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すべての子どもが家庭で育つ社会へ 新たな一歩を踏み出した「特別養子縁組」の現場から

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子育ては「家庭養護を原則」と明言

「すべての子どもは、家庭的な環境のもとで育つべきである」。こんな当たり前の考え方が、ようやく社会に広まろうとしている。今年4月、児童福祉法が改正され、子育てにおいて「家庭養護を原則とする」旨が盛り込まれた。養子縁組里親が法定化され、児童相談所には「養子縁組に関する相談や支援」が義務付けられた。

これは大きな一歩である。日本では未だに、保護者に恵まれない子どものほとんどが「施設」に預けられ、家庭養護を前提とした「特別養子縁組制度」が定着していないからだ。児童養護施設で育つ子どもは、家庭で育った子に比べて「1対1の永続的な愛情」を受けるチャンスを奪われているのが現状だ。

改正児童福祉法で養子縁組が法定化されたことで、より多くの子どもたちに「家庭養護」のチャンスが開かれることとなる。特別養子縁組の選択肢があれば、思わぬ妊娠に悩む女性が誰にも相談できずに出産し、生後0日の赤ちゃんを死なせてしまうケースも未然に防ぐことができるだろう。児童虐待死で最も多いのは、生まれたばかりの赤ん坊である。

対応する自治体は人手、ノウハウともに不足

一方で、課題もある。児童相談所に「養子縁組」の相談や支援が義務付けられたとはいえ、多くの自治体は人員とノウハウの不足に悩む。特別養子縁組をサポートする民間団体との連携も道半ばだ。

去る7月14日、こうした現場の問題を考え、学ぶための研修会が行われた(「特別養子縁組実践研修~新生児委託とパーマネンシーについて~」共催:日本財団、NPO法人CAPNA、ちばこどもおうえんだん)。約60名の児童相談所職員やNPO、医療関係者などが、新生児の養子縁組に関する最新の調査研究結果や実践例を学んだ。

撮影:北条かや

妊娠期からのサポートが重要

多くの研究や実践例が明らかにしていることは、次の3つだ。

(1)赤ちゃんの虐待死の背景には、思わぬ妊娠に悩む女性の孤独や貧困があり、妊娠期からのサポートが必要であること

(2)生みの親が育てられない場合、赤ちゃんはできるだけ早期に、特別養子縁組などを通じて「家庭環境」へと移行したほうがよいこと(参照:「乳幼児期の施設養育がもたらす子どもの発達への影響について」ネイサン・A・フォックス等)

(3)特別養子縁組には慎重を期す必要があり、養子を迎え入れる家庭にも、手厚い研修やサポートが必要であること

この3点を解決するための仕組みは、確かに整いつつある。児童相談所の全国共通ダイヤル「189」に電話をかければ育児の悩みを聞いてもらうことができるし、同じような相談ダイヤルを設けている民間団体もある。全国296市町村の「子育て世代包括支援センター」に相談すれば、妊娠期から子育て期にわたる「切れ目のない支援」をが受けることができる。

ただ、こうした制度が周知されているかは疑問だ。望まぬ妊娠に直面した女性は、問題を1人で抱え込み、役所に相談しないケースも多い。生みの親の親権が強いことから、里親に出すことさえ難しい場合もある。それでも、「子どもの権利」を第一に考えるには、どうするのが「正解」なのか。そもそも正解はあるのか。参加者は熱心に議論を交わした。

撮影:北条かや

生みの親に、子育ての現実を知ってもらうことも重要
母親と一緒に、子育て費用をシュミレーションすることも

一般社団法人「ベアホープ」、一般社団法人「全国妊娠SOSネットワーク」の赤尾さく美氏は、多くの母親の相談にのってきた経験からこう語る。

「若い女性が母親になる場合、(明らかに養育が難しそうな環境でも)『私にはこの子しか家族がいないから』と、赤ちゃんを手放そうとしない、できないケースもある。そういう女性とは、『子育てにはこれだけお金がかかって、赤ちゃんが成人するまでにはこういうプロセスが必要になる』と、具体的なシミュレーションを一緒にしてみることもある」「特別養子縁組をむやみに推奨することはしないが、生みの親に、子育ての現実を知ってもらうことも重要だと思う」(赤尾さく美氏)

「若い母親との相談やり取りには、LINEが最も受け入れられやすい」という。きめ細やかな対応は、民間団体が得意とするところかもしれない。

[ PR企画 / 日本財団 ]

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