記事

「なかったことにしたくない」 タブー視しない“イジメ”と“ジサツ” 福島・南相馬市でシンポジウム

1/2

福島県南相馬市の中学生(14)が自殺した。同級生からいじめをうけていたこととの関連が指摘されている。この問題を受けて、南相馬市立総合病院の小鷹昌明医師が「タブー視しない“イジメ”と“ジサツ”」と題するシンポジウムを7月16日、市内で開いた。筆者もシンポジストの一人として参加した。

小鷹「いじめや自殺について議論できる場をつくりたい」

2月11日、南相馬市の市立中学2年の女子生徒(14)が自宅で自殺した。学校が昨年実施したいじめに関するアンケートで、複数の同級生から「きたない」などと言われていた。学校側は、その後、担任の指導でいじめがおさまったと判断していた。しかし、2月のアンケートには、再びからかわれていることが書れていた。遺書は見つかってない。

小鷹医師は開催の趣旨について、「南相馬市でもいじめ自殺が起きたが、問題をオープンにして、議論ができる場を作りたい。なかったことにすることが一番よくない。いじめ自殺は、小さな町でも、普遍的に起きる問題だ。原発事故後に医療支援として南相馬市で住んでいるが、一住民として何かをしたい」と話していた。

南相馬市でのいじめ自殺を受けて開かれたシンポジウム (撮影:渋井哲也)

柳「福島県から避難した子どもがいじめられたニュースを聞いて、人ごとではないと思った」

シンポジウムでは、まず、いじめを受けていた生徒が自殺をし、その後の家族や友人らの葛藤を描いた映画「十字架」(原作は重松清氏、監督・脚本は五十嵐匠氏)が上映された。その後、映画の内容を踏まえて、各シンポジストが自身の体験などに基づいて、問題提起を行った。

浅倉由香(大学生) いじめられると自分のエネルギーが吸い取られる。でも自分が認められる環境では、エネルギーを取り戻せる経験があった。(映画の中で自殺した少年は)いじめられていた長さはわからないが、両親が気づいた段階で環境を変えられれば、もしかしたら自殺は防げたのではないか。

清水康之(NPO法人自殺対策支援センター・ライフリンク代表) NHKの報道デレクターをしていた。親を自殺で亡くした子どもたち(自死遺児)の取材をして、番組を作った。自殺の問題が難しいのは、本人が亡くなっていること。次の当事者は家族。しかしなかなか言えない。語り手がいない。そのため、自らの体験を語り始めた自死遺児を取材して番組を作った。それが自殺の問題に取り組むきっかけだった。

また、自殺で亡くなった30~40人の遺書の取材もした。多く共通するのは謝罪の言葉だ。<仕事ができない部下で申し訳ありません><情けない父親でごめん><ダメな息子ですみません>...。責任感がある真面目な人ばかり。人生の最後に謝りながら亡くなっている。遺族はそれを背負う。

映画の感想は、舞台が1980年から90年代のはずなのに古く感じられない。今も、いじめが主な要因となって自殺で亡くなる子どもたちがいるし、いじめも起き続けている。いじめ問題は、加害者か被害者という属人的な問題になりすぎ。子どもたちに環境を変える力はない。いじめが起きにくい環境に、私たち大人が変えないといけない。

柳美里(小説家) 旧「警戒区域」(東京電力福島第一原発から20キロ圏内)の、南相馬市小高区に転居し、本屋を開く準備を進めている。

私は小学校入学と同時に激しいいじめにあった。遠足のグループ分けがあったが、私は誰からも声がかからず、教師たちのグループに入らざるを得なかった。無視と排除と暴力は小学校の6年間を通して執拗に続いた。休み時間が恐怖だった。昼休みは図書室に潜んでいたが、全員校庭に出て遊ばなければならない、とルールが変わった。校庭の隅にあるイチョウの幹の後ろに隠れていたが、見つかってしまった。「脱っがっせっ! 脱っがっせっ!」とコールされ、全裸にされた。どうやって服を着て、教室に戻ったのか、記憶がない。

福島県から避難した子どもがいじめられたというニュースで、彼が“バイ菌”というあだ名で呼ばれていたと知り、涙が止まらなかった。何故なら、私のあだ名も“バイ菌”だったから。ドッジボールで一番前にいるのに、ボールを当てられない。給食で配食係になったとき、クラス全員が給食をボイコットしたため、担任教師が給食当番から私を外した。フォークダンスのときも、みんな私の手から10センチくらい手を離して踊っていた。

そのときに思い出すのは、いじめの加害者である同級生たちではなく、教師の顔。いじめられている最中、いつも教師の顔を見ていた。どう対応するのか、と。困っていた教師の顔、笑っていた教師の顔、見て見ぬ振りをしていた教師の顔、「協調性がない」と私を叱り飛ばした教師の顔。いじめによる自殺の問題が明らかになると、学校側は「配慮が足りなかった」「指導不足」などと言うが、教師がいじめに加担しているケースは多いと思う。

堀有伸(精神科医) 南相馬市には2012年4月にやってきた。もともとうつ病と社会の問題を精神科医の立場で考えてきた。その中で、精神分析家の北川修氏が指摘する「自虐的世話役」の人に注目している。良心的で身を粉にして働いてくれる人のことです。また、周りから押し付けられる罪悪感について敏感に受け止める人です。こういう人がいると組織的はまとまりやすい。こういう人が「社会にとって望ましい」とされすぎるとの指摘がある。罪悪感に敏感な人を理想的にしすぎた。

いじめが恐ろしいのは、苦しい思いをしたことに加えて、否定的な意味しか与えられないこと。大変な思いをした場合にも、耐えたことが立派なことだというポジティブな意味が与えられれば違ってくる。

あわせて読みたい

「いじめ」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    ネトウヨが保守論壇をダメにした

    文春オンライン

  2. 2

    サギ師が使う人の心を操る話し方

    fujipon

  3. 3

    都顧問 小池都政なければ大混乱

    上山信一

  4. 4

    音喜多氏「小池氏演説は攻撃的」

    おときた駿(東京都議会議員/北区選出)

  5. 5

    英国でトラブル 日立は正念場に

    片山 修

  6. 6

    戦略的投票を推奨する朝日に疑問

    和田政宗

  7. 7

    辻元氏 米は他国民を救出しない

    辻元清美

  8. 8

    約30年ひきこもり 就労までの道

    PRESIDENT Online

  9. 9

    元SMAP3人VSジャニーズの報道戦

    文春オンライン

  10. 10

    情勢調査が有権者に与える影響

    AbemaTIMES

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。