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北朝鮮に対する「封じ込め戦略」とは - 岡崎研究所

 7月4日付のウォールストリート・ジャーナル紙が、北朝鮮のICBM発射実験を受けて、封じ込めによる政権交代を狙った戦略を構築すべきだとする社説を掲載しています。要旨は以下の通りです。

 7月4日、北朝鮮は初めてのICBM(大陸間弾道ミサイル)と思われるミサイル発射実験を行った。米国の独立記念日に実施するという象徴的意味合いもさることながら、その技術的成功の意味はもっと重大である。北朝鮮は米国の脅威となる核弾頭搭載ICBMの獲得に進みつつあるが、その速度に米国は緊急に対応する必要がある。

 「火星14号」と呼ばれるミサイルの射程にはアラスカは入るが、本土の48州はまだ射程外である。しかし、北朝鮮は長距離ミサイルに係わる殆どの問題を克服したようである。重要な問題の一つは、このミサイルが5月14日に発射実験に成功した中距離ミサイル「火星12号」を土台としているかどうかである。そのエンジンは、独自に開発された高性能のものであったが、北朝鮮が、今回、これに第二段ロケットを加えたのであれば、米国はロサンゼルスやシカゴが直接脅威に晒される推定時期を前倒しすることが必要となる。

 トランプ政権は難しい決定を迫られている。更なる制裁は金正恩体制に圧力をかけることになるので、実行する価値がある。しかし、韓国、日本と同様、米国も20発の核弾頭と生物化学兵器を持つ北朝鮮の攻撃に程なく脆弱となる。米国による先制攻撃は排除は出来ないが、北朝鮮のミサイルが1発でも生き残れば、韓国に対する核攻撃のリスクを冒すことになる。北朝鮮の核開発計画を「凍結」させるための外交を過去三つの政権は試みて失敗した。

 最善のオプションは、元国務次官ロバート・ジョセフが論ずるように、金正恩政権の交代を狙った包括的戦略である。抑止とミサイル防衛の強化、ブッシュ政権時代の核とミサイル拡散防止のための監視措置の復活、この地域の諸国に北朝鮮との関係を断絶させること、北朝鮮が実験するミサイルを撃墜すること、金正恩政権の犯罪のニュースを北朝鮮国民に宣伝すること、がそれである。

 米国は中国が問題であることも認識せねばならない。北朝鮮の中国との貿易は第1四半期に37.4%増大した。中国企業は北朝鮮の鉱物資源と安い労働力を利用して利益を得る一方、核ミサイル計画のための材料と技術を提供している。

 米国は中国の指導者が核武装の北朝鮮はその利益とならないと悟ることに希望を託して来た。しかし、北京の行動は北朝鮮の行動が米国を北東アジアから追い出すことを希望していることを示している。中国の助力の有無に拘わらず、金正恩政権の打倒を狙った一層厳しい戦略にのみ、数百万の米国民の生命に対する脅威を除去するチャンスがある。

出典:Wall Street Journal ‘The North Korean Missile Crisis’ (July 4, 2017)
https://www.wsj.com/articles/the-north-korean-missile-crisis-1499188198

 今回の実験が米国の緊張感を大きく高めたことは間違いないでしょう。北朝鮮が或る日突然ICBMによる米国の攻撃に踏み切る脅威というよりも、より現実的な問題は、朝鮮半島で紛争が発生した場合、米国本土が核の脅威に晒されていれば、米軍の行動が大きく制約を受けるということにあります。

 7月4日、ティラーソン国務長官は声明を発表し、ミサイルがICBMであるとの認識に立ち、脅威のエスカレーションを非難し、グローバルな行動を呼びかけました。

 この論説およびロバート・ジョセフ(7月3日付 National Review掲載の論説)が論じていることは、包括的な戦略をもって北朝鮮を封じ込め、内部からの政権交代(regime change)を促すというものです。政権交代につながるか否かはともかく、封じ込めをいうなら、金融制裁を強化することです。金融制裁は米国の金融システムないし国際金融システムから北朝鮮を遮断します。米国が有する最も強力な手段であり、その有効性はかつてのBanco Delta Asiaのケースで立証されています。具体的には、去る6月29日、財務省は北朝鮮と取り引きがあることを理由に中国の丹東銀行に制裁を発動しましたが、今後も中国に気兼ねすることなく、この制裁を推進すべきです。

 封じ込め、あるいはティラーソンのいうグローバルな行動をいうのなら、ASEAN諸国(すべて北朝鮮と外交関係を有する)に何等かの行動をとるよう要請することが考えられて良いでしょう。経済的効果はそれ程のものではないでしょうが、アジアの隣国の行動に政治的意味があります。先のクアラルンプールにおける金正男暗殺事件に際するマレーシアの対応は腰砕けで、甚だしく面白くないものでした。

 ロバート・ジョセフが論じている封じ込めの提案の一つに、「北朝鮮の国境を越えて飛来するミサイルを撃墜することについて、予め韓国および日本と了解を遂げる」というのがあります。軍事力の行使として米国が一番に考えるのは、これだと思われます。2006年6月にウイリアム・ペリーとアシュトン・カーターが「テポドン」が発射台にあるうちに巡航ミサイルで破壊することを提案しました。ICBMだと発射台にあるうちにやらないと、破壊出来ないのかも知れません。その他のミサイルを撃墜することにどれ程の意味があるかという問題もあります。いずれにせよ、日本として、こういう手段をどう考えるのかという問題があるでしょう。

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