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黒田総裁にひとりで異論を唱えてきた木内氏が去り、日銀はどうなる? - 森岡 英樹


コメンテーターとしても活躍 ©共同通信社

 7月23日、日銀の政策委員会のメンバー2人が5年の任期を終えた。

「これにより、政策委員会は黒田東彦総裁の“大政翼賛会”となります」

 日銀関係者がこう呟くのには理由がある。5年の任期を終えて、古巣の野村総合研究所にエグゼクティブ・エコノミストとして戻った木内登英(たかひで)氏(53)。彼が、一貫して黒田総裁が進める異次元緩和に警鐘を鳴らし続けてきたからだ。

 木内氏が日銀入りしたのは民主党政権下の2012年7月。当時の総裁は、白川方明氏だった。そして、2013年3月、日銀総裁が黒田氏に代わる。黒田氏が打ち出したのは、異次元緩和だ。

「2年程度で、消費者物価上昇率を2%にする」

 と宣言し、戦力の逐次投入はしないと言い切った黒田総裁。これに異論を唱えたのが、木内氏だった。

「木内氏も金融緩和論者だが、2年程度と期限を切っての達成は困難と見ていた。『2年程度』を削除した独自案を提示するなどし、日銀内では『木内の乱』と呼ばれた」(前出・日銀関係者)

 ただ、当時の政策委員会では黒田氏に反対する委員は少なくなかった。昨年1月29日のマイナス金利導入を決めた金融政策決定会合では、5対4の僅差で執行部案が承認されたほどだ。

「反対した木内氏ら4人は、すべて白川総裁時代の任命。『“白黒”はっきりした』と言われました」(同前)

 だが、その後、安倍政権下で任命された政策委員は全員が黒田総裁の異次元緩和路線に賛成し、木内氏は孤立感を深めていく。木内氏のみが反対の8対1の採決も珍しくなく、日銀のドン・キホーテと呼ばれるようになった。木内氏を知る市場関係者が語る。

「信念の人です。チーフ・エコノミスト時代から、野村の損得を忖度せずに、自らの信念で論評していた。温厚で腰は低いが、芯は強い。木内氏が正しかったことは、黒田総裁の公約が2年どころかいまだに達成されていないことで明らかでしょう。問題は、日銀が“黒田一強”になり、金融政策の論争が消えることです。アベノミクスに陰りが見える今こそ、本当は活発な論争が必要なのですが……」

 巨大な風車に立ち向かう勇者はもういない。

(森岡 英樹)

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