでも、過去に似たものを作ったことがあれば、多くのプログラムを流用できるので、開発者への負荷が少なくなるし、逆に、あまり過去にやったことがないものだったら、簡単なプロジェクトでも負荷が多くなるかもしれません。
今、どの開発者のスケジュールが空いていて、どの開発者がつまっているのか。
自社が購入しているソフトウェアのライセンスはどうなっているのか。
そういったことをひとつひとつ考えて、今、どういう規模、難度のプロジェクトなら受注できるのかを冷静に判断しないといけません。


一方で、クライアントの欲しいシステムはいろいろあって、無理難題的なものから現実的なものまであります。
その中で、営業マンはクライアントが必要としているシステムの中で、自社が提供できるものを探りだしていかなければいけません。
図で書くとこんな感じです。

複雑な商品の営業

もう、おわかりとは思いますが、営業マンというのは非常に頭がよくないとダメなのです。
クライアントのニーズを的確に把握し、かつ自社の能力も正確に知っておかないといけない。
そして、そのオーパーラップする部分を見つけ出し、クライアントに提案するのです。
そうすれば頭を下げて買ってくださいなんていわなくても、自然と売れるものなのです。


また、割りに合わないプロジェクトでも、自社に経験値を蓄積するため、クライアントと長期的な関係を築くために、ある程度の損を出しても受注しないといけない場面もあります。
営業マンには経営者の視点も必要なのです。
もちろん、顧客がどういうものを欲しがっているのかを把握して、将来のためにそれをうまく研究・開発の方にフィードバックするのも営業マンの仕事です。
ここで技術者のマインドも必要になります。

実際に成績優秀な営業マンを見ていると、意外と口べたのひとが多いです。
なぜならば本当にクライアントが必要としているもので、かつ自社が無理なく提供できるモノやサービスを見つけ出せば、わざわざつまらない接待をしたり、適当にべらべら喋る必要がないからです。

ソルジャー採用は決して負け組ではありません。



BLOGOS ユーザアンケートにご協力下さい

5000円分のAmazonギフト券が10名に当たります。

米系投資銀行に勤務の傍ら、執筆活動を行う。

意見

違反通報

意見の違反通知を受け取りました。
ありがとうございました。


BLOGOS Pickup

BLOGOS Recommnend

精神科医療の問題点は?
財政への影響を考える

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

いずれのアカウントもお持ちでない場合 livedoor ID を新規登録 してください。