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企業への配慮が日本を弱める

昔はお手々つないで幼稚園だった。今の小学校の運動会はお手々つないでゴールインとも。運動会は目撃していないが、小学校の教育がそうらしい。一番下のレベルに合わせている。だから、意欲のある生徒の頭を抑える結果になると、知人が嘆いていた。

教育だけ「お手々つないで」で終わらないのが、今の日本社会である。役所の政策の根底にも、落ちこぼれ企業が出ないようにとの発想があるようだ。企業が落ちこぼれ、倒産すると、失業者が生まれる。それは社会的に許されないとの発想なのだろう。こう考えれば、いろんな行政措置の辻褄が合う。

この行政の方針は中小企業に限らない。大企業に対しても行政は優しい。最近救済されたもしくは救済されようとしている大企業と役所の関係を思い出せば、明らかだろう。タカタは潰れてしまったが、こちらはアメリカの影響が大きすぎ、日本政府としてどうにもならなかったと考えればいい。

この優しい役所のスタンスは未来に対しても広がっている。好例が電気自動車に対する規制である。欧州は電気自動車の導入に大きく舵を切ろうとしている。

中国やインドが電気自動車に積極的なのは、内燃機関の技術で遅れているからである。電気自動車を採用するのが戦略的に正しい。

欧州はそうではない。自動車が一台ずつ内燃機関を搭載するのが環境的に悪い(大きな内燃機関、つまり発電所で集中的に電気という動力を作り出すのが環境的に望ましい)との判断がある。もちろんアメリカも自動車の排ガス規制に厳しく、電気自動車に有利な状況を作り出している。

この点、日本政府は目立った対応をしていない。自動車メーカーに対する配慮なのだろう。この流れに乗り、トヨタは内燃機関にこだわり続けてきた。すべてが電気モーターに取って代わられたのでは、これまでの優位性が無に帰しかねないからである。とはいえ、この経営政策は成功企業にありがちな誤りである。

気がつけば、内燃機関に優しいのは日本政府だけになった。国内市場よりも海外市場の方が圧倒的に大きい状況において、ここから先も内燃機関にこだわることは敗北を意味する。だから、ついにトヨタも、電気自動車の開発を加速させるとの経営的決断を下した。

「でも・・」である。トヨタの電気自動車の開発は遅れた出発である。主要な自動車メーカーの力が拮抗していることからすれば、開発の遅れが致命的になりかねない。企業に優しい日本政府が仇になったと言えよう。日本政府として、環境のことを十分に考慮し、心を鬼にしつつ、世界に先駆けて自動車に対する規制を強化すべきではなかったのか。この政策があれば、今頃、日本政府としての最後の至宝、トヨタがより強くなっていたのではと思えてならない。

企業に対して優しいことは、当面の企業業績にはプラスである。しかし、中長期の観点から評価すれば、企業の活力を削ぎ、最悪の場合には劣等生を生み出しかねない。トヨタが電気自動車の流れに乗り遅れたのは、政府として大いに反省すべき事例だと思う。

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