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「原爆の日」は目を閉じて女優たちの声に耳をすまそう!

 原爆投下から72年経った8月6日。人類最悪の悲劇の記憶も次第に風化しつつある。

 そんななか広島の地方民放局・広島テレビ(日本テレビ系列)が世界に向けて「ヒロシマ」に関する自社制作ドキュメンタリーの数々をネット上で無料公開を始めた。

世界に向けて日本語だけでなく英語でも発信。しかもネットなのでパソコンでもスマホでも見られる。

 広島テレビの被爆ドキュメンタリーのネット発信は、日本のテレビの歴史上でもほとんど例がない意欲的な試みだ。

 URLはこちらだ。
    ↓
http://www.htv.jp/hiroshima/index2.html

 広島テレビが無料公開したドキュメンタリーのなかには2015年の被爆70年という節目に制作されたドキュメンタリー「いしぶみ」がある。原爆の犠牲となって亡くなった旧制二中の生徒とその家族らが残した手記を読んだ朗読ドキュメンタリーだ。

 映画監督の是枝裕和さんが脚本・演出を務め、女優の綾瀬はるかさんが朗読した。

 劇場映画としても公開され、全国の映画館で上映されている。

 この「いしぶみ」は1969年にやはり広島テレビが制作した「碑(いしぶみ)」のリメイク版だ。

 1969年版は女優の故・杉村春子さんが読み手となって手記を朗読している。

数々のテレビコンクールで賞を獲った伝説的なドキュメンタリー作品だが、今回の無料公開ではこちらも見ることができる。

 綾瀬さんの朗読も杉村さんの朗読も、目を閉じてその声に耳をすませば一人ひとりの生徒たちの情景や人生が浮かび上がってくる。その一人ひとりが「被爆者」という抽象的な名前ではなく、固有名詞を持ち、戦時下でもそれぞれの夢や希望を抱いて生きていたことが伝わってくる。読みだけで人々の心に情景を再現しようという女優の魂が込められている。

 一人ひとりの生活を想像しながら耳をすませないと被爆の悲惨さは伝わってこない。テレビは動きのある場面をそのまま映像で伝えるのが得意なメディアだが、あえて「声」に耳をすませて目を閉じて情景を想像しながら聞いてみると、一人ひとりの人生の物語に触れることができる。 感情を抑えつつも静かに心に伝えようとする朗読もとてもいい。

 72回目となった原爆の日、朝8時から平和記念公園で行われた式典をテレビ中継で見た人も多いと思う。あるいは家族などで平和資料館を訪れる人も多いことだろう。

そんな時にぜひ耳をすませてほしいものがある。

 昨年夏、私はジャーナリスト志望の学生たちと一緒に広島で合宿をした。その時に平和記念資料館を訪れた時のことだ。

 平和記念資料館の「音声ガイド」の内容が素晴らしかった。

 入り口で200円を払えば貸してもらえる音声ガイドのヘッドフォン。

 資料館には、被爆で命を落とした若者や子どもなどの遺品が展示されている。その一つひとつをめぐるエピソードは、文字でも読むことができるが、音声ガイドをつけて番号ごとに回って見ていくと、より丁寧に状況がわかってくる。

「****ちゃん、8歳。母親の**さんの手伝いで家の外にいました・・・」といような語りで、一人ひとりがその時に何をしていたのか、被爆直後にまだ命があった人はどういう様子だったのかを伝える朗読だった。

 男性と女性が織り交ざるナレーションだったが、女性の朗読は感情を押し殺した絶妙な読みだった。私自身テレビドキュメンタリーの制作をしていたので、ナレーションの読みには人一倍敏感だ。うまい下手もそれなりにわかるつもりだが、この読み手はめちゃくちゃにうまい。

 声の主はやはり女優だった。

 朗読していた女性の声の主は吉永小百合さんだった。

 だが、平和記念資料館では吉永さんが読み手であることを大々的にはアピールしていなかった。おそらくは吉永さんご本人があくまでボランティアの一人という立場で朗読したものなのだろう。

 72年前に、一人ひとりの身に何が起きたのか。

 綾瀬はるかさん、杉村春子さん、吉永小百合さん・・・。

 これら女優たちの「読み」に耳をすませて聞きとってほしい。

 8月6日、それぞれの女優たちの思いもまた感じとってほしい。

※Yahoo!ニュースからの転載

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