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小林よしのり氏「もう国家論やめたくなった。わしだってもっといろんな表現をしたいよ」

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小林よしのり氏。(撮影:弘田充) 写真一覧
中国が海軍力を強化し、ロシアも極東方面での活動を活発化させている。竹島・尖閣諸島・北方領土を巡る近隣諸国とのトラブルも頻発しており、あらためて国防の問題がクローズアップされている。そんな中、BLOGOS編集部では、「国防」について真正面から論じた「ゴーマニズム宣言SPECIAL 国防論」を9月に上梓したばかりの小林よしのり氏に話を伺った。話は、震災の被災地取材時のエピソードから、フジテレビ・お台場デモ事件にまで及んだ。取材当日は最悪の体調だったという小林氏だが、我々の質問にもひとつひとつ丁寧に答えてくれた。(取材:BLOGOS編集部 田野幸伸、大谷広太)

漫画でしかやれない、記録できないものをやっておこうと思った


―わたしたち編集部のメンバーも30歳前後ですので、小学生の頃は「おぼっちゃまくん」、中学生では「ゴーマニズム宣言」を読んで育った世代なんです。

小林よしのり氏(以下、小林):へえーそうでしたか。よろしくお願いします。

―今回の小林先生の新著「国防論」ですが、外交・防衛の話ではなくて、東日本大震災の描写からスタートしていますね。あくまでもイラストなのですが、悲惨で生々しい描写もあったので、緊張感をもってページをめくりました。
先生は漫画家ですから、映像や写真、文章ではなくて、絵で表現なさるわけですよね。漫画というメディアを通じて表現する上で、苦労された点などはありますか?


小林:もともとは自衛隊に対する偏見みたいなものを和らげようと思って、外国との軍事衝突を前提とする国防論として始めていた仕事なのですが、3月11日の震災以降、国民の偏見を取り除く、というのは(被災地での活動を通して)自衛隊が自力でやっちゃったから。
そうすると、わしがやらなくてもいい仕事になってしまった。

ただ、オウム事件の時にもそういう感覚はあったんですけど、3.11以降に起こった現象というのは、原発事故への反応も含め、かなり歴史的なものだと感じたわけですよね。3.11以降の現象を全部俯瞰して、記録したものを作りたいという感覚が生まれてしまいましたよね。

漫画というジャンルの中から、ひとつくらいそういうものを残せていてもいいんじゃないかな、ということで、地震の発生時点から連続して描きました。その中で自衛隊の活躍もあるということで。

やっぱり漫画だとカメラアングルを自在に変えられるわけですから、津波の発生時点から、それが東北に押し寄せて、どのように住宅を飲み込み、人々の背後に迫ったかというのも、漫画でならば描けるわけです。誰かの手によって撮影されたものではなくて、漫画でしかやれない、記録できないものをやっておこうと。

そうなると、一応現地にも行っておかなければならないから、嫌だったんだけど、行った。自分の想像力だけで描いてもいいんじゃないというのもあったんだけど、行かないわけにはいかないから。そこで見た光景は独特のものだったな。

漫画の中にも描いたけれど、”ソフトな無法状態”というものが(被災地には)あった。家の中は丸見え。誰も見張っていないから、家宅侵入も簡単にできるし、泥棒しようと思えばできる。外国ならば、結構取っちゃいますよね。非常事態に家宅侵入したり。日本人はそういうところ、何らかの後ろめたさを感じる。

一方では、自動販売機とか金庫が田んぼのなかに転がっちゃって、誰かがこじ開けたんだろうというものもあるわけです。他所から入ってきた悪いやつがやったのか、地元の人間が必要性に駆られてやったのか。わからないですよね。

あんな空間は、SF的なものでしか見られない世界でしたよね。現実感がないような。こんなことっていいのかなと思った。制御するのは自分の倫理観しか無いんですよね。普通、街中で暮らしていたら、明文化されたルールにしばられているところがありますが、あそこへ行くと、誰も見てないから何をしてもいいぞ、というのがあって。

実際の取材を行なってみて、こういうことが起こるんだなという、非常に難しい、ルールの想定外のことが起こっているということを体感したというのが、ものを表現する人間としては、ある種の好奇心をかられる出来事でした。

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