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なぜ「身寄りのない土地」が今増え続けているのか? - 浅野千晴 (税理士)

土地は資産でしょうか?それとも負債でしょうか?

答えは簡単。経理が詳しい人でなくても「資産」と答えるはずです。土地は、人に貸したり売ったりしたらお金に変えることもできるからです。ただし、それは資産としての価値がある場合だけではないでしょうか?

■九州より広い?所有者が分らない土地の面積

相続未登記などで所有者がわからなくなっている可能性のある土地の総面積が、九州より広い面積に達するとの推計結果を、6月26日に有識者でつくる所有者不明土地問題研究会が発表しました。

もし、土地は持っていると価値があり、それを引き続き使用しているのであれば、こんなにもたくさんの所有者不明の土地など出てこないはずです。どうしてこのような状況が起こっているのでしょか。

■原因は相続?

通常土地の所有者を特定するためには、その土地の存在する管轄の法務局で登記します。登記をすることで、他人に自分のものだと主張するための「対抗要件」にすることができます。しかし登記は法律的には義務ではありません。土地の所有者が亡くなると、所有する人が代わるので、所有者が変更したことの登記をすべきなのですが、何ら手続きをせず放置されているケースがあるのです。

なぜ登記をせずそのままにしてしまうのでしょうか?原因の1つは登記が煩雑で面倒だということです。法務局に行けば登記の方法は相談コーナーで親切に教えてくれますが、自分でできない場合は司法書士にお金を払って依頼する必要があります。

また他の原因として、登記をするときに、登録免許税という税金もかかります。相続時の登録免許税は、持っている土地が存在する市町村が算定する固定資産税評価額の0.4%かかります。仮に3000万円の価値のある不動産だったら12万円です。登記をしなければ、この税金も払う必要もなくなります。

■不動産を持っていると負担が大きい

土地の場所が大きな駅の近くだったり、広い道路に面していたりすると、貸したり売ったりすることができます。しかし、交通の便が悪く、しかも誰も住まなくなった空き家があったらどうでしょうか。そのような家は誰かに貸すのは困難です。

また、空き家はカビや害虫などの侵入が原因で家が傷むため、自分で定期的に行って家を開けたりするか、業者に維持管理を依頼する必要があります。さらに、不動産を持っているというだけで、毎年固定資産税を支払わなければなりません。このような価値の低い土地は最初からお金をかけてまで登記をして権利を主張しようとしないのも当然の結果なのでしょう。

■価値のない土地はそもそも相続しないという選択も広がっている

親が亡くなり、相続が発生した場合、相続発生の日から3か月以内に財産をもらわないという選択をすることもできます。このように利用価値のない不動産を相続することになった場合、将来の負担を考え、相続を放棄する人も増えつつあります。

最高裁判所の司法統計年報により、最近10年間の「相続の放棄の申述の受理」件数の推移を見てみると、平成16年の14.1万件から平成26年の18.2万件へと増加しており、年平均でならしてみると、年2%強の増加率になります。これは資産価値の低い地方の市町村ではさらに大きくなっています。価値もない土地を維持するのは生まれ育った思い入れのある土地であっても難しくなっているのでしょう。

これからは少子高齢化に伴い、人口が減少していくのにつれ、土地の需要が徐々になくなってくるのではないでしょうか。不動産は都会の条件のいい土地でない限り、「資産」として成り立たず、多くが負担ばかりかかる「負債」になっているのです。

■「身寄りのない土地」を増やさない法整備が必要

朽ち果てた家や何年も耕作を放棄している土地が、多くの過疎地域でよく見られる光景となる一方、都市部の近郊では新築アパートや建売住宅が次々と建てられています。住宅メーカーは、空き家の問題などはお構いなしに利益追求に走り、それを購入する人の税金を免除するといった国の方針は全く変化が見られません。また、相続した空き家を売るために作られた税金の優遇措置は要件が厳しく、なかなか手が付けられないといった状況です。

これからも資産価値のない「いらない」土地が増えることは間違いなさそうです。最近、困った時に誰も頼る親類がいない高齢者が多いですが、このような「身寄りのない土地」の処分もさらに問題化してくるのではないでしょうか。

これからの将来、土地の法制度を変えていくことが急務となるでしょう。

【参考文献】
■タダで簿記の指導をしてもらえる!税務署の無料記帳指導を知っていますか? (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/51569189-20170626.html
■ふるさと納税にもはやお得感なし?総務省の要請でブーム終息となるか。 (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/51150747-20170426.html
■世界のシンデレラストーリーは変わった。それは自分の力で起業することである。 (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/50956238-20170329.html
■年収1000万円超えの会社員は「税金」で貧乏になる。(浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/50540586-20170129.html
■相続税や消費税対策が将来の空き家問題を加速させる (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/47043297-20151128.html

浅野千晴 税理士

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