記事

結婚よりも大切なのは、ふたりで子どもを育てるための協定

1/2
Sean van Tonder / Shutterstock.com

Sean van Tonder / Shutterstock.com

著:Laurie Shrage(フロリダ国際大学 Professor of Philosophy)

 私がアメリカの大学院に通っていた1980年代の初め、所属する女性支援団体のメンバーのひとりが妊娠を告げた。独身で結婚の予定もなかった彼女は、この子を産んでひとりで育てるつもりだと言った。彼女は遺伝子上の父親には話さないと決めていた。中絶を強いられたり、別れてからふたたび現れて子どもの生活に立ち入られたりするのを恐れたからだ。ひとりで子どもを育てる方が彼女には都合がよかったのだ。

 私の母も似たような境遇にいた。父と結婚していたときでさえも。当時のアメリカでは、父親は育児に関わらないのが普通だった。基本的な育児はすべて妻に任せるということ以外、今日「伝統的な結婚」と言われるものは共同育児のための原則を明確にしていなかった。

父親にお呼びがかかるのは母親に加勢するときくらいかもしれないが、私のパートナーは決してその役割に甘んじることはなかったので、私は幸運だったのだろう。両親が離婚した際、どちらが子どもたちを引き取るかについては疑う余地がなかった。妻である母だ。両親の離婚後、父の存在感はますます希薄になり、私の子どもたちに会うことは一度もなかった(父が死んだとき長子は12歳だった)。

 自らの意志で片親になる。結婚して子供を育ててから離婚する。――このような状況は、婚姻制度は往々にして複雑で変化の多い子育ての支援にはならないという事実を示している。現代の家族は変化しており、最初から結婚せずに子どもを持つ選択をする人々が増えている。

1970年にはアメリカにおける全新生児の11パーセントだった婚外子が、2014年には約40パーセントにまで達した。ノルウェー、スウェーデン、フランス、メキシコ、アイスランドなどの国では、50パーセント以上の子どもたちが婚外子として生まれている。

 家族の安泰には結婚が必要不可欠だと考える向きは、この傾向を憂慮する。しかし、親になる事情は人それぞれで、それが結婚に結び付くとは限らない。親と子どもの生活に一定の経済的精神的安定を付加できる、結婚に代わる手段はあるのだろうか。

 答えは「イエス」だ。一般的な婚姻契約と同様に、子どもに関する親の権利と義務を明記したうえに両親が関わり合って決定する原則を定めた、公的な「共同育児協定」とそれに関連する民法上の身分が私たちには必要なのだ。

 子どもたちが成長する過程で複数の大人から継続的な支援を受けることは大きな利益となるが、必ずしも結婚している人々から養育される必要はない。両親に求められるのは、効率的に協力すること、相手と子どもの関係を尊重すること、育児と家計に同じように貢献することだけだ。

イギリスでは既に、未婚、離婚、再婚、義理の如何を問わず、両親が子どもの共同親権に関する条件を定めることを目的とした「親の責任に関する協定(parental responsibility agreement)」を締結することができる。この協定には、子どもが基本的に健康な状態であることを共同育児者に定期的に報告すること、また、住居、学校教育、医療、その他費用の提供を援助することの義務が含まれる。

 しかし、結婚したり一緒に暮らしたりする気がまったくない親や親密な関係を持ちたくない親のことを考慮して、もう一歩踏み込んだ公的な共同育児を考える必要があると私は考える。アメリカでは、「結婚せずに」家族を作りたい独身成人が最適な共同育児者を探すサポートをする、ファミリー・バイ・デザイン(Family By Design)モダミリー(Modamily)などの組織が登場していると、ニューヨーク・タイムズ紙の記事が伝えている。

あわせて読みたい

「育児」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    ネトウヨが保守論壇をダメにした

    文春オンライン

  2. 2

    サギ師が使う人の心を操る話し方

    fujipon

  3. 3

    都顧問 小池都政なければ大混乱

    上山信一

  4. 4

    音喜多氏「小池氏演説は攻撃的」

    おときた駿(東京都議会議員/北区選出)

  5. 5

    戦略的投票を推奨する朝日に疑問

    和田政宗

  6. 6

    元SMAP3人VSジャニーズの報道戦

    文春オンライン

  7. 7

    情勢調査が有権者に与える影響

    AbemaTIMES

  8. 8

    英国でトラブル 日立は正念場に

    片山 修

  9. 9

    約30年ひきこもり 就労までの道

    PRESIDENT Online

  10. 10

    辻元氏 米は他国民を救出しない

    辻元清美

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。