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日銀の物価目標はなぜ柔軟性を失ってしまったのか

 7月19、20日の金融政策決定会合が佐藤健裕審議委員と木内登英審議委員にとっては最後の会合となった。「金融政策決定会合における主な意見」から佐藤委員と木内委員の発言とみられるものを確認してみたい。

 「2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成するという方針は、政策の自由度を制約しており、先行き の金融政策の正常化を困難にする。2%の「物価安定の目標」の達成は、中長期の目標と明確に位置付けるべきである」

 2012年12月16日の衆院選挙の結果を受けて、安倍自民党総裁が政権を担うことになったが、早速、安倍総裁は政権公約にも掲げていた「大胆な金融緩和」に関して動きを示した。もちろん金融緩和を行うのは政府ではなく日銀であり、「日銀と政策協定を結んで2%の物価上昇目標を果たしていく」と安倍総裁は表明した。さらに日銀が物価上昇率目標(インフレターゲット)の設定を見送れば、日銀法改正に踏み切る考えを明らかにした。

 日銀はすでに2012年2月に物価安定の目途(コアCPIの1%)を示すことにより、実質的なインフレ目標策を導入していた。これは同年1月にFRBが物価に対して特定の長期的な目標を置きPCEデフレーターの2%に置いたことで、日銀も同様の目標値を設定したとみられる。しかし、これに対し安倍首相は1%ではなく2%とさせ、しかも曖昧さを除去させようとした。FRBの目標値はあくまで長期的な目標であり柔軟であるものの、それでは甘いというのが安倍首相というかそのバックにいたリフレ派の主張である。

 2013年1月22日の金融政策決定会合で、日銀は政府からの要請のあった(日銀法改正までちらつかせて)「物価安定の目標」を導入することを決定した。物価安定の目標については物価安定の目途を修正し、目途(Goal)を目標(Target)とした上で、その目標を消費者物価指数の前年比上昇率で2%とした。これは欧米中銀のようなフレキシブルなインフレーション・ターゲティングではなかった。政府と日銀の共同声明まで出して、日銀に対し厳格な物価目標を押しつけた格好となった。

 佐藤委員と木内委員が就任したのはこれらのあとの2013年7月であった。その後の4年間をみて、「2%の物価安定の目標をできるだけ早期に達成するという方針」そのものを疑問視し、政策の自由度を取り戻すべきとしたのは当然のことである。

 しかし、安倍政権が要求している以上、安倍政権が物価目標に対する認識を変えるか、安倍政権そのものがなくならない限りは、現在のような身動きとれない日銀の金融政策が今後も続くことになる。主な意見では次のような発言もあった、これも佐藤委員か木内委員のものであろう。

 「物価目標の達成時期の先送りを繰り返すことは、日本銀行の物価見通しの信認にかかわる。「できるだけ早期に」実現するスタンスを残しつつ、物価の安定が経済・金融の安定を含む包括的な概念であることを踏まえ、「物価安定の目標」を中長期的かつ柔軟な目標と位置付けることが適当である。」

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