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トランプ政権「迷走の夏」の行方

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暑中お見舞い申し上げます。この暑い中、日米の政局が見ものです。日本では今週、内閣改造が行われました。これで安倍政権の支持率がどうなるかは週明けのお楽しみ。

そして米国では、遺憾ながらトランプ政権の迷走ぶりが深まっています。本誌では3号続けて「トランプネタ」をパスしてきましたが、この間にホワイトハウスの混乱ぶりは、人事も含めてだんだんタガが外れて来た感があります。

問題はこの「ワシントン政治の空白」が、世界にどんな風に影響を及ぼすか。経済・金融から外交・安全保障まで、この夏以降はいろいろ心の準備が必要になりそうです。

●ホワイトハウスは「辞任と解任」の連鎖

いくら「お前はクビだ!」(”You’re fired!”)が決め台詞の大統領とはいえ、政権発足から半年間でこれだけの犠牲者が出るとはすさまじい。

* マイケル・フリン国家安全保障担当補佐官 2月に辞任
* ジェームズ・コミーFBI長官 5月に解任
* ショーン・スペンサー報道官 7月に辞任
* ラインス・プリーバス首席補佐官 7月に解任

このリストに新たに加わったのが、7月21日に指名されて、正式就任前の7月31日には解任されてしまったアンソニー・スカラムッチ広報部長である。なんと10日間でホワイトハウスをクビになってしまった。

スカラムッチ氏はもともと投資家である。政治の世界では民主党候補者を応援し、2008年にはオバマ選対の資金集めを担当した。12年から共和党系に転向し、16年選挙ではジェブ・ブッシュ候補などを応援したが、途中からトランプ支持に転じる。そして念願だったホワイトハウス広報部長のポストを射止めると、過激な言動で思い切り周囲の顰蹙を買った。その不規則発言ぶりは、ほとんどトランプ大統領に匹敵せんばかりであった1

かくして新任のケリー首席補佐官が、大統領に直訴してスカラムッチ氏を辞めさせた。この間、彼は利益相反を避けるために自分の投資会社を売却し、さらに「トランプ嫌い」の妻からは離婚を言い渡されている。10日間で仕事も家庭も失ったことになる。

こんなドタバタぶりを見せつけられると、ホワイトハウスの権威もさすがに地に墜ちる。下記は本誌愛用の「ラスムッセン」のデータだが、コアな支持者はついに25%ラインを、緩やかな支持者も40%台を割り込んでいる。いよいよ危険水域、ではないだろうか。

○さすがに危険水域に入ったか?



ところが、「辞任と解任の連鎖」はさらに続きそうである。トランプ大統領は、ロシアゲート事件に対するジェフ・セッションズ司法長官の対応に不満を持っている。捜査を指揮しているムラー特別検察官を解任できるのは、これを直轄する司法長官だけ。しかしセッションズ長官はそれには否定的である。お陰で2人の関係は微妙になっている。現職上院議員の中で、初めてトランプ候補を支持してくれた大恩人なのであるが。

こんな調子では、誰もが「トランプ政権で働く」ことに二の足を踏むようになるのではないだろうか。何しろトランプ政権における承認済みの政府高官数は、現時点でわずかに50人。圧倒的に数が少ないのだ。にもかかわらず、内輪揉めでその中から辞任や解任が飛び交っている。

●待ち受ける「予算と金融政策の秋」

各省の長官、副長官、次官、次官補、そして全権大使、判事などの重要ポストは、合計556人と言われる。トランプ政権はまだその1割以下しか埋まっていない。ちなみに過去の政権は、議会の夏季休会入り時点でオバマ政権は203人、ブッシュ政権で203人、クリントン政権で206人が決まっていた2。トランプ政権は既に226人を任命済みで、残る176人は承認待ちである。しかし下院は7月末から夏季休会に入っており、上院も8月11日から休会する。議会が再開されるのは9月4日のレイバーデイ明けとなる。

議会がお休みの8月には、法案審査は進まない。議会の休会中に、新しい人事を進める”Recess Appointment”という裏ワザはあるけれども、民主党側が警戒しているのでたぶん使えない。つまり人事も停滞する。トランプ政権は「局長級」の陣容が揃わない状態で、この暑い夏を過ごさなければならない。

思えばトランプ政権は、TPP離脱やパリ協定脱退のようなネガティブな決断はできたものの、法案成立といったポジティブな成果をほとんど挙げていない。懸案のオバマケア廃止&代替の試みはうまく行かなかったし、それが進まないと大型減税やインフラ投資などの課題には進めない。すべては9月を待たなければならない。

そして9月には2つのリスクが控えている。ひとつは連邦債務上限問題で、議会はこの宿題を夏休み前に仕上げてくれなかった。ムニューシン財務長官は、「米国債のデフォルトを避けるために9月29日までに引き上げが必要」と言っている。ゆえに米財務省は、その日まで「年金基金の投資一部停止」といった措置を継続する構え。

そして9月30日の年度末までには、米議会は2018年度歳出法案を通さなければならず、これが間に合わないとなると政府閉鎖の可能性が出てくる。もちろんその場合は、暫定予算でつなぐという常套手段はあるのだが、共和党内の財政タカ派のフリーダム・コーカスが、債務上限引き上げと歳出カットを抱き合わせで通すように要求する構え。共和党右派の造反分は、民主党穏健派の賛成で穴埋めしなければならない。毎度おなじみの光景だが、今回も「滑り込みセーフ」となるのではないか。

さらにややこしいのは、トランプ政権と共和党は18年度歳出法案に、税制改革法案を組み合わせようとしていることだ。Reconciliation Instructions(財政調整指示)と呼ばれる手法であり、予算は国民生活にとって重要なので、上院でのフィリバスターが使えないことになっている。従って、上下両院ともに過半数の賛成で減税法案を通すことができる。

とはいえ、歳出法案、債務上限、税制改革の3元連立方程式は難解そうだ。9月の短い議会日程で果たして片付けられるのか。今からハラハラさせられそうである。

○年後半の米国政治経済日程

8月16日 カナダ、メキシコとの間でNAFTA再交渉開始
8月24-26日 ジャクソンホール会議
9月4日 レイバーデイ。翌日から議会が再開。
9月19-20日 米FOMC→再投資を減額してバランスシートの縮小開始?
9月29日~ 米債務上限問題の恐れ
9月30日 米議会、2018年度歳出法案の期限→政府閉鎖の可能性も?
10月頃? FRB議長の後任人事(ポスト・イエレン)
11月1-2日 米FOMC
11月10-11日 APEC首脳会談(ベトナム、ダナン)→トランプ大統領出席
11月14日頃? 東アジアサミット(フィリピン、パンパンガ州)
11月中 COP23(独、ボン)
12月13-14日 米FOMC→今年3度目の利上げを実施?

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