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トランプ氏は電話でいったい何を メキシコ・豪首脳との会談記録リーク

写真左から、大統領執務室で電話をするトランプ米大統領、フリン国家安全保障問題担当補佐官(今年1月当時)、バノン戦略顧問Getty Images 写真左から、大統領執務室で電話をするトランプ米大統領、フリン国家安全保障問題担当補佐官(今年1月当時)、バノン戦略顧問

アンソニー・ザーチャー北米担当記者、BBCニュース

ドナルド・トランプ米大統領の発言記録が公開されては、その内容を事細かに点検するのが、ワシントンの最新流行となりつつある。

未公開だった米紙ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューが公表されてみれば、大統領が実に奇妙な断言や非論理的発言を重ねていたことが分かり、世間はこの「迷言」の宝庫を楽しんでいたわけだが、それからわずか数日後、今度は(ごく最近の)過去から新たな発言録が飛び込んできた。大統領就任の翌週の1月27日と28日に、トランプ氏が各国首脳に次々と電話をかけていた時のことだ。

米紙ワシントン・ポストが入手し報道したのは、メキシコのエンリケ・ペニャ・ニエト大統領、そしてオーストラリアのマルコム・ターンブル首相との会話記録。ホワイトハウスが残していたものだ。

世間の耳を気にしない状況ではトランプ氏がどういう風に話すのか、その口ぶりがうかがえる(註:世間に向けた普段の口ぶりとさほど変わらない)。

注目内容をいくつか挙げてみる。

メキシコ大統領との電話で

トランプ 「カナダは問題じゃない。カナダのことは心配しないでいい。カナダのことは気にする必要さえない。それは別の話で、カナダは大丈夫で、うちとカナダとの関係はとても公平だ。もっとバランスがとれていて、もっとずっと公平だ。だからカナダのことは心配しないでいいし、我々はカナダのことは気にもしてない」

(ザーチャー解説:この発言は、トランプ政権は北米自由貿易協定(NAFTA)のような多国間の取り決めよりも二国間の通商協定を好むという証拠なのかもしれない。この時点でトランプ氏は「カナダは問題じゃない」とメキシコ大統領に述べたが、この後にはたびたび北方の隣国を非難し、カナダの乳製品や針葉樹軟材輸出方針を罵倒している)

トランプ 「僕はニューハンプシャーで勝った。ニューハンプシャーは麻薬蔓延(まんえん)の巣窟(そうくつ)だから」

(ザーチャー解説:トランプ氏は大統領選本選ではニューハンプシャー州で敗れている。しかし2016年2月の共和党予備選ではニューハンプシャーを制し、これによって共和党レースの先頭に立った。選挙中のトランプ氏は同州で、オピオイド(モルヒネ様化合物)中毒の蔓延(まんえん)が問題だと指摘したが、これほど侮蔑的な表現はしていなかった)

トランプ 「メキシコにはタフなオンブレ(連中)がかなりいるから、助けが必要かもしれない。あの手ごわい連中を相手にするなら、おたくを助けてあげる用意がある。でも連中は叩きのめさなきゃならないし、おたくはそれがちゃんとできてない」

(ザーチャー解説:「タフなオンブレ」発言は当時すでにリークされ、その時点で不謹慎だと批判された。こうして発言の文脈が分かってみても、首脳外交らしい発言とは言い難い)

トランプ 「(壁は)まったく重要な話題じゃないが、政治的には一番大事かもしれない」

トランプ 「メキシコは壁の代金を払わないなんて言うつもりなら、もうおたくらとは会いたくない。そんなのは受け入れられないから」

トランプ 「そんなことはマスコミに言っちゃならない。(メキシコは壁の費用を負担しないと)言ったりしたら、マスコミはそればかり取り上げる。そんなのは僕は我慢できない」

(ザーチャー解説:トランプ氏の主要選挙公約だったメキシコ国境の壁建設は、当初から批判されていた通り、冷徹な現実に直面した。メキシコは費用負担するつもりなどないのだ。トランプ氏はこれが厄介な問題で、世間的に大騒ぎになりかねないと自覚している様子だ。そこで大統領は解決策として、『マスコミには言うな』とペニャ・ニエト大統領を説得しようとした)

