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“ミッション・インポッシブル”ホワイトハウス首席補佐官の前途多難 - 佐々木伸 (星槎大学客員教授)

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 ホワイトハウスの仕切り役であるプリーバス大統領首席補佐官が事実上更迭され、新たにジョン・ケリー国土安全保障長官(67)が任命された。内紛や議会対策で大混乱に陥っている政権を立て直すためだが、新長官に全面的な統括権が付与される見通しはなく、早くも悲観論が飛び交っている。

送り込まれた“刺客”

 それにしてもトランプ政権の混乱と混迷ぶりは異常だ。政権発足半年しかたっていないのに、辞任や解任された主な高官はサリー・イエーツ(司法長官代行)、マイケル・フリン(国家安全保障補佐官)、ジェームズ・コミー(FBI長官)、ショーン・スパイサー(大統領報道官)、そして今回のプリーバス氏と相当の数に上る。

 ホワイトハウスの内紛が噴出しているのに加え、トランプ大統領の目玉だった医療保険制度改革(オバマケア)の見直し法案は与党である共和党の一部造反で成立させることができず、議会との関係も最悪の状態にある。上下両院はトランプ氏が嫌がっていた対ロシア追加制裁を可決し、同氏が検討中とされるセッションズ司法長官や、ロシア・ゲートの捜査を進めるモラー特別検察官の解任を阻止する構えだ。

 最近の支持率は最低の36%と歴史的な低さ。米歴史家の一部によると、こうしたホワイトハウスの内紛や、議会との関係が悪化した政権は19世紀以降のことだという。とりわけ、首席補佐官交代の発表直前の内紛の噴出はひどいものだった。

 主役は7月21日、ホワイトハウスの広報戦略を取り仕切る広報部長に任命されたトランプ氏の選挙資金調達役アンソニー・スカラムチ氏だ。同氏はニューヨークの投資会社の創設者で、“たかり屋”との異名を取る人物。その遠慮のないごう慢で不遜な物言いから、「ミニ・トランプ」とも呼ばれている。

 当時の報道官だったスパイサー氏、首席補佐官だったプリーバス氏の2人はスカラムチ氏とは犬猿の仲で、同氏の広報部長起用に強く反対していた。しかしトランプ大統領がこれを押し切って広報部長に任命し、スパイサー氏は抗議のため辞任した。

 スカラムチ氏は広報部長就任後、時を置かず、公然とプリーバス首席補佐官への非難を開始。雑誌とのインタビューでプリーバス氏を「妄想的で偏執狂」と罵り、同氏がメディアに内部情報を漏らしているとして、米連邦捜査局(FBI)に捜査を依頼するほどの異常ぶり。

スカラムチ氏はプリーバス首席補佐官が近く辞任に追い込まれる、とまで言い切り、この発言についてトランプ大統領から了承を得ていると断言した。その矛先はプリーバス氏ばかりではなく、一時は権勢を振るったバノン首席戦略官にも向けられた。

 鮮明になったのは、スカラムチ氏がプリーバス首席補佐官を辞任させたかったトランプ氏が送り込んだ“刺客”だった、ということだ。首席補佐官は日本で言えば、官邸の元締めである官房長官だ。いくら落ち目であっても、大統領のお墨付きなしにホワイトハウスのトップ2人を名指しで批判することなどできまい。

5つの派閥、変わる権力構図

 スカラムチ氏は首席補佐官らに対する攻撃に出る直前、トランプ大統領と夕食を共にしており、この場で首席補佐官追い落としのシナリオが描かれた公算が強い。プリーバス氏は共和党全国委員長を務めた党主流派の1人。ライアン下院議長とも親しい間柄で、主流派とホワイトハウスをつなぐパイプの役割を期待されていた。

 しかしオバマケア見直し法案が否決されるなど議会対策がうまくいかず、大統領の不満が高まっていた。大統領は最近、昨年10月に大統領の女性スキャンダルが表面化した時、プリーバス氏が批判したことを蒸し返し、「あの時、アイツが何をしたか覚えているか」などと側近らの前で罵っていた。大統領がスカラムチ氏を使ってプリーバス首席補佐官を辞任に追い込んだのは確実だろう。

 問題は31日、新首席補佐官に就任するケリー国土安全保障長官がホワイトハウスの全般的な統括力を発揮し、内紛や混乱を収めて政権を正常化できるかだ。ここで重要になるのは、ホワイトハウスの指揮系統の一元化だろう。

 トランプ政権のホワイトハウスは発足当時から3頭体制。通常の政権ではトップである首席補佐官に加え、バノン首席戦略官、娘婿のクシュナー上級顧問の3人が同格に据えられたため、指揮系統が複数となって政権の混乱に拍車がかかった。この時点で、プリーバス首席補佐官の失脚は決まったと言っても過言ではない。

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