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最大の不安要因はトランプ氏本人“使い捨て”にされた広報部長 - 佐々木伸 (星槎大学客員教授)

 ホワイトハウスの前首席補佐官の更迭に一役買ったスカラムチ広報部長が今度は就任したばかりのケリー首席補佐官に事実上解任された。トランプ大統領に”使い捨て”にされた格好だが、これで政権の混乱が収拾するかは全く不明。今後の最大の不安定要因は衝動的な発言を繰り返すトランプ氏本人だ。

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解任されたスカラムチ氏(Chip Somodevilla/Getty Images)

大将の規律と豪腕

 ケリー氏は7月31日、首席補佐官に就任した直後から規律に厳しい海兵隊大将らしい豪腕を発揮した。スカラムチ広報部長を自分の執務室に呼び出して辞任を迫った。事実上の解任通告だ。トランプ大統領から了承を得た上での行動だったが、「新首席補佐官は政権運営で大統領から全権を委ねられている」(サンダース報道官)ことを如実に示すことになった。

 投資家のスカラムチ氏はわずか10日前にトランプ氏から広報部長に任命されたばかり。大統領の意を受けて、プリーバス前首席補佐官を非難して辞任に追い込んだものの、そのあまりに過激で、下品な言動は評判が悪かった。

 当初こそ、スカラムチ氏を支持していたトランプ大統領も途中から眉をひそめるようになり、ケリー氏の解任提案に賛同せざるを得なかったようだ。プリーバス氏を辞めさせたことでその任務が終わり、“使い捨て”にされたと言っていい。

 米メディアによると、ケリー氏は就任後に大統領と2人だけで会談。大統領に対し、ホワイトハウスの人事や情報の流れの管理、大統領執務室へのアクセス権など本来首席補佐官が持つべき権限を与えるよう求め、了承を得た。その後、職員に対する訓示で、重要な事項はすべて自分を通して大統領に報告することをはっきりさせた。

 ニューヨーク・タイムズやCNNなどによると、首席補佐官については、トランプ大統領がこの数週間、ケリー氏に打診を続ける一方、長女のイバンカ氏やその夫のクシュナー上級顧問がディナ・パウエル次席補佐官(国家安全保障担当)を推挙していた、という。

 ケリー氏は大統領からの信頼を勝ち得ているという自信からか、最近、大統領への影響力の強さを垣間見せることもあった。2週間前に開かれた安全保障関係者の集まりでは、大統領の持論であるメキシコ国境の壁建設について、「実際に壁を建設する必要がないと大統領を説得できたと思う」などと述べ、周囲を驚かせた、という。

 また、議会で医療保険制度改革(オバマケア)の見直し法案が否決されるなど、ホワイトハウスには早急な議会対策が必要だが、ケリー氏は首席補佐官に就く前から、野党民主党の指導者らと税制改革などについて電話で協議をしていたことも明らかになっており、就任に向け準備を進めていたことをうかがわせている。

 こうしたケリー氏だが、5月のコミー連邦捜査局(FBI)長官の解任に対しては、怒り、動揺したという。ケリー氏はコミー長官に電話し、自分も辞任を検討していると漏らしたが、逆に長官から思いとどまるよう説かれた。2人は親しい仲ではなかったが、互いに職責に忠実なプロフェッショナルであることに敬意を払っていたとされる。

ツイッターの制御は不可能

 ケリー氏が首席補佐官として成功するかどうかは当面、2つの事にかかっている。1つは大統領に一番影響力を持つイバンカ氏とその夫のクシュナー上級顧問の2人を味方に付けることができるかだ。

 この点に関し、米専門家はレーガン政権の首席補佐官だったジム・ベイカー氏の手法を見習うべきだと進言している。ベイカー氏が首席補佐官に就任した時もホワイトハウスは権力闘争で内紛が激しかった。

 しかしベイカー氏はレーガン大統領のナンシー夫人と、レーガン夫妻の家族同様だったディーバー次席補佐官を味方に付け、ホワイトハウスをうまく統括した。ケリー氏がこれと同じように、クシュナー夫妻と同盟関係を築くことができれば、前途に光明が見えてくるかもしれない。

 だが、ホワイトハウスの秩序回復にとって最大の不安要因はトランプ大統領本人の言動だろう。トランプ氏は気まぐれで、衝動的なことに加え、実業家時代から側近同士を競わせて忠誠心を試すことを好み、大統領になってからもこの性向は変わらない。部下の権力闘争を楽しみ、対立を煽ることさえある。

 しかも、たびたび問題を起こしてきたツイッターでの不規則発言を今後もやめる気配はない。トランプ氏は31日、「ホワイトハウスにとって素晴らしい日だ」とツイートし、ケリー首席補佐官の誕生を祝ったが、いつトランプ砲が炸裂するか分からない。ケリー氏が大統領のツイッターの制御をするのは不可能だろう。ケリー氏にとってこのツイッターの管理が2つめの問題だ。

 ケリー氏のもう一つの懸念はロシア・ゲートで大統領が嘘をついていないのかどうかだ。大統領が真実を話していないという疑念が生じれば、首席補佐官として、国を守ってきた軍人として大統領を質さざるを得ない局面が訪れるかもしれない。その時こそ、ケリー氏の真価が問われることになる。

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