トランプ 「君と僕とで世界に立ち向かってるんだよ、エンリケ。忘れないで」

(ザーチャー解説: トランプ氏は選挙中ひたすら、メキシコとメキシコの不法移民をサンドバッグ扱いしていた。そのことを思うと、この発言は奇妙だ。電話会談でペニャ・ニエト大統領は一貫して、トランプ氏をほめそやしているので、もしかするとその物言いのおかげで、トランプ氏は態度を軟化させたのかもしれない。少なくともこの場限りは)

トランプ 「君の言葉は本当に美しい。美しい言葉だ。自分はそんなに美しい言い方はできないと思うな。そういう言葉で発言を締めくくるのは、最高だと思う」

(ザーチャー解説:選挙中のトランプ氏はかつて「一番いい言葉を知ってるのは自分だ」と自慢した。ペニャ・ニエト大統領にはかなわないと、もしかしたら認めているのかもしれない)

豪首相との電話で

トランプ  「(米豪の難民受け入れ合意)は最悪だ。自分は(難民を)国に入れたくない世界で一番偉大な人間だ」

(ザーチャー解説:トランプ氏はどうやらトランプル豪首相に電話する直前まで、米豪難民受け入れ合意についてよく理解していなかったようだ。前日に「誰かが」何か言っていたという以外は)

トランプ  「間違いない、(難民は)絶対に良くない。だから今は牢屋にいるんだ。地元の牛乳の人たちのために働くようになる素晴らしい人たちになんかならない」

(ザーチャー解説: オバマ政権とターンブル政権は2016年、東南アジアやイランなどからオーストラリアを目指したものの太平洋上の施設に収容されている難民の米国再定住に合意した。難民は収容施設に監禁されているわけではなく、トランプ氏にターンブル氏が反論したように、オバマ政権は難民1250人全員の受け入れに合意したわけではない。取り決めでは、「牛乳の人たち(milk people)」に脅威とならない難民を米政府が選別することができる)

トランプ 「だから連中は選挙に負けたんだ。こういうくだらない取り決めをするから。おたくもビジネスでくだらない取引をしてきたし、おたくのことは尊敬してるけど、間違いなく、くだらない取引をいくつもまとめてきたはずだ。これはくだらない取引だ」

(ザーチャー解説:たとえ外国首脳との電話会談だろうが、優勝したスポーツチームのホワイトハウス表敬だろうが、ボーイ・スカウトの全国大会だろうが、大統領はすきあらばすかさず、2016年大統領選の話題を口にする。自分が大統領選に勝ったこと、そして自分は取引上手なこと(訳注:自伝原題は「Art of the Deal(取引の技)」)が、トランプ氏の得意な話題だ。ターンブル氏はここで、一度に両方の話題を振られる特別待遇を受けている)

トランプ 「ボートが何だって言うんだ? どうしてボートを差別するんだ」

(ザーチャー解説:船舶で上陸しようとする難民をなぜ豪政府が受け入れないのか、トランプ氏は理解できないようだ。ターンブル首相はこのやりとりで繰り返し説明を試みているが、豪政府としては、船舶で到来する難民を拒否することで、密航業者を抑制し、難民が危険な航海を選ばないよう仕向けている。難民の出身国や、受け入れに伴う想定上の脅威とは関係ない)

トランプ 「もうたくさんだ。1日中こうやって電話ばかりしていたけど、この電話が一番不愉快だ。プーチンとの電話は楽しかった。これは馬鹿げてる」

(ザーチャー解説: 1月28日の直後にすでに、この電話会談はなごやかとは程遠いものだったと報道された。トランプ氏とホワイトハウスは否定したが、この会話記録を読むと、会談の雰囲気は明らかだ。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領への言及は、まさにダメ押しの一手だった)

(英語記事 What Trump really meant in those phone calls

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