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「反体制」「武器」「強盗」「裁判」――数奇な運命をたどった印象派コレクション - フォーサイト編集部

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ピエール=オーギュスト・ルノワール『イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)』 1880年 油彩、カンヴァス 65×54cm
©Foundation E.G. Bührle Collection, Zurich (Switzerland) Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)


 ルノワール、セザンヌ、ファン・ゴッホ、ゴーギャン、ピカソ――フランス印象派とポスト印象派の傑作揃いと言われる「ビュールレ・コレクション」。ドイツに生まれ、スイスに移住した実業家エミール=ゲオルク・ビュールレ(1890~1956)が生涯をかけて収集したプライベート・コレクションである。実はこれまで、ヨーロッパ以外の地域へ所蔵品がまとまって貸し出されたことはほとんどない。

スイスではビュールレの私邸を改装した美術館で作品を鑑賞することができたが、2015年に閉館。まとめて観ることのかなわなかったこのコレクションが、2018年、「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」展として来日する。約60点の名作のうち、半数が「日本初公開」。日本でコレクションの全貌を知る最後の機会とも言える。さらに、作品の中に「数奇な運命」をたどってきた作品も少なくない。

 7月12日、展覧会の準備で来日したE.G.ビュールレ・コレクション財団館長ルーカス・グルーア氏に、ビュールレとそのコレクションについて聞いた。

「門外不出」のモネの大作も

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ルーカス・グルーア館長

――ビュールレ・コレクションは、1990~91年、生誕100年を記念して横浜美術館に来日して以来です。当時、外部への貸し出しはこれを最後にするという方針が財団にあったと聞きました。

 コレクションをどうすべきか、まったく指示がないまま、ビュールレは亡くなりました。そこで妻と2人の子供が1960年に財団設立を決め、作品の3分の1が財団に寄贈されて、2015年までは財団が独自に私邸跡の美術館を運営していました。現在は孫にあたるクリスチャン・ビュールレが理事長を務めていますが、財団の人事にも世代交代があり、若い人たちが運営の中心になることで考え方も変わったのです。

ちょうどそのころに「チューリヒ美術館」の拡張計画が決まり、より一般の人たちにアクセスしやすい状況にしたいと、理事会はそちらに美術品を寄託するという誘いを受け入れました。作品の大部分が海外に持ち出されると、財団の美術館で常設展示できる作品が少なくなってしまうという事情もありました。だからこそ、2020年にチューリヒ美術館がオープンされるまでの間は、他国でも展示できるチャンスだと捉えたのです。

国立新美術館では、我々が運営してきた美術館の展示をそのまま再現するというので、非常にうれしく思っています。特に、モネの大作『睡蓮の池、緑の反映』(1920 / 1926年頃 油彩、カンヴァス 200×425㎝)は、購入した1952年以来、はじめてスイスを出る特別な作品です。コレクションでもっとも有名なルノワールの『イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)』とセザンヌの『赤いチョッキの少年』を日本の皆さんに観ていただけるのも、本当にうれしい。

計画的で真摯なコレクター

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ポール・セザンヌ『赤いチョッキの少年』 1888/90年頃 油彩、カンヴァス 79.5×64cm
©Foundation E.G. Bührle Collection, Zurich (Switzerland) Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)


――ビュールレが「フランス印象派」にこだわったことには、何か理由があったのでしょうか。

 彼はドイツの名門アルベルト・ルートヴィヒ大学フライブルクと、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンで、文学、哲学、美術史を学びましたが、このころから美術に興味を持ち始めたようです。そして1913年にはベルリンを訪れ、ナショナルギャラリー(ベルリン美術館)でフランス印象派の作品に出合うのです。

当時これらの絵画は、権力者におもねって美術界を牛耳っていた「体制派」の重鎮が選ぶ官展(サロン)の意向をまったく無視しており、政治的な主張が隠されていました。ドイツ帝国はそういう画家を毛嫌いし、印象派を購入した美術館の館長をクビにしていたほどです。当時のビュールレは、23歳の若者でした。こういう作品に心を引き寄せられたのは、つまりは彼自身がアンチ体制派だったからなのだと思います。

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