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拝金、堀江貴文



ホリエモンの「拝金」をとうとう読んだ。結論からいうと想定外の面白さだった。僕は個人的にはホリエモンは好きだが、だからといって彼が出版する本を全部読むわけではない。当たり前だが僕の時間は有限で、そこには優先順位というものが自ずと存在する。特に最近は、勝間和代ばりに多数の本を出版しており、どの本を出したのかすら追えなくなった。またホリエモンはツイッターで自分宛に送られてくるよい感想だけを積極的にリ・ツイートしており、その全てが小説「拝金」を絶賛するものばかりなので、僕はかえって不信感を募らせていた。だから僕がこの小説を読まなかったということも全くもってありえる話だった。

しかしそれではなぜ僕はこの小説を読もうと思い、実際に読むにいたったのか。それはアノ池田信夫がこの小説を「おもしろい」と書いていたからだ。勝間和代も同様に「面白かった」とどこかで書いていたが、彼女は今後のビジネス・プランや相手が自分にとって有用かどうかによって、どうにでも言葉を紡げるタイプの人間なので、その感想はまったく当てにならない。銀座のやり手のホステスの言葉が当てにならないのと同じ理由で。しかし池田信夫が「おもしろい」と言った。これはただならぬことだ、と僕は思った。「小説としては稚拙でディテールの書き込みが足りない」という微妙に蔑む修飾句は忘れずに付け加えられていたのだが、それでも池田信夫が面白いと言うのは、やはりただならぬことだ。

そこで今日はたまたま時間があったのでこの前アマゾンで注文して、まだ箱からとりだされていなかった小説「拝金」を手にとってみた。スピード感あふれる話の展開で、僕は読むのを止められなくなった。早く次が読みたい、そんな衝動にかられながら一気に最後まで読んでしまった。池田氏がいうように小説としてのディテールが足りないという感想もそれはそれで正しいのだが、僕はかえって妙に気取った小説家的なディテールがないのがよかったのではないかと思う。というのもほとんど全てが実際にあったライブドア事件にもとづいて書かれており、そういったニュースをそれなりに知っていた僕にとって、まどろっこしい文学的な冗長さはかえって邪魔になったと思われるからだ。むしろ池田氏のいうところの「小説としてのディテール」が足りないおかげで、この作品独特の爽快ともいえるスピード感が生まれたのではないか。それに村上春樹なみに小説的なディテールを書いていたら、おそらく300ページを過ぎてもまだ主人公は鳩と遊んでいたにちがいない。それは著者にとっても、読者にとってもおそらくは生産的なことではない。

ベンチャー企業を創業し、株式上場により大金を得る主人公が、ITバブルに沸くビジネスの世界を走り抜けていく中で、目の飛び出るような高い酒を浴びるのように飲み、家賃が280万円もするマンションに住む。そして、何人もの美女の体の上を主人公はたんたんと通りすぎていく。まさに「男」の欲望が突き抜けていくのだ。それは爽やかでさえある。この辺はやっぱり実際に体験した人が書いているので、読んでいてとてもリアルで面白い。リアルすぎて現実感がないともいえるのだけれど。それに3時間ほどで読みきれる小説としては全体の構造もしっかりしていてなかなかよくできていた。また、随所にみられるビジネスのヒントもタメになるし、著者のメディア論もなかなか鋭い。

想定外の傑作、いや快作であった。

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