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蓮舫代表・稲田防衛相辞任 民進と自民、政党の遠心力と求心力

 民進党の蓮舫代表が突然の辞任を表明した27日。夜には稲田朋美防衛相が辞意を固めたと報じられ、翌28日、辞任しました。ともに要職を務めてきた2人の女性議員の辞任劇。政治学者の内山融・東京大学大学院教授が、蓮舫氏が辞任会見で口にした「遠心力」と「求心力」というキーワードをもとに読み解きます。内山氏に寄稿してもらいました。

【中継録画】民進・蓮舫代表が辞意表明 遠心力変えるには「人事より私」

「安倍1強」を持続させた民進党の混乱

 7月27日、民進党の蓮舫代表が辞意を表明した。加計学園問題や南スーダンPKO日報問題などのため安倍政権の支持率が低下している中、野党第一党である民進党の役割が注目されるところであった。しかし、蓮舫代表の辞意表明により、民進党の混迷も深まった。同党はこれまでのところ、政権批判の受け皿となる態勢の構築に成功していない。

 先日の都議選に際して、民進党は大量の離党者を出し、敗北を喫した。代表続投を表明した蓮舫氏のもとで態勢の再構築を進めるべきところであったが、そのさなかでの突然の辞意表明であった。

 このような民進党の混乱こそが、これまで「安倍一強」を持続させてきた大きな要因である。ただでさえ野党陣営が分裂している状況で、最大野党が統率力を発揮できなくては、政権に批判的な有権者がある程度いてもその受け皿は不十分なままである。過去の55年体制でも複数の野党に票が分散していたことが自民党一党優位を支えていたが、それと同じことが現在でも起こっている。その意味で、迷走する民進党は安倍政権の最大の支持勢力だったといっても過言ではなかろう。

リーダーの個人的資質が要因ではない

 では、こうした混乱はなぜ生じてきたのだろうか。民進党が混乱を克服する道筋はどうあるべきなのだろうか。

 私は、民進党の混乱の根源にあるのは、単にリーダーの資質といった個人的なレベルの問題ではなく、構造的な問題だと考えている。それは「集合行為問題」と呼ばれるものである。集合行為問題とは、簡単に言えば、組織のメンバー個人が自分自身の利益を追求することにより、結果的に、組織全体にとっての利益(公共財)が損なわれてしまうことである。いわば、個人的な合理性の追求が、全体としての非合理になってしまうのである。分かりやすい例を挙げれば、共有の牧草地では、農民が自分の牛に好きなだけ牧草を食べさせようとする。誰も維持コストを負担しようとしないため、結果的にその牧草地は荒廃してしまう。

 これに類した現象は、民進党やその前身の民主党で頻繁に見られた。たとえば民主党では、いったん決めた方針が程なく転換されるといったことが繰り返された。民主党は多様な政策志向を持つ議員が寄り集まってできた政党であるため、一度方針を決めても、それに異論がある議員が少なからず存在した。そうした人たちが自分たちの目標を実現するため既定方針を変更させることが常態化していたのである。しかし、そのような頻繁な方針転換は、民主党の信頼性を有権者に疑わせることとなってしまった。

 最近の例を挙げれば、今年3月の党大会で蓮舫代表が「2030年原発ゼロ」目標を表明しようとしたにもかかわらず、党内や関連組織からの反発で断念した。民進党の迷走を有権者に印象づけた出来事だったのではないか。

「遠心力を求心力に変えた」党内競争

 こうした集合行為問題の克服が、民進党の再建には不可欠である。いみじくも辞意表明時の会見で蓮舫氏は「どうすれば遠心力を求心力に変えることができるのか」と述べていた。上記のような集合行為問題は党内に遠心力を生み出してしまうが、民進党が態勢を立て直し有権者の信頼を回復するためには、この遠心力をうまくコントロールして求心力に変えていかなくてはならない。その上で、有権者にアピールできる理念と政策、すなわち、与党に対する有効な選択肢となりうる理念と政策の軸を定めていかなくてはならない。

 そのために必要なのは、まず、理念と政策について徹底的に党内で議論した上で、しっかりと基軸を定めることである。そして、いったん基軸を決めたら、余程のことがない限り当分の間はそれを堅持していくことである。各議員には、たとえ多少の異論が残っても、党全体の利益に配慮して戦略的に行動することが求められよう。

 55年体制の自民党のあり方も参考になるかもしれない。かつての自民党は「派閥の連合体」とも呼ばれたように派閥間の対立抗争が激しかったが、それでも自民党は分裂することなく長期政権を保つことができた。その理由の一つとして、派閥の競争を通じて政治家が育成・鍛錬され、優れたリーダーが生み出されたことがあると思われる。いわば、派閥間の競争という遠心力を、党全体の活力という求心力に転換するメカニズムを有していたのである。

 自民党では歴史的な発展過程でそうしたメカニズムが生成されていったと考えられるが、歴史の短い民進党の場合には、自覚的にそうしたメカニズムを導入することが検討されるべきだろう。

官邸への求心力が強すぎる自民党

ところで、蓮舫氏辞意表明翌日の7月28日には、稲田防衛相が辞任した。与野党ともに混迷が深まる状況であるが、自民党の抱える問題と民進党のそれは大きく異なる。民進党の場合は党内の遠心力が強すぎるのが問題である一方、自民党の場合は官邸への求心力が強すぎることが問題である。かねてから批判の強かった稲田防衛相を安倍首相が擁護し続けたため、かえって傷を広げてしまった観がある。

 かつての自民党と異なり、現在の自民党には党内の競争が不足している。党内競争がもっと活発であれば、不適切な政治家は淘汰され、適切なリーダーを選抜していくことが可能だったと思われる。競争メカニズムを通じたリーダー選抜メカニズムの再生が問われているのではないか。

 これまでの政治制度改革の議論においては、小選挙区制や官邸主導体制など求心力強化の方に比重が置かれていた。しかし現在の状況はむしろ、求心力偏重の弊害が出てきているようである。求心力(リーダーシップ)と遠心力(競争)のバランスが求められているとも言えよう。

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