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冷凍牛肉の輸入制限、米国にとって大打撃の理由とは? 「TPP参加していれば」と政権批判も

Dragosh Co / shutterstock.com
Dragosh Co / shutterstock.com

 アメリカが手痛いしっぺ返しを食らったことになるのだろうか。冷凍牛肉の輸入量が制限値に達したとして、日本は緊急輸入制限(セーフガード)を発動したが、これは貿易赤字に悩むアメリカにとって打撃となる。本来TPPに参加していれば避けることができた事態なだけに、離脱に舵を切ったトランプ政権に米国内から非難が集中している。

◆TPP離脱の判断が裏目に

 オバマ政権下で農産品の輸出交渉を指揮したダルシ・ベッター氏は、「驚きはない」「もしTPPに参加していれば、我々は免除対象国だった」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙、7月28日)と、現政権に冷たい視線を送る。

 米フォーブス誌は、別の要因からアメリカの立場を不安視する。アメリカは中国から牛肉の輸入再開への合意を引き出していたが、一部報道によると中国側が追加条件を提示したようだ。成長ホルモンと添加剤を使用しない肉に限るという条件だが、アメリカではほとんどの農場が少なくとも片方を使用している。中国への当てが外れた上、日本での関税も上がるという二重苦の状態だ。

 もともと日本は、アメリカからの強い圧力を受けてTPPへの参加を決定した。当のアメリカが離脱した際には「はしごを外された」との焦りが日本側に広がったが、今回はアメリカが意趣返しを受けた上、中国からも突き放された格好だ。

◆危機的なタイミングでの関税アップ

 アメリカ国内で政権への批判が高まるのは、冷凍牛肉の輸出先として日本が比較的大きなマーケットになっているからだ。フォーブス誌によると、輸出全体の3分の2以上がロサンゼルスの2つの港から出荷されており、これは日本を含むアジアへの輸出量が非常に大きいことを示している。

 生産者の間にも不安が広がっている。酪農が盛んな米ネブラスカ州の地方紙『リンカーン・ジャーナル・スター』は、貿易はネブラスカの生命線であり、かつ牛肉が主要な輸出品になっていると危機感を抱く。日本への昨年の輸出額はアメリカ全体で15億米ドル(約1700億円)に上るなど、経済的影響は大きい。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙も、酪農業界の事情に触れている。ここ数年の出荷額の伸びに伴って生産者は投資を拡大しており、資金を回収する必要がある。加えて日照りのために仔牛が屠殺されており、肉の出荷先を確保する必要があるようだ。最悪とも言えるタイミングで発動したセーフガードに動揺が広がっている。

◆競合オーストラリアは歓迎

 苦悩するアメリカに対し、棚からぼた餅となったのがオーストラリアだ。豪ABC系列のラジオは、ライバルのアメリカ産牛肉への日本の関税強化を伝え、国内産業の好機と捉えている。折しもオーストラリアは中国から一部牛肉の輸入中断を突きつけられたところであり、思わぬ吉報に沸く。『news.com.au』が伝えるように、オーストラリアは1年以上前から、TPP発効で同国産牛肉がアメリカ産に押されることを懸念してきた。結果的にはアメリカの離脱がオーストラリアに味方した形だ。

 アメリカもただ手をこまねいているわけではなく、ジャーナルスター紙は日本との関税協定の必要性を主張する。ウォール・ストリート・ジャーナル紙も同様の意見だが、交渉は難航するとみているようだ。アメリカにはすでに関税障壁が少なく、見返りとして日本側に示せる条件がないためだ。

 強気の姿勢でTPPを離脱したアメリカだが、思わぬ副作用に頭を抱えているようだ。

Text by 青葉やまと

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